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支配者の迷宮 -商人ギルドと魔宝石ー

 一応今までできているのはここまでです

 ・・・量が多いからってすぐに次が投稿できるわけではないのでご了承ください

 もう一眠りしたカガリはカガリアバター(以後アバター)に乗り移り、商隊の人々と再び街へと向かった。予定通りなら今日の昼位には着くらしい、といっても何もなければだそうだが、フラグっぽいその言葉をへし折るように何事もなく街へと着いた。街の名前はタールというらしい。

「では、通っていいぞ」

立派な城壁を持つ大きめの街に、最初見えたときは娘たちが大興奮でワイワイキャッキャと騒いでいたが、今は静かに門番や順番待ちをしている行商人、身近に来た城壁をしげしげと眺めていた。どうやら門のほうは村人と一緒であるため特に問題なく通れるらしく、何か尋ねられることもなかった。

 一時村人と別れ、カガリ達は商業ギルドに向かう。そこで街の中を観察していたカガリがポツリと漏らした。

「・・・なんか廃れてんなあ」

「まあ、この地域は今不作と迷宮騒動でいろいろやばいですからね」

御者をしている青年、マロというらしい、は先ほどの娘たちのはしゃぎようにやっと人心地ついたらしく少し笑いながら答えてくれる。

「・・・迷宮騒動?」

カガリがちょっと顔を引きつらせながら問うと、マロが肩をすくめる。

「なんでも今王族の継承問題で、いくつかの迷宮が攻略対象になっているのですが、そのうちここの近くにある迷宮である『辺境の大迷宮』が、ちょっとまずいことになっているそうなんですよね。で、危険を感じた人がこの周辺から徐々に離れてきてると」

言いながらいくつかの空き家を指差すマロ。

「・・・なるほど」

その言葉に思案顔になるカガリ。そうして数秒するとにやりと笑ってマロにお礼をいい、ニヤニヤしながら馬車の席へと戻る。

「・・・なんか悪い顔してんぞ」

「いや、なかなか面白い話だから、色々できると思ってね」

へーリネンに顔をしかめながら注意され、カガリはすぐにまじめな顔に戻る。そうやって他愛もない掛け合いをしている間に、カガリ達は目的地である商業ギルドへと着いた。


「はあ・・・館、ですか」

「ええ。細かい構想は土木関係者に話せばいいかとは思いますが、大体1区画の半分位を使用させてほしいのですが」

商人ギルドでカガリと幹部であろう男が対面して話し合っている。へーリネンたちは馬車で待機してもらっている。

「それは別にかまいません。お客様も知っているとは思いますが、迷宮騒動で空き家のスペースが増えてきているのです。言われたスペースを確保できる区画ですと、大体このあたりですね」

商人の男が街の地図を取り出して指で示す。タールの街にある北門と南門のうちどちらにも均等な近さ、といえば聞こえはいいが利便性はそこまで高くはない。タールの町についてだが、城壁のような石造りの壁が町を囲み、中心に領主の館を構えて8等分に分けた区画が存在する。放射状に伸びた2キロ程度の大通りを基本にして蜘蛛の巣のように道が張り巡らせてある。

「そこは治安はどのようになっていますか?」

カガリの問いに商人の男がにこりと笑う。

(どうせスラム街でも押し付けようって腹な気がすんだよなあ)

ちょっと呆れつつカガリはどうするか悩む。そしてすぐにそこまで問題ではないことに気がついた。

「そういえば、こちらに家を建てるときには費用はどのくらいになりますか?」

「そうですね。大よそでもなんともいえないのですよ。話が見えてこないもので」

困ったようにため息をつく男にカガリはめんどくさそうにため息をつく。

「これを全て売り払いたいのですが」

カガリがそう言いつつ片目に掛けたモノクルを軽く押してから自分のバックからバスケットボールくらいの大きさの袋を取り出す。これは元々元手作りに売り払う予定だったので特に心配はしていないが、買い叩こうとすれば今装備している鑑定眼モノクルを通してすぐに暴露される。いちゃもんをつけられても困るので、ある程度エピソードも考えてある。

「何でしょ・・・っ!?」

ざらざらと袋からぶちまけるように取り出したのは色とりどりの宝石のような石だった。数は一応50近く、迷宮の魔力を使って事前に作ったので元手はほぼゼロだ。あまり大きくても目をつけられそうなので小さめ(カガリ基準)のものを用意した。

「魔宝石です」

そう言って一個男に差し出すと、男は震える手で受け取り、恐る恐る鑑定を始める。カガリはそれを黙って観察する。魔宝石は、魔法を即席で使える魔法石と違って武具に魔法効果を持たせることができるものでその価値は小さなものでも金貨一枚するそうである。

