支配者の迷宮 ー奴隷商人と人買い
何とか書き上げました
活動報告とずれちゃってますが気にせんといてください(汗
・・・若干長くなっちゃったかも?
孤児についてはルティとメイドの中でも腕利き3人を行かせて購入した土地の整備をすれば賄いを出すことを伝えて手伝わせるよう命じ、カガリはカイネンが用意した下っ端らしき青年に案内を命じ去っていった。
「で、では足りないことがあるかと思いますが、頑張ります」
テトリトと名乗った青年は先程作ったカガリの商業ギルドのギルドカード(魔宝石40個分のお金を換金し入れてもらった)をカガリに渡し一礼して案内していた。
「そ、それでご要望は奴隷商でしたね」
「ええ。なるべく小さく酷い所から全部寄りたいのですが、その前に娘達のために冒険者ギルドに寄ってギルドカードを作っておきたいのですがいいでしょうか?」カガリの言葉にテトリトが困ったように頭を掻いて問う。
「えっと・・・商人ギルドではダメなのでしょうか?」
「一応娘達が冒険者になりたいそうなので」
カガリの苦笑しながらの言葉にテトリトはため息をついて了承する。
「つきましては、ギルドカードに入れる預金分として、私達六人分のお金分を手数料として魔宝石一個を付けて、一人魔宝石二個分のお金を入れたいのですが」
「ち、ちょっと待ってください。カイネンさんに聞いてきます」
慌てて向かおうとするテトリトにはんば無理矢理魔宝石を一個握らせてから少し待つ。
「で、ではこちらが合計魔宝石12個分のお金を示す証書になります」
「ありがとうございます」
そう言ってテトリトが連れてきた秘書風の商人の男に宝石を渡すと、証書が光り、紙の色が変わった。アッレから教えて貰ったが、これはちょっと重要な商取引に使われる安めの魔法契約書らしい。お値段は1ゴル。
「はい、契約出来たのであとは冒険者ギルドにこちらをお見せください。」
「ありがとうございます。また後で他の魔宝石分の取引に来ますね」
そう言ってカガリ達はテトリトに案内されて街の大通りを歩いていった。
少し歩いた所にある冒険者ギルドの建物に着くと、娘達は期待に目を輝かせて建物を見上げている。
「私は入り口で待っていますね」
テトリトはそう言ってカガリ達を見送った。
カガリ達がギルドの建物に入ると、十数人の冒険者らしき男たちが思い思いに談笑したり掲示板を見たりしていた。受付らしきカウンターには忙しそうにしているおっさんと、カガリを驚いたように見つめている20歳ちょっとの女性がいた。「すみません。この子たちのギルド登録をお願いしたいのですが」
「は、はい。ではこちらの紙に御記入お願いします」
そう言って女性が登録用紙を8枚差し出してくる。
「いえ、私は商業ギルドのカードがあるので。今日は娘達の付き添いです」
そうなんですか。と受付嬢は驚いたように娘達とカガリを見比べる。
「正式に結婚している訳ではないのですがね」
ニッコリと笑ってそう言うと受付嬢の方も戸惑ったように笑った。
「ほら、ヘラ。一応君がパーティーリーダーなんだから教えてあげて」
ヘーリネンのままだと盗賊だったころの足が着く可能性があるため外向けの呼び方でヘーリネンへ呼び掛けた。
「わ、わかった」
ヘーリネンはそのまま娘達を空いているテーブルに連れていく。近くにいた男たちはヘーリネンの巨乳に下卑た視線を送っていた。
一方カガリは受付嬢と時間潰しを兼ねて世間話をしていた。
「で、最近強面の人が増えてるんですよねー」
「なるほど。でも安全マージンを十分取れば寧ろ稼ぎ時だと思うんですが」
受付嬢の名前はメリーナというらしい。ハーフエルフだが人間の方が外見に色濃く出ているからか綺麗なクリーム色の髪と整った顔立ち、それにしっかりと自己主張する胸部装甲が特徴である。
「安全マージン、ですか。冒険者って結構博打で来てる人が多いんですよねー」
「当たればでかい。もしくは多少のリスクを飲んでも良いリターンがあるってことですか」
「あとは、口減らしだったりするんですよねー。私もその口でしたし」
そう言いつつ思い出したようにメリーナは苦笑する。
「メリーナさんも冒険者だったんですか」
「そうですよー。こう見えても元は6級だったんですよ。あ、ギルドランクのことで、20級まであるうちです」
そう言って力瘤を作って見せるメリーナの腕は、女性らしい滑らかな肌だった。
「それは凄いですね。そうですね。少し家の娘達を見ていて貰いたいのですが」
