ゆうしゃさまのでんせつ
序文だけです。物語は進行してません。
これは、良くある物語だ。
『――ある時、女の子が知らない世界へ迷い込んでしまいました。
その世界では悪が蔓延り、とても危険で、とても怖い世界です。
知らない世界で、右も左も解らない女の子は途方にくれます。
「こわいよ」
「たすけて」
「かえりたい」
そんな見ず知らずの泣きじゃくる女の子に、その世界の人々は優しく手を差し伸べました。
「こわくないよ」
「だいじょうぶ」
「ひとりじゃないよ」
皆の優しさに触れ、女の子は悲しかった顔を笑顔に変えていきます。
やがて、その女の子は決意します。
助けてくれた人々を、助けるために。
女の子は、この世界を荒らす悪の総帥――『魔王』を、自ら倒すことに決めました。
勇者の剣と、一番最初に手を差し伸べてくれた少年と、一匹の猫と陽気な鳥を連れて。
女の子は向かいます。
『魔王』を倒しに向かいます。
何度諦めそうになっても、挫けそうになっても。
女の子は人々のために、戦います。
「わたしをたすけてくれた、こころやさしい、あのひとたちのために!」
そして、「ひとりじゃない」と言って手を握ってくれた、優しい少年のために。
女の子は、臆することなく、戦います。
――遂に、女の子は『魔王』を討ち果たし、少年、猫、鳥と共に帰還しました。
彼女たちは祝福され、人々が集まり、新たな国として他所の国からも認められるようになります。
やがて女の子は、結ばれた少年との間に十二人の子供を生み、穏やかで幸せな日々を過ごしました――』