閑話 年末大掃除
これが今年最後の投稿になります。
楽しんで読んでいってもらえると私も嬉しいです。
「ちょっと!お風呂掃除に人足りないよ!?」
「ゴメン、お風呂は急がなくていいからなんとかこなして!」
年末にバタバタと騒がしくメイド達が動き回っている。
きっかけはまたカガリの言葉だった。
「そろそろ新年だね」
「新年?」
アッレ達と取る夕食の席でカガリが持ち出してきた自室のカレンダーを見ながら言う。
この世界は一年の日数は360日で、年末に1日増える年が一年おきに来る。1日が24時間なのは変わらないようなので、あまり気にはしていなかったが、クリスマスの日程が入ったので年末だと気づいたのだった。
「年末だと何をするのですか?」
良い思い出が無いのであろうナシェリが顔をしかめて聞いてくる。
「新しい年を気持ちよく迎える為に掃除をしたり、年越しのそば食べたりかな・・・コタツは要らないだろうし」
堅苦しい口調は身内ではあまりしないカガリは思案しながら答えるが、アッレ以外全員がピンと来ないらしく首を捻っている。
「ではそば打ちからですか?」
「それも楽しみだけど、おせち料理も作らないと」
アッレとカガリの二人で盛り上がりはじめるが、周りはついていけずに困惑した空気が流れる。
「当日はそば打ちとおせちで別れようか?」
「おせちは前日から仕込みたいので、1日早いです。」
「じゃあその日の前から3日位大掃除だね」
「・・・・・・それだと明日からになりますが」
ひきつった顔をしたアッレにカガリが笑顔で肯定する。
「じゃあ明日から大掃除だ」
「そこ洗剤薄いよ何やってんの!?」
「くっ、こんなに強かったとは・・・」
部屋の外から聞こえてくる声になんだか染まってきたなぁと思いながらカガリは自室の整理をガリアと行っている。
ガリアは迷宮作りに引っ張り出して散らばっている本(薄い本ではない)を本棚に戻している。
たまに中身を読んで百面相をしているのが可愛らしい。
カガリはパソコン周りを拭いたりクリーナーで綺麗にしたりしている。
メイド達に稀に休日と共にとりためたり買っておいたアニメやマンガを見せていたのだが、大分馴染んできたらしいことがわかり、ちょっと嬉しくなるカガリ。
文化ハザードですね、なんてアッレには言われたが気にしていない。
「か、カガリ様。こちらの本は?」
ガリアがカガリに見せてくるのは美少女年鑑のようなものである。擬人化する魔物は美少女メーカーで外見を決めないといけないのでこれを参考にしたりしている。
「ああ、そっちの棚に」
カガリの指示に複雑そうな顔をしつつもそのまま言われた通りの場所へ入れる。
そうして片付け終えたところから徐々に一報を入れていき、ぎりぎり3日で大掃除を終えた。
「ふー、疲れた」
メイドの1人がそう呟きつつ通り過ぎるのを見ながら明日のそばやおせちの材料注文をアッレと打ち合わせ、いつも通りパソコンで購入してその日は終了した。
翌朝、そば打ちに3割、おせちに7割のメイドをくじ引きで決めた(そば打ちに決まったメイド達は狂喜していたりする)。奴隷は希望制にしたが、大半の奴隷がそば打ちに興味があるのかそちらに集中したのでそのうち半数の人数をそば打ちにした。
「ほら、こうやってこねるんだ」
「ほ、ほはぁっ・・・」
手を重ねてこねかたを指導していくが、指導されているメイド、リタは頭が真っ白になっているのか顔を真っ赤にしたままフルフル震えてされるがままになっている。リタはクールなキャラが売りだが、カガリにいじられると途端にテンパったりするのでカガリにとっては面白い子だった。
メイド達は全員似たようなリアクションで、マリア達はまだマシだがぎこちなくなるのは変わらなかった。
昼御飯を予め作っておいたサンドイッチで済ませ、粉だらけになった服や体を洗いにカガリ以外が風呂に向かい、カガリはおせちの方を手伝いに行く。
ちなみにカガリは創作料理は作ることが多かったのだが、おせちやそば打ちはしたことがなかったのでパソコンでレシピを購入し予習していただけだったりする。
おせちの方は戦争のようだった。
慣れない餅をついて勢いに負けて転びそうになる者。
餅をかえそうとして手を潰されそうになり怒鳴っている者。
天ぷらを揚げるという工程が全て真新しくて、見本を見せているアッレを取り囲む人だかり。
煮物を焦がさないようにしているのかひたすら鍋をかき混ぜている者。
つまみ食いをしようとして怒られている者。
その他にもバタバタと動き回る者達が沢山いた。
「調子はどうだ?」
「じゅ、順調です」
つまみ食いしているメイドに声を掛けると慌てて姿勢を正してカガリの方を向く。
「・・・何をしているのかな?」
「え、えっと」
「主様、お手が空いているなら手伝ってください」
アッレがカガリに気づいて助力を頼んだ。
そのあとはカガリが手伝い、風呂から上がったメイド達も手伝いなんとか夕暮れには間に合った。
「いただきます」
全員が席に付き、一斉に食事を始める。
席はカガリの両脇にマリアとメリーナが陣取り、マリアの隣にアッレと更に隣にホーリエが座っていたりした。