「・・・贔屓なんてしませんよ?仕事ですし」
眉を寄せて不審そうにカガリを見るメリーナを見てカガリは苦笑する。
「単に心配なだけですよ」
いけませんか?と聞くとメリーナはばつが悪そうな顔になる。
「家のメイドの料理はそれなりにおいしいですから、家ができたら娘たちの様子を教えてくれるついでに遊びに来てもらえますか」
カガリの言葉に悩むようにメリーナは唸る。カガリの後ろから嫉妬の視線が突き刺さるがカガリとしては下心は・・・ほんのちょっとしかないので気にしていない。
「お風呂も用意するつもりですが」
そう言うとメリーナは驚いたようにカガリにちょっと逸らしていた目をあわせ、即答する。
「行きます!」
そう言った後、恥ずかしくなってメリーナが顔を赤らめたタイミングで娘達が登録用紙を持ってきた。その後メリーナは冒険者ギルドでの注意事項や依頼の受け方、個人的に気をつけたほうがいい注意点なんかを説明していた。もれ聞こえてきた話からすると、10級より下のギルドランクの者は主に採取依頼や街中で済む依頼が中心らしく(一応討伐系の依頼もある)、10級に入ってくると商人やギルドから直接依頼を融通されたり、場合によっては王からの指名が入ってくることがあるそうだ(実際には今までいたという記録はないらしいが)。説明が終わり、ギルドカードを作る段になって商人ギルドに渡された書類をメリーナに手渡すと、メリーナは顔を引きつらせながら顔をちょっと青くしてきちんと手続きをしてくれた。
改めて思うが、一人千五百万円分のお小遣いとか、奮発しすぎた気がする。
手続きを終え、冒険者ギルドを去ろうとすると、その前に男が5人ほど立ちふさがる。
「おいてめえ、調子乗ってんじゃねえぞ」
「何メリーナさんくどいてやがんだ、殺すぞ」
「つーかその女置いていったら許してやらなくもねーぜ」
怒りと下卑た視線が入り混じった不快な空気にカガリは嘆息して娘の一人に声をかける。
「マイン」
「あいー」
「殺さない程度なら遊んでいいです」
「とぁー」バキッ「むりゃー」バグッ「へいさー」ぶぉおん「めるちょあー」ずむっ「まるたー」ぺぐっ
そこにいた五人の男はマイン一人(非武装)に瞬時に制圧された。特に4人目と5人目が、ケツの穴のあたりにつまさきピンポイントでけりを入れられたり金的を膝蹴りされたりしてぴくぴくしてるのがむごかった。4人目がちょっと顔を赤らめているのが若干、いや普通に気落ち悪い。
「せいとーぼーえー。大勝利ー」
カガリたちに向かってVサインをするマインは年相応に可愛かった。
ギルド側も、小さな女の子相手になすすべなくやられるようなやつには処置なしということで特に問題もなく出て行き、街外れの方の貧民街のような場所に向かった。
貧民街、と一言に言っても様々らしい。カガリ達が歩いているのはームレスのようなもの達がいない代わりに安っぽい娼館や酒場がそこかしこにある通りだった(ここはロー通りといい、アウトローな店が多いそうだ)。不潔という程ではないがどこか汚れて草臥れた感じの雰囲気に、ちょっと活気を加えた独特の雰囲気に、カガリは少し楽しくなる。
「最初はここですね。主に亜人が売られています。管理上それなりのコストがかかるので、あまり儲かっているわけではないはずですが」
そう言いつつテトリトはカガリたちを招きいれた。
「おう、いらっしゃい。って随分大所帯じゃねえか」
言いつつカガリたちの身なりのよさにカモが来たとばかりに笑う奴隷商人と、その近くに立っていたちょっとがっちりした体型の男が自分には関係ないと距離を開けた。
「(あの、カガリ様)」
「・・・(ん?)」
メイドの一人がカガリに耳打ちする。
「(あの男、たぶん人買いです)」
「(ほう)」
なぜわかるのか、とそのメイドに視線を向けるとメイドは言いづらそうに数瞬迷った後に意を決したように口を開く。
「(以前いた盗賊団が村を襲撃したことがあって、そのときに取引した人買いなんです。あいつ)」
そのあと騎士団に追い詰められて数人以外逃げ出せずそのときにその盗賊団が解散したのだと補足で説明された。
「(今すぐ殺すわけには・・・いかんよな)」
「(お許しがあれば、といいたいところですが。証拠もないのに殺すとこちらが罪に問われますから)」
申し訳なさそうな顔をして言うメイドの頭をちょっと撫でてカガリは一つ決める。
(よし、あいついつか殺そう)