 待っている間にこの世界のお金について簡単に説明する。この世界はコル、ゴル、ゴルドの三つの通貨単位が存在する。コルは銅貨。一枚あたり約1円で考えてもらえると良い。ゴルは銀貨で1000コルで1ゴルになる。ゴルドは金貨で1000ゴルで1ゴルドになる。この世界の1世帯の平民の平均的な月収はおよそ10ゴル。生活に必要なお金がほぼそれで全てで、貯蓄の概念はないらしい。生活水準が伺える値段である。補足で迷宮に出るゴブリンから得られる魔石一個で100コル。つまり100匹ゴブリンを狩れば一か月分賄えるらしい。

 そんなアッレから教えてもらった情報を反芻していると、男が冷や汗を搔きながら一時退出を求めてきたので許可してしばらく待つ。そうすると男は二人の(一人は身なりのよさそうな)男を連れてきた。身なりのあまり良くないほうは明らかに職人のような雰囲気を出している。この男は魔宝石の鑑定に来たのだろう。

 身なりの良い男が小さく一礼し、カガリもそれに返礼する。

「私はこのタールの商人ギルドのサブギルドマスターのカイネンです。今回は魔宝石の売却と新居の建築だそうですね」

「はい、はじめまして。カガリといいます。それで、単刀直入に聞きますが良い場所はありますか?」

カガリの言葉にカイネンはにっこりと笑い頷く。そして指し示したのは先ほどの男が示したところとほぼ同じだった。

「このあたりは大きな商家の屋敷があるのですが、その商家は現在そこにある屋敷を売却済みなのです。ですからそこを改修していただければそのまま利用可能ですよ。周りの敷地もほとんどすべて売却済みです」

そう言いつつちらりと鑑定を始めていた男をカイネンは見る。その職人はきわめて真剣に一つ鑑定しては脇に寄せパピルスに走り書きしている。

「そのほかに大き目の建物を3つ、将来的には5つほど立てたいのですが、いくらか掛かりますか?」

カガリの問いに、そうですねえ、とカイネンはあごに手を当てる。

「大体建築に5ゴルド以上は掛かりますね。家具や修繕等を含めると10ゴルドはあったほうがいいかと」

「じゃあここにある魔宝石で建築費は賄えるわけですね」

「・・・あくまでも平均的なお屋敷のお値段になりますね。特注したりするものがあると値段が跳ね上がったりするので」

カイネンはそう言って苦笑いをし、また職人の男を見る。どうやらかなり見る速度が早いらしくもう最後の一個に手をかけていた。その様子を二人で黙ってみていると、職人の男が最後の一戸の鑑定も終え、メモしたパピルスをカイネンに見せる。カイネンはそれを見て顔を引きつらせそうになりつつもカガリとパピルスを見比べる。

「見せてください。見せられないものではないでしょう?」

そう言ってカガリが差し出した手に、カイネンはちょっと渋い顔をしつつもカガリにパピルスを渡す。

「・・・現在の相場から言って、1個5ゴルドで、250ゴルドですね」

5倍で二億五千万円分かよ、とちょっと唖然とするが、カガリは表情を取り繕う。

「ここまでの大金ですと、一般的な領主の税金とほぼ同額になりますが・・・。すみません。これら全ての魔宝石は現金での売却は致しかねます」

「ああ。わかりました。相場そのままとして建築の費用をこれから差し引いて頂きたいので、細かい予算についての支払いは計画を話して必要経費が揃った時点での金額をこれらの担保から差し引いて残額をお渡しいただければ。後は4つほど聞きたいことがあるのですが」

「な、何でしょうか」

10個ほどの魔宝石を適当に見繕ってカイネンに渡し、後は袋にしまっていく。カイネンはもはや顔を明確に引きつらせながらカガリの渡した魔宝石を大事そうに箱に仕舞う。

「まず一つ、この商人ギルドでは幾つの魔宝石を現金で買い取っていただけますか?」

「・・・そうですね。現在は5つです。いくつかの街と連絡を取り合えば時間は掛かりますがご用意できます」

「では次に、この魔宝石を現在の相場でいずれ商人ギルドに買い取ってもらいたいのですが、構いませんか?」

「それは・・・別に構いません。現在の領主が大量にこういうものを必要としているので、そちらからそれなりのお金は得られます」

ぶっちゃけたその言葉にカガリとカイネンは苦笑しあう。

「わかりました。では、この町にいる孤児を引き取っても構わないでしょうか?」

「それは、なぜですか?」

理解できないらしく質問で返してくるカイネンに、カガリは再度苦笑する。

「雇う人間は賃金が安く済むほうがいいじゃないですか。それに、仕事をさせてしっかり生活させれば結果的に治安は良くなりますし」

その言葉にカイネンは呆れたように頭を振り、それが実現可能な元手があることに気づいて戦慄する。

「孤児については、構いません。ちなみに賃金としては1日で1~3コルが平均的ですね」

「わかりました。では最後に、奴隷商人を片っ端から紹介してもらえませんか?」

その言葉に、カイネンは今までで一番顔を引きつらせた。

ここまで読んでくださりありがとうございました(土下座)

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