轟く閃光
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やる気がますます上がります!
ラットドラゴンの雄叫びに静まり返った夜の空気が震える。
炎の照り返しか、新緑のような翡翠色に染まるその瞳が俺達を捉えているのは明確だった。
砂漠の王者、ラットドラゴン。
全身を二重の豊かな獣毛に覆われ、全長5mに達する巨躯から生み出される存在感は他を圧倒する。
大型の肉食獣もかくやという丸太のような強靭な手足から繰り出されるパワーやスピードは追随する者を寄せ付けない。
おろし金のような突起のついた尻尾が振り抜かれれば、それに触れた物は無条件で摩りおろされる。
「ヂュッ! ヂュウウウウウウ!」
全身の毛を逆立て夜空に吠え抜く姿は正に絶望の一言がピタリと当て嵌まる。
ビタンビタンと冷えた地を打ち付ける尻尾は威嚇か、それとも今宵のディナーを見付けた喜びか。
「これがラットドラゴン……?」
「私も実物を見たのはこれが初めてだけど……どうしよう……あの巨体からは想像出来ないスピードを誇ると言うわ……私達の中でそのスピードに付いていける可能性があるとすれば……」
「え、えええ! 俺かよ!」
ミモザがそこで言葉を切り、生唾を飲み込む音と共に視線を俺に向ける。
いや、無理でしょ!
あんな化物とどう立ち会えと!
あんなフサフサでぽよぽよしててつぶらな瞳、齧歯類特有の尖った牙。
あんなぴちぴちと動く毛の無い尻尾。
あんな……あんな……
……あれ……
よく見ると結構可愛いんじゃないか……?
雄叫びを上げるだけ上げて微動だにしないラットドラゴンを見据えつつ俺はそんな思いに囚われ始めていた。
しかしドラゴンは何故動かないのだろうか?
いや、誰が言いだしたのか知らないけれどあれはどう見たってドラゴンとは程遠いだろ。
爪も翼も鱗も無いんじゃトカゲとも言えない。
そんな巨大ネズミは飛びかかって来るワケでも無く、こちらを伺うように鼻をヒクヒクと忙しなく動かしている。
「どうなってるんだ?」
「さ、さぁ……」
剣を構えて答えるミモザだったが完全に腰が引けている。
ベリーニなんか座ったまま気絶している始末。
彼女はいつから気絶していたのだろうか。
「チュウ……チュチュチュ」
「ちょっ! 何してんのよ! 刺激しないで!」
「いやほら、なんか害無さそうだしよく見ると可愛げがあるじゃないか」
チュウチュウと鳴き真似をしながらそろそろと巨大ネズミに近付いていくが、当の本人は鼻をヒクつかせるだけで特に変わった様子は無かった。
その巨体まで後数歩といった所で突如ネズミが前傾姿勢をとり歯をカチカチと鳴らし始めた。
脳内で警報が鳴り響く。
これはヤバイんじゃないか、あの歯で噛みつかれたら体の一部がおさらばするのは確実だ。
「ヂュッ! ヂュヂュチュウウウ!」
雄叫びと共にがぱりと開いた顎の中に光が収束してゆく。
まさか、ブレスと言うやつですか?!
それを浴びたら骨の一片も残らないと噂のブレスですか!?
そんな事実が頭に浮かんだ瞬間、俺は180度向きを変えて駆け出そうとしたがサラサラの砂に足を取られ無様にも地面に顔から突っ込んでしまった。
終わった……
俺のセカンドライフがあっさり終わりそうだ……
頭の中を懐かしい記憶がぐるぐると走り回る。
そうか。これが走馬灯ってやつなのか。
はは……小6の夏休み、エミリが自転車ごと田んぼに突っ込んだっけ。
俺が小4の時、風邪で寝込んだ時家までお見舞いに来てくれたな。
中学校では女子にあらぬ疑いをかけられた時エミリは真っ先に庇ってくれた。
あぁ……幼稚園の痛い告白まで浮かんできた。
あの子は今どうしているんだろうか、記憶も朧げで顔も思い出せない。
チューリップ形の名札には可愛らしい文字で名前が書かれていた。
【りんご組 えいす えみり】
はは……そうかよ……
今はもういないのか。
辛いな。
最後にありがとうの一言も言えなかったな。
サンキュー恵美理。
お前が初恋だったとはな。
今更思い出すなんて反吐が出る、マジでくそったれだぜ。
「死ねるか馬鹿野郎が! やってやるよ!」
古人曰く窮鼠猫を噛む。
ブレスが何だ、デカイネズミがなんだってんだ。
俺のキューソネコカミ見せてやる!
「っだらぁぁぁぁ……ああ、あれ?」
一瞬の走馬灯の中で死を恐れぬ鬼人と化し、せめて一手浴びせてやろうと震える体を叱咤してラットドラゴンに突っ込もうとした俺の目に写ったのは……
さきほどの場所より数m後退して、恐ろしい尻尾の先をピコピコと振りつつ無防備に座り込むラットドラゴンの姿だった。
そして上空には眩い光源が灯されており、夜の闇など無かったかの如く光り輝いていた。
「灯火なの……? いえでもこんな規模のモノは……そんなバカな……」
「知っているのかミモザ!」
「えぇ、聞いた事があるわ……知能の高いドラゴンは魔法を操ると……そしてあれは初歩中の初歩、明かりを灯す生活魔法よ」
「そ、そうか……案外地味魔法なんだな……」
くっそ! あの口の光ってこれかよ!
無駄に覚悟決めた俺の心意気と恥ずかしいセリフを返しやがれ!
大げさ過ぎんだろ!
ブレスとか言った奴誰だよ出て来いよ!
初恋の相手とかなんかもうぬああ!
恥ずかしい!
しかもちゃっかり横に移動して来んなよミモザ!
ベリーニ置きっ放しだよ!
「どうやらこのドラゴン、敵意は無いようね……それとも王者の余裕ってヤツなのかしら」
「はぁ……なんか色々疲れた」
俺が肩を落とし、深い溜息を吐いたと同時に、ボッ! っと何かが弾けた音が聞こえた。
気が付いた時には数m離れていたハズのラットドラゴンの鋭い牙が目の前にあり、俺の腹部にドラゴンの強靭な指が一本めり込んでいた。
「え」
「あ」
何も反応出来ず、痛みすら感じぬまま俺の意識はそこで暗転した。
吹き飛ぶ意識。
黎明の砂漠に訪れたのは王者の蹂躙なのか。
龍斗のもつ武具の存在とは。
次回
渇望した再開