殺人に対する忌避感のなさに少し違和感を覚えるが、気にしても仕方ないと交渉に移る。
「で、そこのお方は何をお望みで?」
「こちらで欲しい奴隷と、後は廃棄処分行きの奴隷を30ゴルドで買いたい」
欲しい奴隷、に人数をつけないで言った為ちょっと認識に齟齬が発生するが、実を言うとこの奴隷商人のところにいる売れる奴隷全部をひっくるめて大体50ゴルドに届かないくらいなので、廃棄の手間が省ける分むしろ好都合なのである。商品はなくなるが。
ちなみにある考えがあってマインとへーリネンとメイド数人を残して残りの娘達とメイドたちに屋敷に行ったり台車や適当な荷馬車などを借りてくるように言って送り出している。
「はあ・・・それはそれは。剛毅なこって。では早速見ていきましょうか」
そう言って案内された先には、沢山の、檻という表現が正しいのだろう。人が数人は密着すれば入れる感じの檻に一人ずつ閉じ込められていた。そこにトイレらしきつぼと小さな布団らしき布が置いてある。閉じ込められている者たちは皆生気を失ったかのように瞳に光がない、いわゆるレイプ目ry。
「・・・やっぱりか」
ゴブリンの件でなんとなく察しは着いているが、なんとも言いがたい嫌悪感にカガリは知らず顔をしかめてしまう。テトリトもこれには閉口している。
とはいえこれにショックを受けている程度ではこの先きついだろうと思考を変える。
(システム起動、ステータスアイ発動)
キーワードを頭の中で繰るとこのアバター(ホムンクルス)に内蔵した機能、相手のステータスやスキルなどを見ることができる機能を発動させる(ついでにこの機能には、状態異常や奴隷の場合金銭取引価値を見定めることができる)。
(ふむ・・・ありだな)
計画通りならそれなりの準備が必要なことにちょっとためらいを覚えるが、日本人らしい甘さから決断する。そうして内心で色々決めている間にカガリ達は廃棄処分される奴隷のまとめられている部屋へ入った。
(私・・・死ぬのかな)
薄ぼんやりとした視界と思考と、ぐちゃぐちゃになった心が少女の魂を緩やかな死へ向かわせようとしていた。すでに体の感覚はなく、失った左腕と右足の痛みはない。
(思えば私・・・あのときが幸せだったんだな)
ゆっくりと思い出されるのは10歳の時。父である王に毒を盛ろうとしたとして、側室である母が処刑される前、正室であった人が私に向けた気持ち悪い表情と、妹のように可愛がっていたその正室の娘の理解できないものを見る恐怖を宿した表情。そしてそれ以前のその子や母との楽しかった記憶。泡沫のように浮いては弾けて消える記憶の数々・・・。
(やっと、開放されるのね)
明らかに濡れ衣とわかっていながら母を捕まえた騎士の顔を思い出し、安堵とほぼ同時に嫌悪感がにじみ出てくる。
(せめて呪ってやる。あんな女)
今の自分はあのときより数年経っている。女として成熟する間もなく栄養の乏しかった生活によって残った四肢は枯れ木のようにやせ細り、アバラも含めてミイラのようになっていた。胸も当然ない。
意識が更に薄くなっていこうとしていると、自分のいる部屋が開き、光が増えた。何があったのかと残った力を振り絞ったとき、一人の男と目が合った。その瞬間、少女は奇跡を信じた。
扉の向こうにはやせ細り、今にも死にそうな(現に何人か死んでいるかもしれない)奴隷たちが横たわったり壁にもたれかかったりしていた。中々にすさまじい匂いに気圧されながらカガリは視線をめぐらせ、一人の奴隷に目をつけた。
マリア・ファムテリーナ
種族:人族(精霊血統)
性別:女
状態:瀕死
年齢:16歳
職業:なし
ステータス
HP20/1500
MP15/700
力 10÷10=1
魔力 20÷10=2
精神 23÷10=2
知能 24÷10=2
頑丈 6÷10=1
器用 15÷10=2
敏捷 10÷10=1
健康 F(瀕死、飢餓)
スキル
・精霊魔法レベル1
・料理レベル2
・剣術レベル1
・弓術レベル1
・祈祷レベル2
・礼儀作法レベル2
特性
・精霊血統(精霊魔法が使える)
・ノブレスオブリージュ(高貴なる者はその務めを果たす。誠実な人格)
・生命力強化
称号
・亡国の王女
・精霊の巫女候補
(いろんな意味でやばいな、この子)
そう思いつつ奴隷商人を見る。
「では約束どおり、この店に置いてある奴隷全てと廃棄処分の子達を全部30ゴルで頂いていきますね」
「なっ、そんな!?」
