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悪夢

久し振りに投稿します。

携帯執筆なので投稿速度は遅いかもですが、なるべく毎日更新して行きたいと思ってます。

 轟轟ごうごううなりをあげて燃え盛る炎が漆黒の夜空を染め上げ、その炎紅を背に黒龍の如く登る大量の煙。


 行き交う冒険者や行商で賑わっていた大通り、恋人達が語らった噴水広場。

 そこにはもう人々の姿は無く、代わりに、倒壊した建物の瓦礫や無残に殺された物言わぬ骸が散乱していた。


 俺はそんな光景の中、ただ立ち尽くしている。

 先程まで聞こえていた怒号や悲鳴はいつの間にか聴こえなくなっていた。


 どうしてこうなったのか全く分からない、気が付いたらここにいた。

 ふと、真っ赤に染まった自分の手が視界に入る。

 手だけでは無い、腕、胸、足、自分の前面全てが真っ赤に染まっていた。


「血か……誰の血だ……」


 俺の血じゃない。

 全身が血に染まっているというのになぜこんなにも冷静なのか。

 自分の血じゃないから?

 違う、あまりにも非現実過ぎて受け入れられないのだ。

 このクソみたいな現実を。


 その時ふわりと風が舞った、この地獄絵図に相応しくない抱擁にも似た優しい風。

 穏やかに熱を運びチリチリと肌を刺激するが不思議と熱さは感じ無い。


 風に合わせて炎が揺らめき、一つの影が浮かび上がった。

 そして影を避けるように炎が二つに割れて一人の男が姿を現す。

 錆色の総髪、全身を黒い鎧で固め、二振りの双剣を抜き身で携えながらゆっくりとこちらへと歩いてくる姿は、周りの惨状と合間って地獄の使者を彷彿とさせる。


「ここに居たのか……貴様は何をしている? 全てを守るのでは無かったのか?」


 誰だこいつ……。

 俺は……誰だ……?

 守る……? 何を……? 何から……?


「フン……ショックで喋る事も出来無いとはな。――が聴いて呆れる」


 今何て言った……それは俺の名か?

 解らない、一体何がどうなってるんだ。


「もはや貴様には何の価値も無い。死んであの子らに詫びてこい。せめてもの手向けだ、俺自ら殺してやろう」


 待て! 俺はまだ何も聞いて無い! 喋れないんだ! 身体が動かないんだ!

 待て待て待て! その振り上げた物騒な剣を降ろせ! 何で剣から炎が噴き出してるんだ!


「じゃあな」


 黒騎士は虫を振り払うような仕草で鬱陶しそうに剣を振り抜く、その動作が見えたと同時に俺の意識もそこで暗闇に沈んだ。



***



「うばっっっ死ぬ! 死んだ! 俺真っ二つ! って……あれ??」


「何言ってんだ? ほれ、もう着くぞ。よだれを拭けよだらしねぇ。ブサイクが5割増だぞ」


「あ……あぁ……そう、だよな……夢、か……って一言多いんだよテメーは」


「ただでさえブサイクでキモオタのお前がそんな顔してたら ゴキブリだって泣いて謝って娘差し出すぞ」


「うるせー、むしろ泣いて謝られたってゴキブリの娘なんてゴメンだわ!」


「あーそういうの良くないと思うわー。人権侵害? 格差社会? 大人しくブヒブヒ言ってろ人類の面汚しが」


「はぁ?! いきなり話に割り込んで来て何だその罵詈雑言は! おい! 汚物を見るような目をやめろ!」


 ちなみに罵詈雑言を飛ばしてきた二人、ゴキブリうんぬん言っていたのがクラスで一番仲が良い……ハズの平アイザック、某首塚である平一族の末裔と万有引力を発見した某彼の末裔のハーフである。と自分で言いふらしてるが絶対に嘘だ。


 俺の事を人類の面汚しだの言ってくれた女は永須恵美理(えいす えみり)

 ショートカットの黒髪に穏やかな雰囲気を醸し出す垂れ目、目尻についた泣きぼくろが妖艶さを少しプラスしている。

 幼馴染なだけに体のラインはとても興味が無い、しいて言うならば上から89 58 86といった所か。


 興味が無いのに何故解るのか、だと?

 フ……知れた事。本人に興味は無くとも女体には興味があるだけだ!

 矛盾しているのは分かってる、だがこれが男の子!


 この2人はなんだかんだと悪態を尽きながらも俺の友達でいてくれるのを辞めない。

 俺と違って頭も顔も良い。運動は俺の方が上だけどな!

 正直友達と言えるのはこの2人だけだったりする。


 1匹狼カッケーとか思ってるワケじゃない。

 生来目つきが悪く、真顔で道を歩いているとやれ睨んだだの喧嘩売ってるだので、ヤンキー連中によく絡まれる。

 加えて無口で無愛想。

 客観的に見て、そんな人種と仲良くしたいなんて人間はよほどの変わり者か怖い物知らずしかいないだろう。


 なんというか、他人との距離がつかめず、話しかけられるとついそういう反応をしてしまうのだ。

 つい最近なんて隣の席の男子が落とした消しゴムを拾ってやったら「な、殴らないで!」とか言われる始末。

 普通に「消しゴム落としたよ」って言っただけなのにだ。


 正直その日はかなり泣きそうになった。

 親愛なる平君はそれを見て大爆笑していたわけだが。


「んな事ぁどーでもいいンだよ。そろそろこのクソ長いトンネルが終わるぞ、ここを抜ければ晴れて別世界だ。……んにしてもこんな長いトンネルってあんのか……? 体感10分はトンネルの中だぜ」

「ねー龍斗ぉ。そんな事よりお菓子持ってなーい? 私お腹空いちゃったー」


「そんな事よりって……まぁ恵美理の苦言には慣れてるけど……さ……ってちょっ……ちょっと眩し過ぎないか?」


 座席から体を伸ばし進行方向であるトンネルの出口へと視線を向けると、夥しい光量が視界を塞ぐようにその輝きを増していった。


 他のクラスメイトもそれに気付いた様子でザワザワと色めき立ち始める。


 あまりの眩しさに瞼を閉じるが、瞼の薄い皮膚では遮れない程その光は強烈だった。そして爆発のような衝撃がバスを揺らし、全てが白に染まった。


 どれくらい目を閉じていたのだろうか、瞼の上から容赦無く叩きつける瞳が潰れるのではないか、と思わせる激しい光の奔流は、ゆっくりとその勢いを殺していった。

 押し寄せる光の波が収まっても、瞼の裏では未だ光が明滅している。

 いつまでも目を閉じているわけにもいかず、俺は恐る恐るソロソロと瞼を開け、次の瞬間、あまりの景色の豹変ぶりに自分でも瞳が落ちるのではと思わんばかりに目を見開いていた。


 まず最初に飛び込んでくるはずのバスの座席が見当たらない、代わりに辺り一面の銀世界がただただ広がっている。

 立ち上がって周りを見ても、バスの中にいるのは変わらないのだが、座席のシートもバスの中も、窓の外も、新雪が降り積もった平原のように真っ白く染め上げられていたのだ。

 唯一色があるとすれば黒、バスにいるクラスメイト達が影のように黒く染まり、その表情などは判別する事が不可能なほど。

 それはまるで、モノクロの映画を見ているような感覚、黒と白以外全ての色を失ったかのような異様な風景がそこには広がっていたのだ。

読んでいただき感謝感激雨雪崩です。

感想やご意見、リクエスト等頂けレバー狂気乱舞します。

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