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キメラ勇者の異世界冒険譚  作者: 桑島 龍太郎
第2章  今日から俺は
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砂塵の行軍

 あっと言う間に1週間が過ぎ、今日はいよいよカルピシェク大砂漠にある風穴、【打ち捨てられし暴虐の回廊】の調査日だ。

 様々な事態を想定し、傷薬、聖水、毒消し、解呪の巻物に麻痺治し、携帯食料、おまけに予備の装備品まで揃えた。

 もちろんその大量の荷物は女神ホルンの恩恵であるディラックの海へ保管されている。

 

 準備ついでにディラックの海で保管されている魔女神カーラから送られた武具の確認もしていると、その中に根源の指輪というのを見つけた。

 嵌め込まれている宝石は透き通っているようで、よく見ると内部に僅かな粒子が水のように揺れているのが確認出来た。

 カーラがくれた物だから普通の指輪では無いはずなのだが、意識を集中してみても【契約の指輪】としか分からなかった。

 

 いざと言う時に某22世紀の青いロボットの様にパニくらないよう、使えそうな装備とよくわからない物を仕分けしておいた。

 ミモザには【破軍の大剣ダークプロミネンス】、ダガー2刀流のベリーニには【弱者最強チキンナイフ】と【氷打凍結アイスヴァイン】を渡してある。

 【破軍の大剣ダークプロミネンス】は高硬度の漆黒の刀身に紅蓮の紋様が揺らめく炎のように刻まれており、幅広の刀身は魔法をも弾く強固な盾としても使える。

 【弱者最強チキンナイフ】は持ち主の心の弱さに応じて強さが変わるという変わり種、すぐに気絶する彼女にピッタリだと思い即決した、【氷打凍結アイスヴァイン】これは普通のダガーにしか見えないが魔力を込めると密度の高い氷剣となり、カスリ傷でも付ければその傷口から凍りつくという反則級の武器だ。

 これも決定力に欠けるダガー使いにはもってこいだと思い即決、ちなみに込める魔力量によって刀身の長さは変わるので不意打ちにももってこいだ。


 2人共武器を渡した時は遠慮がちだったのだが、性能を説明すると飛びつくように受け取った。

 彼女らによると付加能力を持った装備は高価で手に入れる事が難しく、自力で見つけるには中々の苦行なのだと言う。

 それを見ていたスコッチも物欲しそうな顔をしていたがスルーした。

 あいつには普通のロングソードでもレアな高性能武器になってしまうからな。

 

 こうして抜かり無く準備を終わらせた俺達は、集合場所である街のゲート前へ到着した。

 今回集められた200人の大所帯は100人ずつ時間をずらして送り込まれるらしい。

 午前と午後2時間程ずらしての出発だ。

 

 基本的に密度の高い街だが、100人も一箇所に集まる事は滅多に無いため、異様な空気がゲート前の広場漂っていた。

 むさ苦しいおっさんばかりかと思っていたが、女性や若い男の姿もちらほら見受けられる。


 おや?

