表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キメラ勇者の異世界冒険譚  作者: 桑島 龍太郎
砂漠のトレジャーハンター
9/58

魔物、襲来

朱沢龍斗、異世界というか人生初めての戦闘です。

やはり初体験は痛い思いをするのでしょうか。

はてさて斬った張ったの大立ち回りになるのか!

頑張れ高校生!

 コツコツと三人分の足音が遺跡の壁に反響する。

 ここまで階段を四度登り、他愛のない話の中で得た情報からすると、今いる遺跡は【囚われし堕天龍姫の懐】と呼ばれているそうだ。

 龍斗に龍姫か、カーラ達は龍繋がりで俺をここへ飛ばしたのだろうか。

 

 最下層は百二十層、そこまで到達したのは五年前にたった一組のパーティだけ。

 彼らは伝説として語られ、今の所在は知れないらしい。

 この世界の遺跡は何百年も昔に作られた神殿であったり、廃城であったりと様々。

 

 人がいなくなり、朽ちてゆく際に瘴気のような負の要素が溜まり魔物の住処になり、長い時間をかけて魔素を溜め込んだ遺跡が多く、建物のアンデッドと呼ぶ人もいるんだと。

 ちなみにここの特徴は、入り口が砂漠地帯にあるにも拘らず、石で造られた三角形のオブジェがありそこに空いた穴から入り、下に行けば行くほど広くなる変わった所なのだという。

 

 俺の世界にも似たような遺跡がある。

 そう、ピラミッドだ。

 中に入った事など勿論無いが、恐らくここもそれと大差ないと思う。

 このピラミッドは長い時間をかけて全体が砂に埋没し、頂上だけが地上に出ているのだと推測する。

 百二十層ってどんだけデカイの作ったんだよ。

 そして地上から五層に到達すると突然、どこからか魔物やアンデッドが沸いてくる。

 魔物がどこから来るのかいつ復活するのか誰も知らない。

 一度倒すとしばらく出て来ないのでそのうちに上下層に行くかフロアの探索をするか、になる。

 

 たまーに白い骨のようなしゃれこうべのようなモノを見つけるのだが敢えて視界に入れないように務める。

 最初階段をあがった時、階段に座り込むようにしている遺体を見た時は吐き気がした。

 というか吐いた。


 前から見ると無傷なのだが背中がヤバかった。

 ぽっかりと背中に拳大の穴が開いていて、ドス黒く染まった体内に残っていたのは白い骨と食い散らかされた肉と臓物の屑だけ。


 この人はミートワームにやられたのよ。

 とミモザが解説してくれた。

 口や傷口から無理やり体内に侵入し中身を食い散らかして背中から出て行く悪食らしい。


 こういった魔物対策はフルフェイスか口当てをするのだ、とミモザ自身がその口当てを出して見せてくれた。

 金網のゴツい版で作られたマスクと考えて貰えれば分かり易いと思う。


 そしてこの世界にはやはり魔法が存在する。

 属性魔法、精霊魔法、法術と様々な種類があるようだ。

 ちなみにレベルなんてモノは当たり前だが存在しない、ゲームと現実はやっぱり違う。

 ライ◯ラ! みたいな魔法は無いんだと。


 身体的能力を数字で把握出来たりするかなー? と少し期待して聞いたのは秘密だ。


「ふぅ。何も出なければいいなーぐらいに思っていたけどやっぱりそうは問屋が卸さない、かぁ」


「回復薬ももう無いし、私達、ここで死んじゃうのかなぁ」


「えっ?」


 俺が考えに耽っていると横の二人が不吉な事を言い出す。

 焦って二人を見るが、言葉とは裏腹にそこまで諦めている表情では無いように見える。

 現在は噂の第5層へ侵入する階段を登りきった所、二人はそこから見える曲がり角をじっと見つめていた。

 耳を済ますと、ぺしゃぺしゃと濡れた素足で歩くような音が聞こえてくる。


「キリアシよ。姿は見ればわかるでしょ……って……うそぉ……」


「やばー……冗談抜きで死んだかもぉ……」


 ぺしゃりぺしゃりと音を鳴らす主が角から姿を現す。

 大きさは中型の犬くらい、トカゲのような風体、蛙の脚部を持ち、その足元は霧のようなモノで覆われている。

 安直過ぎるが恐らくこれが名前の由来だろう。


 そしてその後ろからは、鋭い棘がついた鉄球を載せたイルカのような大きなナメクジが音もなく現れた。


「げ……なんだあれ気持ち悪い」


「あれはスラッグソーよ。見かけより相当機動力と破壊力があるから気をつけてね……」


 あぁ小さな金属の塊のスラッグとナメクジのスラッグを掛けてるのか。

 ソーはノコギリか?

 だとするとパターン的に……。


 俺を庇うようにミモザとベリーニがそれぞれの得物を手に前へ出る。

 魔物が俺達を捉え、キリアシが理解不能の雄叫びをあげる。


 その声に応えるようにヌメヌメと進んでいたスラッグソーが動く。

 イルカのような身体を鉄球にするりとしまい込むと、一瞬力を溜めるような間をあけて、石造りの床を粉砕しながら勢いよく転がって来た。


「やっぱりそう来んのかよ!」


 スラッグソーは直線軌道のまま俺達に向かって突っ込んで来る。

 爆発的な加速度を誇るあの弾丸は生半可な防御では耐えられないだろう。

 

 どうする?

 決まっている。避けるしかない!


「ぬはあぁぁ!」


 思い切り横に跳びスラッグソーの突撃を回避する。

 跳んだ数秒後、高速回転する棘ボールが俺のいた場所を通過して階段へ向かい…………。

 あ。

 落ちた。


「あ、あいつばかじゃねーのー! ぶははは!」


「リュート下がって!」


「挽肉にされるよー!」


 いつの間にかキリアシと攻防を繰り広げている二人がそれぞれ叫ぶ、だがあの恐るべき弾丸は階段の下なのだ。


「大丈夫だ! あいつ下の層に用事があるみた……い……で……って、うそん……」


 軽口を叩き二人を安心させようとした俺の耳に嫌な音が届く。

 スラッグソーのギャリギャリと地面を削るあの音が階下から響いてくる。

 

 嫌な予感が頭を掠め、俺が脱兎の如くその場から離れた瞬間、掘削ドリルのような音を立てて階段から魔の弾丸が躍り出てきた!

読んでくれてありがとうございます!

ブックマークしてくれた方ありがとうございますありがとうございます!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