支配者の迷宮 ー新生活とモンスターー
カガリはジューベーにヴェリーを連れていつもの配置にある小部屋へ連れていかせ、一度自室へ戻る。アッレ達はキッチンか食料貯蔵庫かに行っているらしく、見当たらない。
「さてと、じゃあ必要な物を揃えるかね」
そう呟きながらパソコンを操作していく。と言っても、携帯端末で戻ってくる途中に大体の物を取得済みなので、あまり時間はかからない。
生物合成、変換装置カプセル3個セット500pを居住区の端の魔力生成室Dランク(一時間に60)100pに配置。ここをこの先研究施設の区画にする予定だ。ちなみに生物合成、変換装置カプセル3個セットは使用時魔力を起動に30使用するためそれように魔力生成室を置いた。
「あとは、一応牢屋も増やして、あとはモンスター作りに魔力使うか」
もうすぐ魔力が魔力貯蔵室一つ分位になるので、ちょうど良いだろう。
モンスターメイカーと設定した種族の影響から美少女メイカーも用いて設定していく。
できたモンスターを見て満足して頷き、カガリは携帯端末で召喚出来るようにしておく。
一通りの作業が終わり、ジューベーを待たせている小部屋へと戻る。
「て、てめえ!」
入った途端こちらへ気付いて恨みに満ちた目でこちらを睨むヴェリーにチラリと視線を向けてカガリはジューベーに話し掛ける。
「暴れなかったか?」
ジューベーはそれに器用に肩を竦めて答える。どうやらそれなりの暴れっぷりだったらしい。
「おい」
「な、なんだよ」
幾分ドスの効いた声で話し掛けると、ヴェリーは腰が引けたように身構える。どうやらカガリがジューベーをけしかけるのではと不安になっているらしい。
「賭けをしないか」
「・・・はぁ?」
「賭けに勝ったらお前を解放してやる」
カガリの言葉に困惑するヴェリー。
「賭けに負けたら俺に服従する
「それだけじゃダメだ」
不安そうにしていた様子から一変し、ヴェリーは意志の強い目でこちらを睨んでいる。
「何が望みだ?」
こちらがあくまでも主導権を握っているため、たいして意味はないが一応聞いてみる。あまりに出過ぎた条件ならば賭けを更に厳しくするか、始めから飲まなければいい。
「勝ったらホーリエも解放しろ」
その言葉にカガリはポカンとしたあと遅れて理解したように表情を戻す。
(こいつ、ホーリエが好きなのか)
そう思うとニヤニヤと笑うのを抑えられない。
「な、なにが可笑しい!」
「いや、良いだろう。約束する。なんならついでにお土産も持たせてやる」
そう言いつつジューベーの姿を伺う。その堂々とした姿に不安を感じなかったためそのままヴェリーに視線を戻す。
「賭けの内容は簡単だ。1週間以内にこいつを、ジューベーを倒せ。戦闘で、不意討ちはなしでだ」
「なっ」
「これ以上譲歩は出来ない。お前にばかり構ってはいられないからな」
何か文句を言おうとするのを言葉で遮り、入ってきた扉を開ける。
「この扉は俺しか開けられないようにしておく。食事と体を拭く布くらいは持ってくる。それと寝られる部屋もこの扉の反対側に作っておく」
そう言ってカガリはそこを去った。
その日からヴェリーは必死にジューベーに立ち向かってはボコボコにされてカガリに手ずから治療される日が続くが、ここでは割愛させて頂く。
一方その頃、アッレ達はカガリがすぐには食べ物が手に入らないだろうと取得しておいたCランク食材(一般にスーパー等で売られている食材)1ヶ月分使用権(これは人数が何人に増えてもその分使える為、予めカガリが出来る限り大量に使い料理を作り貯蔵室に保存しておくよう伝えてある)200pを存分に使い大鍋に豚肉を入れた野菜たっぷりのクリームシチューを30人前作り、野菜炒め等を作っていた。
「こ、こっちは柔らかくなりましたー」
ふかしたジャガイモをマッシュにしていたティーリがアッレに声を掛ける。
「では胡椒を適度に混ぜて一口大に丸くしてください」
「こっちはいつまで煮ていれば良いんだ」
「煮こぼれないようしっかり見張ってくださいね。もう少ししたらニンジンつついて柔らかくなったか確認してください」
「肉切り終わった」
「上手に薄く切れていますね。それはこちらで焼くので隣にある葉を一枚ずつに分けてボウルにお願いします」
「ボウルって?」
「隣においてある銀の器です」
「・・・これ」
「おお、綺麗に盛り付けてありますね。料理上手ですか?」
「・・・慣れてるだけ」
リフィ、ホーリエ、ナシェリの順に会話しつつ、アッレはホーリエから受け取った肉を野菜炒めに混ぜて焼いていく。
「ニンジンとやらがやわらかくなったんだけど」
「それじゃあそのまま火の番お願いしますね」
「お、お団子できました」
「ではこの炒めものを焦げないように混ぜていてください。そちらの仕上げを先にしてしまいます」
こんな感じで終始慌ただしく料理していた。
「お、旨そうだな」
だからそう言いながら入ってきたカガリにすぐに反応するものはいなかった。
「あ、主。ご用件はお済みになりました?」
「おう。あ、ホーリエ、使ってない肉貸してくれ」
「は、はい」
アッレの言葉に皆身構えるが、カガリは気にせずホーリエが切った肉をトレーに入れ、取得した食材として入っていた安物ワインをそれにぶっかけ、ラップで蓋をする。