 あそこで若い男女のパーティーにイチャモンつけている男二人組には見覚えがあるぞ。

 ちょっと声をかけてみようか。


「ねね、リュート。何か始まるみたいだよ」


 二人組の元へ足を向けたその時、横にいたベリーニがゲートを指差しながら口を開く。

 そこには木箱を積んだだけの簡易なお立ち台が設置されており、その上に大柄な体躯をした初老の男性がたっていた。

 巨大な青竜刀のような武器を携えた褐色の体躯は大柄ながらも引き締まっており、体に刻まれた多数の傷痕から歴戦の戦士である事が伺える。


「聞けええええええい!!」


 空気を震わせる大声に広場にいたハンター達は、何事かと次々に声の方へ視線を向ける。

「あ、あれは!」

「Aランカーのグレイブじゃないか!」

「あいつも参加するんじゃ報酬は期待出来そうにねーなぁ……」


 声の主を認めたハンター達が各々の反応を示す。

 称賛する者、諦めを混じえたため息を吐く者様々だ。


「なぁなぁ、あのグレイブって人知ってるか?」


 ひそひそと横にいるミモザの耳元で囁くと、何故かミモザは頬を引き攣らせながらポツリと呟いた。


「え、ええ。齢60を越えてなお現役、彼の青嵐槍(せいらんそう)は鋭さを増していると言われてるわね……」

「ふうん……で、あのおっさんがどうかしたのか?」

「ど、どうして?」

「いやあ、目がめっちゃ泳いでるし顔も引きつってるから気になってな」

「そ、そんな事ないわよ。そうよ! 緊張してるのよ! 多分そのせいだと思うわ!」

「緊張ねぇ」

「なによぅ!」

「うんにゃ、何でもございません」


 俺の言葉に狼狽している事は明らかなのだが、口を割りそうにも無いので適当に切り上げた。

 ベリーニも何か言おうとしていたようだが、それはグレイブのデカイ声に遮られた。


「今回の調査は生半可な仕事では無い! 依頼書にもある通り! 探索に向かったパーティが1組も帰らないと言う前代未聞の遺跡である! 実力が無いからだと笑う奴がいたら即刻帰るがよい! 探索に向かった者の中にはAランカーBランカーのハンターも居た事が確認されている! また、帰った者がいない為、内部構造等は全くの謎だ! 気を引き締め慎重に望め! 慎重とは弱さではない! ただただ突っ込むのは蛮勇と知れ! 無理だと判断したらその場で引き返せ! 逃げる事は恥では無い! よいな!」

 

 怒号にも似たグレイブの演説に、一時広場はシン、と静まり返る。

 が、次の瞬間。


「「「「「「オオオオオーーー!!」」」」」


 大気が割れんばかりの歓声が朝の広場を飲み込んだ。

 別に名演説、というわけでは無いのだが、ベテランの言葉の重みと言うのだろうか。

 5分にも満たない簡潔な演説だったのだが、とても心に響いたのだ。


 各々武器やら拳を振りかざし、やんややんやと喝采を送っているが彼のセリフの中に大変な事実がある事を皆気付いていないのだろうか?

 それとも気付いていながらも興奮してしまう、それがハンターの生態なのだろうか?


 AランカーBランカーが探索に行って帰ってこないって相当危険じゃないでしょうかね。


「なぁなぁ」

「なーに?」

 

 隣で「おー!」と可愛らしく雄たけびを上げているベリーニに声をかける。


「この依頼、放棄しませんか?」

「どうして?」

「だってAランカーBランカーも帰って来なかった遺跡だぞ?」

「んー大丈夫っしょ? その為の200人なんだから」

「そ、そうですか……」

「リュート怖いの?」

「こ、怖くなんてないさ!」

「じゃーいいじゃん。私達も強くなったんだし無茶しなければきっと大丈夫だよ!」


 内心かなりビビッてるがベリーニのあどけない顔で怖いか? と聞かれれば見栄を張ってしまうのが男の子。

 そうだよな、いざとなったら逃げればいいんだ。

 敵前逃亡は極刑とかじゃないんだし。


 はぁ……憂鬱だ……。



***



 太陽が頂点に上る頃、砂塵を巻き上げながら地響きと共に進む1団の後方に俺達はいた。

 砂漠用高速騎乗獣シロッコに2人1組で跨り、盛大な上下運動と打ち付ける砂塵をお供に付け風穴までの道を爆走中だ。


 今通っているのは正規ルートでは無く、高ランカー達が使う抜け道のような場所を走っている。

 ここを通れば砂海最寄の中継所までの日数を大幅に短縮する事が出来るそうだ。

 

 なぜ高ランカー達しか使っていないのかというと、ただ一言、シロッコのレンタル料が高いから。

 通常の砂漠移動用騎乗獣サンドホースの10倍近い料金を取られるというのだから、稼ぎの少ない低ランカーは使えない、というわけだ。


 だが値段の通り性能は段違いで、サンドホースの3倍はある速度を叩き出している。

 これで体が赤かったら、と思うのはこの世界で俺しかいまい。

 それほどの騎乗獣を50体ポンと用意するあたり、依頼の本気度が伺える。


 ただ難点がいくつかある。

 結構なスピードでガックンガックンと脳味噌が激しくシェイクされる事、顔に圧し掛かる風と舞い散る砂塵で呼吸がしにくい、砂が服の中に潜り込んで気持ち悪い。

 酸欠と乗り物酔いと砂の不快感のグロい3連星だ。

 ゴーグルとマスクはシロッコとセットで付いていたのだが完全防塵というわけではない。

 通常であればここまで酷い砂塵の中は走らないのだから当たり前っちゃ当たり前なんだが。

 50体のシロッコが爆走する様は軽い砂嵐レベルに達しているだろう。


 どれくらい走り続けたのか分からないが、やっとスピードが落ちてきている。

 早くしないとヤバイ。

 結構喉の上まで中身が上がってきている。

 止まれ、止まってくれ。

 2つの意味で止まってくれ。


 速度が低下した為、舞い上がる砂塵も大人しくなり視界がだいぶクリアになってくると、前方に青々しいオアシスが広がっているのが見えた。

 あれが目的の中継所だろうか。

 


 

 

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