表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キメラ勇者の異世界冒険譚  作者: 桑島 龍太郎
砂漠のトレジャーハンター
18/58

和解とハーティ

ブックマークしてくれた方ありがとうございますありがとうございます!

プレビュー1万越えそうでカタカタしております。


『聞きたい事はそれだけか? 今お主がいる場所はどうにも力場が弱くてのう、接続が悪いのだ。もっと魔素が濃い所は無いのか?』

『取り急ぎ聞きたい事だったんでな。この近くって言ったら俺が目覚めた遺跡くらいだと思う』

『む。ならば仕方あるまい。聞きたい事が無いのであれば最後に教えてやろう。ヴィジャクラの魂を覚醒させたければ魔剣槍に魔力を喰らわせれば良い。魔素でも瘴気でも有効だから覚えておく事だ。まぁ完全に覚醒するには多量の魔力が必要だがの』

『そうか、ありがとう。また分からない事があれば教えてくれ』

『うむ。ではの、健勝であれ』

『あぁ、またな』


 カーラとの会話を終えた俺は閉じていた瞳をうっすらと開いた。

 結構長く話し込んでしまったがミモザ達どうしているだろうと踵を返す。


「悪い、待ったか?」

「え? もういいの? まだ数分も経ってないけど」

「え」

「なに」

「数分?」

「うん、数分」


 あっれぇ……。

 もの凄く話してたんだけどなぁ……。


「用ってその剣が関係してたのね。どう? 他には何か思い出した?」

「はっ?! いやその、うん、アレだ。この剣は定期的に魔力を吸わせないと抜けなかったり錆び付いたりする曲者でな。後は自分の武具の事は思い出したぞ」

「はぁん……その剣が発光してたのはお食事中だったのね。道理でリュートが剣を抜かないはずよね、抜けないんだから」

「あ、あぁそうなんだよ」


 剣の事を指摘された時は一瞬ドキリとしたが、何の事は無い。

 魔剣槍ヴィラがミモザの言葉通り食事をしてくれていたおかげて何やら勝手に勘違いをしてくれたようだ。

 しかも俺が剣を抜かないのは抜けないから、とまで。


 我ながら上手い言い訳をしたもんだ。


「で、もう用事が無いならさっさと出ない?」

「うぅん……もう……無理ぃ……」

「お、ベリーニが起きそうだ。夢でも見てんのか? 気絶からの熟睡とはまた……」

「毎度の事ながらこう呑気だとイラっとするわね。ほらベリーニ! さっさと起きる! おどりゃそろそろ自力で歩かんかい!」


 お、おどりゃて……。

 ミモザさんキャラが変わってますよ。

 こっちでも方言とかあるのか?