「じゃ、ホーリエ。これ食材貯蔵室に置いてきて。明日の夕食にするから間違ってもこぼさないように」
「は、はい!」
カガリの言葉にホーリエは物凄くゆっくりとトレーをち上げ、キッチンを出ていった。
「次、ティーリとリフィ」
「ふわっ!」
「は、はひっ」
「ティーリは俺と芋の仕上げ、リフィはクリームシチューの盛り付けを頼む」
「は、はい〜」
「わ、わかった」
「ナシェリは炒めものをアッレと一緒に盛り付け」
「承知しました」
各々に指示を出し、カガリは近くに寄ってきたティーリを連れて中華鍋に近寄る。ティーリにジャガイモの団子を入れたトレーを持たせ、カガリは一つを手に取り掌で転がしてみる。
「おし、十分」
そう呟いて十分熱せられた油に次々に投入していった。焦げ目が付くくらいでサッと揚げていく。
半分以上揚げ終えた時点で不思議そうな顔をしているティーリにカガリが気付き、最初に揚げた一個をティーリの口元に持っていく。
「かじってみろ」
カガリの言葉と行動にビクッとしたものの、両手にトレーを持っているので手を出せず、仕方なさそうにカガリの手から直接、恐る恐る一寸だけかじりとった。その次の瞬間驚き、顔をほころばせる。
「美味しいです」
「気に入ってくれてよかった」
そう言いつつティーリがかじった団子を口にほおりこむ。それに気づいたティーリは顔を赤らめ、カガリの後ろから敵意の塊が押し寄せてくるが、カガリは気にせず調理の続きを行った。
1時間もしないうちに料理は全て出来上がり、全員がテーブルにつく。ヴェリーの分は皆が並べているうちにカガリが持っていき、疲労困憊な様子を見て呆れていた。
「それじゃあ各々今日の糧に感謝を込めて、頂きます」
「「「「「頂きます」」」」」
皆一斉に食べ始める。それぞれに食べ方の特徴が出ており、カガリとアッレは嬉しそうに頬を緩めながら食事を進める。
「えっと、か、カガリ様は、料理、お得意、なんです?」
ティーリが食事をしつつ上目遣いでカガリに聞いてくる。リフィは、こんなやつこいつで十分よ、と言わんばかりにカガリを睨み付けてくるが、カガリはどこふく風と気にしないで答える。
「昔創作料理が趣味だったから、色々試してたんだよ。そのお陰か料理は結構得意だよ?」
カガリの言葉にアッレ以外呆気に取られる。その様子にカガリは苦笑いしながら続ける。
「第一アッレの料理技術だって俺のをコピーした訳だしね」
その言葉にリフィは釈然としない顔をし、ホーリエとナシェリはそんなものかと食事を再開する。ティーリは若干キラキラとした目でカガリを見つめるが、カガリに食事を勧められてハッと我に返り、恥ずかしそうに顔を少し赤らめつつ食事を再開した。
食事を終え、この上なく幸せそうな少女達を眺めつつ、カガリは話を切り出す。
「さて、これから何かないかぎりこれより多少グレードダウンした食事をしていくことになるけど、その上で俺達の中のルールを決めようと思う」
急に真剣になったからか、皆慌てて姿勢を正す。
「まあルールというか、この先の流れもだけど。まず君達にはアッレと共に1週間ここでの仕事である家事と迷宮業務を覚えてもらう。その上で何に適正があるかを確認して、それぞれに仕事を割り振ろうと思う。それまでの間に気まぐれに夜一緒に寝るよう声を掛けるけど、基本的に添い寝してくれればいい。仕事覚えてる最中なのに手を出すつもりは毛頭ないから。
それに、一人ずつ、ナシェリからにするけど体調調整をするから俺に付いてきて。終わったら順に声をかけていくから。基本的には一両日中には終わる予定だけど、場合によっては2、3日かかるときもあると思うからあまり深く考えないように。
最後に、俺からの命令や約束を破ったら罰を与える。けどこれも基本的に命令する事自体少ないと思うからあまり関係はないかな。以上、質問は?」
長々と話すと最後に全員の顔を確認していく。
「はい」
リフィが手を挙げる。意外と教育が行き渡っている子らしい。
「なにかな」
「外出は出来るのか?」
「許可制にするつもりかな。いないから慌てるのも困るし、下手に外に出ようとして迷宮のモンスターにやられたら目も当てられないから」
苦笑いしながらのカガリの言葉にリフィは軽く唇を噛む。
「他には?」
「は、はい」
次に手を挙げたのはティーリである。カガリはそちらを見ると頷いて先を促す。
「あ、あの。着替えとか必要なものは・・・」
「うん、最初は皆の家に行ってもらって数日分の着替えを持ってきてもらえるかな。護衛もつけるつもり。で、その他必要なものは俺かアッレに声を掛けて。出来るだけ用意する」
そう言うとどこか納得したように頷きティーリは満足そうにする。次にナシェリが黙って手を挙げる。
「はい、ナシェリ」
「ここは危険はないの?あとはあなたは私の嫌なことはしない?」
したらひどい目に合わせる、と言う目と濃厚な殺気にカガリは思わず顔が引きつったが、一度深呼吸してから慎重に言葉に出す。
「この迷宮のモンスターより強くて空気読まなくて偶然発見するようなはた迷惑な奴が来なければしばらくすればここも強化出来るし、そうならないことを祈るだけかな。んで、君の嫌なことだけど、わかっている部分から妥協点を探すから。体調調整が終わったら話し合おう」
カガリの言葉にナシェリはコクリと頷き黙りこむ。