奴隷商人の男が愕然とするが、カガリは先ほどサインしてもらった魔法契約書を見せる。
「こちらにも書いてあるとおり、『この店においている奴隷と、廃棄処分予定の子達を30ゴルで購入する』ということです」
魔宝石40個×5ゴルド=200ゴルド=200000ゴル
魔宝石で得た値段に対してははした金に過ぎないが、こういう悪徳な商人は皆滅べばいいと思っているカガリは容赦しない。
「き、詭弁だ!」
「こちらはサインしてもらった通り、奴隷『一人』などとは書いておりませんよ?それに魔法契約書ですから、破ればどうなるかわかりますね?」
カガリの言葉に、奴隷商人の男は恨みがましそうににらんだ後、うなだれて了承した。ちなみに契約を破ると魔法契約書のランクと契約書裏面に記載されている条項に沿って罰が加えられる。今回の場合破れば商人は財産没収である。
「では契約成立ということで。あ、それとこれを恨みに思ったりされても困るので、条項に追加した通り私たちに関する記憶を改ざん、及び嫌がらせや報復の禁止、奴隷商売禁止も起きますので事前にお伝えしておきます」
「なっ!」
奴隷商人の男が愕然としている間にカガリは自分のサインを書き、契約書を成立させる。魔法契約書が一瞬光り燃え尽きると、奴隷商人はぼんやりとした目つきになっていた。これで自分が30ゴルを払わないと契約不成立になるので30ゴルを現金で握らせすぐに先ほどの少女の下に駆け寄り、ストレージ(説明は後に)に入れていた栄養剤を少女に飲ませた。もう嚥下する力もないのか口からこぼれるが、それを見かねたカガリがすぐに口に栄養剤を含み、口移しで無理やり飲ませた。抵抗する気力もないのだろう、ちょっと舌を動かすだけで素直に飲んでいった。
一息ついて、メイドの一人が荷馬車を確保した旨をカガリに伝え、すぐに廃棄部屋に生き残った者たちを連れて行かせる。すでに死亡しているものもいたが、そのもの等も皆別の台車に乗せて全て購入した館へ連れて行かせる。檻に閉じ込められた者たちにはストレージにためてあった栄養バー2本とペットボトルの水1本を一人ずつに食べさせ、自分の足で館まである歩かせる。奴隷契約のせいなのか、それとも他に要因があるのか奴隷たちは文句を言わず全員が館へと向かった。
「す、すごかったですね」
「別に迷惑はかけていないでしょう?」
テトリトの言葉にカガリは肩をすくめつつ答える。
「ま、まあああいう商人は私たち商人ギルドとしても手を焼いているので」
テトリトも苦笑して肯定する。
「ところで、あんな死にそうな奴隷を手に入れてどうするんです?」
「それなりに活用方法があるんですよ」
そう言ってカガリは答えをはぐらかした。
メイドたちが奴隷たちを運搬している間に、カガリは他の有望そうな奴隷を奴隷商人から買ったり、先ほどのような悪質な奴隷商人を潰したりして、残るは最後の一番大きな奴隷商の館だった。明らかに今まで見てきた奴隷商人の住む建物とは核が違った。ちなみにここまでくるのに使ったお金はおおよそ10000ゴル。奴隷の価値低すぎんだろと思わなくもないが、こちらの計画には好都合なので何も言わない。
「いらっしゃいませ」
執事風の男がカガリたちを出迎えた。カガリが感心している間に応接間まで速やかに案内される。そこで館の主に出迎えられ、話を少しする。
「ようこそ。沢山の奴隷商人のところを巡っておられたようでこちらには来ていただけないかと冷や冷やしておりました」
「そうですね。この街や周辺の事情を知るのに手っ取り早いのは様々なところで人に触れあう人ですから」
もう情報はいっているのかよ、とは突っ込まずカガリは応対する。そうしてすぐにカガリは館の主に奴隷を一通り見せてもらったが、ここで問題が一つ発生した。
(欲しい奴隷がいない・・・)
正確には欲しかったスキルを持つ奴隷は大抵購入済みで、この館にいるのはそれらをグレードアップさせより綺麗どころを集めたようなものだった。一応義理のためにも2,3人食指が動いた女の奴隷を買うつもりではあるが、あまりよろしくないこの状況に思わず思案してしまう。べグはそれを察してカガリが目星をつけただろう女奴隷に準備をさせてテトリト達を退出させてカガリと二人きりになる。マインは渋ったがカガリが説き伏せて何とか出てもらった。
「欲しい奴隷はおりましたでしょうか?」
「ええ、まあ」
歯切れの悪いカガリの返答に、ふむ、とわざとらしくべグは顎に手を当てて思案顔になる。