 それはそれで少々興味深いな。


「ククク……我の眠りを妨げる凡愚よ、己の愚行を」

「あぁもうめんどくさい! いい加減に起きないとハーティが来るわよ!」

「ひっ! いやぁあ! ハーティはダメぇ! いっそ殺してぇ!」


 寝ぼけたベリーニも何だか一瞬懐かしい痛さの台詞言ってるし、ハーティって言葉に過敏なくらい反応してるし、ベリーニを起こすミモザも手慣れたもんだ。


「あっ……あれ、ここどこ? もしかして私また?」

「やっと起きたわね。そう、またよ。いい加減にもう少し神経太くしなさいよ、そんなんじゃいつか死ぬわよ」

「す、すいません……リュートも迷惑かけてごめんね……」

「いや、俺は」


 俺は平気だと言う前にミモザの鋭い眼光が俺を射抜いた。

 何か言え、といった合図なのだろう。


「俺は……ずっとあんたを背負えるワケじゃないし、死んで欲しくも無い。だから強くなってくれ。精神的にな」

「はい……ごめんなさい……」


 強く言ったつもりは無いのだがベリーニは目に見えてしゅんと小さくなってしまった。

 瞳にはうっすらと涙まで浮かべており、なんだか俺が悪者のような感じが否めない。


「あー別にベリーニの事を軽蔑したり嫌いになったワケじゃないからそんな気落ちしないでくれよ。な? 先輩」

「え、あ……うん! それなら良かったよー! 初めて出来た後輩に一瞬で見限られたかと思ったー」


 とっさにフォローを入れる俺だったが、あぁ、そういう事ね。

 切り替えが早いがそれは彼女の持ち前の明るさだと思っておこう。


「なぁ、さっき言ってたハーティってのは何なんだ?」


 足早に来た道を戻りながら、ふと疑問に思った事を聞いてみた。


「ハーティは魔人よ、魔人ハーティ。昔の大戦で敵味方関係無く虐殺した悪鬼という話でね……普段は温厚な魔人だったのが突如豹変、貪るように様々な種族を手にかけていったの。彼に絶滅させられた種族もいるそうよ」

「だからねー、悪い事をするとハーティが来て食べちゃうぞーって小さな頃から教えられて育った人がほとんどなんだよー!」

「でも昔の話なんだろ? それにいくら小さな頃から教え込まれたとしてもあんなにビビる事は無いんじゃないか?」


 まるでおとぎ話が現実で横行しているような話だ。

 それを心底怖がるなんて馬鹿馬鹿しい、まぁこの世界がおとぎ話みたいなモンだけどな。


「そうなんだけどね……説明するのも難しいけと、色々あるのよ」

「ハーティはいるんだよ?! 生涯現役なんだよ?! 悪い事をしたら足先からボリボリゆっくり食べられて治癒魔法かけられて死ぬに死ねなくてあらゆる苦痛を味合わされるけど狂う事も許されなくて最後に心臓を握り潰されて息絶えるまで地獄は続くんだよ?! そこんとこヨロシクなんだよ?!」

「ヨロシクって最後がファンキーなのは何でだよ」


 ベリーニの説明を聞いた限り俺の世界で言うお化けが来て食べちゃうぞーみたいな軽いノリで教えられた訳じゃ無さそうだ。

 描写が細かすぎるだろ、小さな子にそんなエグい話したらそりゃトラウマにもなるよね。


「ねぇねぇそんな事よりもさ。この可愛い魔物はなんなの? ずっとついて来るよ?」

「ぢゅい?」

「そ、君だよ君」

「あー……多分驚くと思うんだけど……気絶しないでくれよな?」

「……大丈夫だよ!」


 今一瞬間が有ったのが気になるが……。

 それにしてもこのネズ公が可愛いとは、人のセンスも案外変わって見えるもんだな。

 まぁスコッチがいきなり元の姿に戻らなければ平気だろ。


「こいつはな、ラットドラゴンだ。名前はスコッチ」

「は?」

「ぢゅう〜」


 ベリーニの足がピタリと止まる。

 身体のあらゆる動きが停止する。

 目線だけがスコッチのふわふわした体を凝視している。


 スコッチは後ろ足で立ち上がり、よろしくとばかりにぺこりと頭を下げている。


「そんなに怯えないで平気よベリーニ。この子はとても賢くていい子よ」

「人の言葉も解るしな。仲間になってくれた」


 ミモザがスコッチの横にしゃがみ込み顎の下を優しく撫でてフォローを入れる。


「そ、そうなんだーあはは……可愛いねー……」

「ぢゅっ! きゅいぃ?」

「スコッチはなんて?」

「あー、そうでしょう! 可愛いでしょう? って自分でそういう事言うのかお前は」

「きゅっきゅっきゅっきゅ」

「笑ってんじゃねーよ……ネズミのクセに冗談言うな」

「あはは! さすがドラゴンね。だてに1000年生きて無いわ」

「くくく……違いねぇ」


 あれ、釣られて笑ったけどなんか違和感を感じるような……気のせいか?

