表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キメラ勇者の異世界冒険譚  作者: 桑島 龍太郎
砂漠のトレジャーハンター
37/58

閑話 巡る思い

 スコッチから忠誠の誓いを立てられたその日の夜。

 俺は自室の窓際に置かれたテーブルに腰掛け、窓から見える軒並みと寒々しい夜の砂漠をぼんやり見ながら考え事をしていた。


 あれから湖底の洞窟【清浄なる蒼白の巡礼地】を抜けた俺達はどこに寄る事も無く、デザートサンドへ帰還したのだった。

 ちなみに気絶していたベリーニはと言うと……。

 洞窟から地上へ繋がる湖水へ潜行した際、半ば溺れる形で意識を取り戻した。

 取り戻したのは良いものの、パニックになり暴れた事で彼女は結構な水を飲み込んでいたのだが、急いで湖面へ上がった為事なきを得た。


 そうなる前に起こせばいいじゃないかと思うだろうが、今回気絶した彼女は自発的な覚醒でないと目を覚まさないレベルまで精神的ダメージを受けたらしく、ビンタしようが瞼を引っ張ろうが起きる気配が無かったのだ。

 まったくもってめんどくさい。


 今回の探索に至っては貢献度0%に等しい彼女なのだが、街に着くなり率先して洞窟で得たアイテムを依頼書と共にハンター支部へと届けていた。

 短時間で最下層まで到達したという事実と複数持ち帰ったアイテムによりランクが上がったと小躍りしていたのだがまぁ何とも他力本願と言うか楽天的と言うか。

 お前何もしてないだろ! と突っ込むのは心の中だけに留めて置いた。

 

「はぁ~~……どうすっかなぁ……」


 洞窟内で思った事が未だに頭の中で燻っていた。

 豪華な家も金もある。

 元の世界では考えられない生活だ。

 このまま安穏と過ごすのも悪くないとは思う。

 けど、何か違う気がする。

 

 朝起きて、学校に行って、学校が終わったら家に帰ってラノベを読み、ネットに噛り付き、妄想に耽り、寝る。

 それが今までの俺の人生だった。

 それが生きる事なんだと無意識に思っていた。

 けど、何かが違う気がする。

 

 この世界は現実だ、現実に幻想世界ファンダジーだ。

 15で成人を迎え、ある者は家督を継ぎ、ある者は未開の地を目指し、ある者は技を磨く。

 それに比べ俺はもう18だ。

 この世界の知識も無い、生きる術も知らない。

 そんな俺に何が出来ると言うのか。

 何も出来まい。


 何も出来ないのなら出来るようになればいい。

 情報弱者なにもしらないなら知識を集めろ。

 技を磨け。

 準備期間だと思えばいいんだ。

 焦る必要は無いのだから。

 

 新しく与えられた第2の人生を惰性で生きるのは止めよう。

 俺がここにいる理由インパルスを明確にしたい。

 燃え上がれ俺の妄想パトスよ。

 ふるえるぞハート

 燃え尽きるほど情熱ヒートを!


「ゆ……ゆ……ユニバァァァァァアアアッス!!」


 気が付けば俺は両拳を固く握り、プルプル震えながら部屋の中で全力で叫んでいた。

 窓を全開にして。

 犬らしき遠吠えが窓の外から聞こえてきた。

 おそらく俺への返答なんだろう。


 昔から言われている有名な言葉がある。

 その思いに達するまで、どのような葛藤や苦難が訪れたのかは分からない。

 だが今の俺にはその言葉が確実にしっくりくる。

 あえて、口に出して宣誓しよう。

 この大砂漠に。

 この世界に。

 そしておれ自身に。

 

 多くの偉人たちが声を揃えて言った。

 堅牢な己の砦を死守せんが為に。

 それを守る兵の不退転の決意を。


 すなわち――



「明日から絶対本気出す……!」



 と。

 

 

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