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異能者の非常識な日常  作者: とりもち
第一章・おまけ
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ホワイトデー


 ~side レイ~ 2027年 3月14日



 さて、今度はホワイトデーだ。別名:悪夢の日である。


 母さんにはいつも使っている化粧品のセットを送った。何処に居るか分からないので叶未さんに頼んだ。その叶未さんには傷跡が残りにくくなる軟膏などを渡しておいた。


 杏香さんには有名ドーナツ店のドーナツを1ダース。ゆきにはケーキを1ホール送っておく。相川と皆月には蝶を象った飴細工を。


 親戚の連中にはハムでも送っておけばいいだろ。事務所の女性職員には果物を適当に渡した。


 彼女――征狼野 マキナには手紙を送っておいた。あいつは今ロシアに居るのだ。そこに何か送っても邪魔になってしまうかもしれないし、あと数日したら帰国すると言っていた。それなら日本でのんびりと過ごした方がいいと思ったのだ。もちろん今日送ったわけではない。1週間前には向こうに届いたはずだ。




「令、あたしには無いの?」


「お前からは何も貰っていないと思うんだが?」


「ほら、そこは気持ちで」


「俺は無償奉仕ボランティアが嫌いなんだよ。皆月と相川のあれだって、お返しという意味以外の何物でもない」


「うぅ……」




 白奈がうるさい。何故に白奈へ何かをあげなくてはならないのか。毎年毎年ホワイトデーは10万近い金を消費するのだ。気まぐれにプレゼントする余裕などない。あーあ、諭吉が10人も……。




「シロちゃんもさ、季節外れのバレンタインってことで何かあげればいいんじゃないの?」


「えぇっ!?」


「へ、どしたの?」


「うぇ、だって、それ……えぇ?」


「シロちゃんうるさい」


「へぅっ……!」




 白奈の脇腹はぷにぷにだな。皆月の指がかなり食い込んだぞ。




「な、何すんのよ!」


「言い出した私がこう言うのはどうかと思うんだけどさ、ちょっと黙ってて」




 何気に皆月が酷いな。まぁたしかにうるさかったけども。


 俺は公安のあれこれの処理や整理と、3日後に参加する予定のパーティーの準備で忙しい。

 公安の動いていたヤツらは鳴りを潜めたようだ。斉藤が撃退され、俺を恐れているような雰囲気がある。しかし表向きには『斉藤と俺は会ったことが無い赤の他人』ということにしておかないと色々と不味いので、それをするための諸々の書類を作っているのだ。

 バカ3人は手伝ってくれないし、白奈には見せるのも憚られる書類なので、消去法で俺だけがやることになってしまった。ちなみに、3人がやんわりと押さえているから白奈はこちらに近付くことすら出来ないでいる。




「うぬぬぬ……なんか仲間外れにされたみたいで嫌」


「うるせぇなぁ……少しは一之瀬を見習えよ」




 一之瀬はクッキーをポリポリしている。なんであんなに小さなものを両手で持つのか分からないが、和むので気にしない。




「あのクッキーはアンタがあげたんでしょうが!!」


「別にホワイトデーは関係ない。日頃の感謝を籠めてのプレゼントだ」




 ホワイトデーが丁度良かったってのはある。……あるが、一之瀬に感謝しているのは本当のことだ。あいつが居るか居ないかだけで部屋の雰囲気が違う。




「だったらあたしにもくれたって良いでしょ!?」


「お前に感謝することなど何もないわ、アホ」


「はぁ!? 名前が『ドレイ』の癖に生意気!」


「あ? 言ったな? よし分かった表に出ろ。初めてだから100mで勘弁してやる」


「な、なんの話よ……?」


「吹っ飛ばす距離だ」


「死んじゃうわよ!?」



「「「シロちゃん/白奈/白奈さん、うるさい(です)」」」



「四面楚歌!?」




 本当にうるさい。だから一之瀬からも刺々しい言葉が飛んでくるのだ。

 あいつの食事風景は見ていると和むが、邪魔をするとその空気が壊れる。1人で食べている時は話しかけることすらタブーだ。どうやら近くで騒ぐのもアウトらしいが。


 白奈はあれだな、あの看護師……えっと……名前忘れた。あの失礼な看護師と仲良くなれそうな気がする。理由も根拠もない。ただの勘だ。




「うぅー……」


「あーもう、これやるから黙ってろ!」


「え? なになに……ってただのガムじゃん!」


「要らないなら返せ」


「あ、いや、えと、貰っておきます……」




 全く、面倒なヤツだな。

 そんな何の得にもならないやりとりをしていた時、俺のスマホにメールが来た。




「今度はなんだ……」


『From:父さん

  Sb :助けてくれ!


 もみじが怒っているみたいなんだ。

 どうすればいい?』


「いや分かんねぇよ」




 何が原因で怒っているのか不明なのに、どうやってその怒りを鎮めるというのか。……多分、メチャクチャ焦っているんだろうな。とりあえず何をしたのか聞いてみた。




『From:父さん

  Sb :


 今日、ホワイトデーだろ? だからあの絶望ケーキのお返しに金太郎飴を丸々1本送ってみたんだ。そしたら、


 《惣介さんの気持ちはよく分かりました。

 この件は絶対に忘れないので3年後は覚悟しておくように》


 って返ってきたんだよ。なんでだと思う?』


「全面的に父さんが悪いじゃねぇか」




 金太郎飴1本て。あれどんだけ長いと思ってんだ。つーかよく切らずに売ってくれたな。いやまぁ母さんも母さんだけど。いい大人が揃いも揃って何やってんだか。




『仲が良いようで何より。


 追記:イチャイチャしている状況をメールで息子に知らせるのはどうかと思う』




 一応こんな感じの返信をしておいて、父さんは着信拒否にした。

 さて、仕事を進めなければ。というか邪魔が多過ぎるな。なんでこの4人は俺の部屋に来ているのだろうか。早く帰れよ。




「あー……疲れる」




 さすがは悪夢の日。精神・肉体・金銭的に俺はボロボロである。

 もう来年からチョコを貰うのはやめようか……しかしそうすると絶望ケーキをどうにかして回避しなくてはならないし、杏香さんが涙目にもなる。なんだこの外堀がずっと埋まっている感じは。




「逃げられねぇ……」




 世の中の全男性に聞きたい。


 ――これって本当に幸せか?




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