 あぁしまった。

 ベリーニが唖然として口が完全に開いてる。


「あ……あの……噛まない? 食べない? ボロ雑巾みたいにしない?」

「だーいじょうぶよ! ベリーニもさっき抱きしめてたじゃないの」

「じゃ、じゃあ……失礼します……」


 ベリーニは身体の硬直をゆるやかに解き、おずおずとスコッチの頭へ手を伸ばし、たっぷりとした体毛の中へ少しずつ手を埋めていく。


「あふ……もふもふだぁ……」


 先程まで怯え切っていた彼女はどこへやら、恍惚とした表情でスコッチを撫でくり回し始め、しまいには全身を使ってスコッチの体温と柔らかさと獣臭さを堪能しているようだった。


「ぢゅ……ぢゅうぅ……」

「我慢しろ、耐えろ、忍べ、これ忍耐なり」

「きゅぅぅう……」


 撫でられキスをされ胸いっぱいに匂いを嗅がれ頬擦りされめちゃくちゃにされているスコッチが救いを求めてきたが却下だ。

 これだけ愛でていれば元に戻った時も気絶する事は無いだろ。

 だからスコッチよ、耐えろ。

 我らの為に。

 その尊い犠牲は無駄にしないぞ。

 



***




「さて。これからどうする?」

「そうね……今からスコッチに乗って出発してもデザートサンドには着けないし……」

「私お腹すいたよー。スコッチもお腹空いてるはずだよー」

「ちゅっ?! ちゅぢゅちゅう!」

「私の事はお構いなくって。一応お前が移動手段なんだ、腹減って動きませんなんて事になったら困るぞ」

「ちゅう! ぢゅちゅっちゅぢぃ!」

「その時は気合で自らを食らうまでって……わかったわかった。一々通訳する俺の身にもなりやがれめんどくせぇ。つーか気合で自食行為すんな、適当に飼って食え、そんなスプラッター見たくないわ」

「今日はここに泊まりましょ。1人増えた分賄うぐらいのお金は持ってるから、それにここは物々交換も可能だしね」

「わーい! ごはんだー!」

「悪いな」

「いいっていいって。先輩には甘えるもんだぞ? 後輩クン」


 なんだろう。

 今鼻をちょんってされただけなのに物凄い幸福感が押し寄せてきたぞ。

 そうか……これが萌えなのか?!

 胸キュンなのか?!

 ジャスティスなのか?!!


 ……コホン……

 現在俺達は洞窟を抜けたオアシスを歩き、今後の予定を立てている所だ。

 日の傾きから現在時刻は16時頃、俺にこんな技能があったとは思えないが魔女神殿が言うには取り込んだ魂にそういった知識があれば自然と理解するのだそうで。


 オアシスを抜け、ミモザの先導の元宿屋で部屋を取る。

 動物は同伴出来ない為、別の小屋へ預ける事になった。

 当然スコッチは抗議したが動物は動物だ。


 そんなに一緒がいいなら人型にでもなってみろと言うと、背中に哀愁を漂わせながらテチテチ小屋の方へ歩いていった。

 まさか1000年以上生きて家畜と同じ小屋に入れられるとは思ってもいなかったのだろうな。


 明日は早めに出発するらしいので、少し早めの夕食を取る。

 失礼ながらくたびれた酒場で出される料理には期待していなかったのだが、出て来た料理は俺の予想を遥かに越えた美味しい物だった。


 大きな葉で包まれ蒸し焼きにされた白身魚は淡白ながら、噛み締める毎に香草と魚の芳醇な味わいが口の中に広がる。

 共に出された丸パンは木の実がゴロゴロと練りこまれており、適度な塩気が食を進める。


 腹も膨れ、食後酒を少し呑むと適度な睡魔が侵食してくる。

 こっちに来てから歩きっぱなしだったもんな。

 休もうとしてスコッチと遭遇したし、あんまり寝てないし。


 2人と別れ用意された部屋に入り、装備を外して藁と綿で作られたベットにゴロリと横になる。


「あぁ、そういえば装備、どうすっか……色々聞いたんだから試してみない、と……だ、め……」


 用意されたベットは案外フカフカで疲労と酒と満腹感のトライアタックをくらった俺はあっさりと深い眠りに落ちていったのだった。



暗い意識の中、彼が見るは己の未来か過去の幻影か。

魔に身体を包まれる事の意味。

されは彼に何をもたらすのか。


次回

魔装と君と

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