カガリ達の食べ方を真似しつつ姦しく食事を進めていく。メリーナにはカガリが食べ方を手取り足取り教えつつ食べていく。
「た、食べにくいです。飛んで来ますしハシとやらも使いにくいし」
ぎこちなくそばを啜りながらメリーナが困ったように言う。
メリーナは度々食事にお邪魔したりお風呂を借りたりしているので以前よりも綺麗になり、冒険者ギルドでの人気も更に高まっていた。
男が多い職場だからか、絡まれたりして気疲れしているのをカガリの館で癒している感じもある。
「もうここに住みたい位ですね」
「嬉しいことを言ってくれますね」
笑顔で天ぷらを取って食べさせていると、ふやけたような笑顔でそんなことを言うメリーナにカガリは嬉しくなった。
食事が進み、飲み会の体を示し始めたので適当な酒(ポイントで購入した甘めのワイン)でゆっくりとした空気を楽しむ。
「甘くて美味しいです」
ニコニコ笑いながらカガリが注いだ酒に口をつけるメリーナ。
さりげなくティナが酒を持ってきてくれたりしているが、カガリは元高校生であるため果物のジュースだったりする。
大分酔いが回ったのか、楽しそうだが眠そうな顔をしているメリーナをソファーに連れていくと、一緒に座るように言われた。
カガリが断る理由もないので従うとメリーナがカガリの太股に頭を載せ、膝枕にした。
「ちょっと休ませてもらいますねー」
「どうぞどうぞ」
一言断りを入れるとメリーナはカガリの返事も聞かずに眠りについた。
「メリーナ様は今日は何かアクシデントがあったのかギルドが大変忙しかったため夜番からずっと働き通しだったそうです」
後ろに来たティナが起こさないよう小声でカガリに耳打ちし、カガリはお礼と共に軽く頭を撫でてやった。
ほぼ身内の飲み会なので、飲み比べしているのか日付が変わる頃にはほぼ全員が撃沈していた。
「眠れませんか?」
「まあ、もうすぐ寝るけど、ちょっと風に当たってるだけだよ」
熟睡しているメリーナを客室のベッド(半分メリーナ専用みたいな扱いになっている)に寝かせて外に置いたベンチで夜空を眺めていたカガリにアッレが声を掛ける。
「こんな時間が続けば良いんだけど」
「人は変わり、時は移ろいます。今のままを望むことは難しいですよ?」
あくまでも不可能ではないのかと苦笑し、カガリはアッレが差し出した紅茶を受け取りアッレを隣に座らせる。
「何も変わらないことじゃなく、変わりつつも大事な事は守っていきたいかな」
「そうですね」
そう言葉を交わし、カガリはアッレと紅茶の湯気がなくなってもしばらくの間黙って夜空を眺めていた。
心地よい静寂であった。
物陰からその様子を見ていたマリアはほんの少し悲しそうな表情になりながら、自室へと戻っていった。
翌日、二日酔いでグロッキーしたメイド達その他がノロノロと片付けをしている。
奴隷の中には酒に強いのかドワーフの男など数人が率先して片付けをしていた。
その日のよるまたおせちを食べながら酒を飲んだためまた次の日も二日酔いになったりするが、それは余談だ。
後日、ファティナにその事を知られ文句を言われたが、おせち料理を食べさせたら機嫌が直っていた。
アッレさんの教育講座
アッレ「は、やりません」
野猫「マジですか」
アッレ「だって今書き上げたばかりじゃないですか。今回下書きすらしてないし」
野猫「あーん、バラさないで!」
アッレ「キモい」
野猫「酷い!」
アッレ「というわけで、今回は・・・特に何もありません!」
野猫「ないんだ!ないよねそりゃ!」
アッレ「なので、ゲストをお呼びしています」
野猫「え?聞いてないよ?作者が聞いてないとかアリなの?」
アッレ「書きながらほくそえんでる癖に」
野猫「いやいやなんでそんな顔をしてる展開になってるの」
アッレ「ゲストはカガリさんの長女、フェミアさんです」
フェミア「どうも、まだ最初は役目がなく1日勉強しています」
野猫「なんというか、うん」
フェミア「文句があるなら言ってください。お尻を霜焼けにしてあげます」
野猫「地味にキツイ!?」
アッレ「ね?ツッコミでしょう?」
フェミア「そうですね」
野猫「あ、ボケてたのね」
フェミア「ボケ?なんですそれ」
野猫「ま、マジだと?」
閑話休題・・・
アッレ「それでは改めて、いずれ登場予定のフェミアさん、意気込みをどうぞ」
フェミア「父様ラブ」
野猫「まさかのファザコン発言来たぐぴゃっ!?」
野猫お尻に氷塊当てられる。
フェミア「・・・なにか文句ある?」
野猫「いえ、ないです」
フェミア「とにかく私は早く出たいです」
アッレ「それなら作者に訴えるのが一番です」
フェミア野猫に氷塊を見せつけながらにじりよる。
フェミア「さっさと私を出しなさい」
野猫「だからうひっ、まだひゃうっ、話がふやっ、繋がらないからひょわっ、出せないみゆっ、のだまゃっ」
野猫少し話す度に氷塊を体の至るところに押し付けられる。
アッレ「それでは皆さん、早いですが今回はこの辺で」
フェミア「本当に早いですね」
野猫「うん、早いね。まあ時間がなくなってきたからだけど」
全員「それでは皆さん、よいお年を!」
野猫「年末の挨拶これで良かったんだっけ?」
アッレ「おい」
フェミアさんは野猫の水羊羹で手を打ってもらいました。