「・・・少し、面白いものがあるのですが。ちょっとお値段が張る代わりに貴重だったりする奴隷がおります」
「ほう」
思わずにやりとしてしまうカガリにべグもにやりと笑い返す。普段なら初見の客には存在を匂わせることすらしないのだが、情報収集して奴隷を手厚く歓迎している様子のカガリたちにべグは教えてもいい気分になっていた。
「最低でも300ゴルは固いのですが、大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だ、問題ない」
調子に乗って思わずネタに走ってしまったが、カガリの言葉にべグはちょっと笑い、そのまま応接間の隠し扉から地下へとカガリを連れて行った。
そこには様々な種族が、一人一つの大きな檻に入っており、ちょっと汚れているが掃除はされているらしい清潔感のあるスペースで、それぞれ思い思いに過ごしていた。ひとまずは一通り見せようと奥までゆっくりとカガリを案内するべグに付いていく途中にいたあるモノに、目が釘付けになった。
ヤト・ロヤール
種族:ラミア(特殊)
性別:♀
状態:普通
年齢:25歳
職業:なし
ステータス
HP2500/3500
MP2000/2000
力 500
魔力 1700
精神 2500
知能 2400
頑丈 1000
器用 1650
敏捷 1300
健康 C(若干栄養不足)
スキル
・アタック(物理攻撃)
・毒攻撃レベル1
・再生レベル1
・バインドアタック
・魔法攻撃レベル1
特性
・ヤトノカミ(夜刀乃神のスキル使用可)(使用不可)
・卵生
・再生力強化
称号
なし
(な、なんだこいつ)
ステータスも大きいが、予想外に強いことに呆然としていると、カガリが立ち止まっていることに気づいたべグがほくそ笑むように近寄ってくる。
「おや、その子ですか。いやはやお目が高い。この子はラミアの中でも特に希少種とされ、温厚な性格から知っているものからはあまり怖がられないのですが知らないお客様が見ると怖がって近寄ろうとしないのですよ。かれこれ1年近くここにいますね」
そう言われてカガリはもう一度ヤトというラミアを見てみる。ヤトはのんびりと人の上半身をベッドにうつぶせに寝転ばせ蛇の体で3メートルほどの体を床に垂らしている。ベッドに散らばった艶やかな黒髪やうつ伏せに押しつぶされた二つの巨大な果実に思わず目が奪われる。視線に気づいたのかヤトは顔を上げてカガリを見ると、その人ならば10人が10人とも美人と断言する美貌の顔をぼんやりとさせてカガリの顔を見つめていた。
「この子、買います」
カガリが思わずそう言うと、ヤトとべグが大いに驚く。
「は、はあ・・・30000ゴルになりますが」
「はあ!?・・・あ、いや。買います」
異常な値段に一瞬驚いてべグを凝視するが、別に問題ないことに気が付いて了承する。
そのあと一通り見て周り、もう一人目をつけたものがいた。ダークエルフで名前をリヴェナをいうらしい。ベグの話によると、エルフの里で突然忌み嫌われるダークエルフとして生まれ、すぐに奴隷商に売られたらしい。それから物心付いたときからずっと孤独で、カガリが見たときも部屋の端で体育座りをして小さくなっていた。
二人で5000ゴル。魔宝石一個分吹き飛んだが、いい買い物をした。カガリはそう思い館へ向かう道すがら二人を見る。ヤトの方はスイカップと称しても問題ないほどの爆乳で、現在合う服がないためさらしで代用しているが、進むために体を少し揺する度にそれがゆれる。たゆんたゆんゆれる。リヴェナはヤトほど大迫力があるわけではないが、十分に存在感を感じさせる大きさである(ちなみに体育座りをしている時に思いっきりこぼれているのを見て、ウホッ、とか思ったわけではない、断じてない)。
「・・・」
特に会話することもないので少しずつこれから生活する館について説明しているうちに館へと着いた。館は外見はまだそのままだが、中はメイドたちが必死に掃除したのだろう、多少古びているが綺麗になっていた。家具などはどうやらルティに設置させた転送陣で迷宮から送ってもらったようで、それなりに形は整っている。
瀕死の奴隷たちやそのほかの奴隷たちは全員転送陣で迷宮に送り、カプセルに入れてもらっておいた。そうこうしているうちに、ヤトとリヴェナを含めて娘達と遅くなった夕食を食べ、その日は終了した。
誤字脱字、その他感想などお待ちしております
・・・次はいつになるやら(汗