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支配者の迷宮 ー治療と到着ー

リナ達を出発させた後、カガリ達は野営地に戻ってきた。既に日も暮れ、焚き火をしているのが見えてくると、娘達も安堵したようにため息をついていた。

「お帰りなさいませ。ご主人様」

そう言いながら出迎えをする元盗賊メイド、もう面倒なので以下メイドとする、一人に返事をしつつ全員が帰還し、その日は解散となった。

カガリは後の事をこの「その位なら別に問題はないな。仕事ができたから、数人入口に待機させて」

「何かあったのですか?」

カガリがポンポンと話を進めるとアッレが珍しく戸惑う。

「ゴブリンの巣に捕まっていた女性をここで治療する。来たら皆カプセルに入れて一気に治療する。これでいい?」


「承知しました。カプセルまでの案内と説明は私がしてきます」

そう言ってアッレはヴェリアと入れ替わりに部屋を出ていった。

「ご主人様、ご飯です」

そう言ってヴェリアはまだ湯気の立つ食事をのせた盆をカガリの机に置き、そのそばに控えた。

「半日離れただけだが、そうやって顔を見れるのはいいな」

カガリがほんの少し顔を緩めるのをヴェリアは複雑そうな顔で見つめていた。


食事を終えその日はそのままヴェリアに側仕えを任せようかと思ったカガリの部屋をノックの音が通る。

「入れ」

「失礼いたします、お父様」

そう言って入ってきたのは黒髪黒目の美少女だった。濡羽のように艶やかな髪を腰まで下ろし、無感動な目をカガリに向けているその少女は、ヴェリアが産んだホムンクルスであり、長女である。名前をカリスと名付けられ、現在はとある計画に向けてティーリやナシェリと勉強をこなしている。

「調子はどうだ」

「別段問題ありません。お母様もいらしたのですか」

カガリの質問に特に表情を変えるでもなく答え、ヴェリアに視線を向けるカリス。ヴェリアは複雑そうな表情になりつつほんのの少しカガリににじり寄る。

「それで、どうした」

「いえ。魔術の基礎については座学を終えたので報告に来ました」

言いつつカガリに近寄るカリスは距離が縮まるのに比例するように頬を赤らめさせる。

「そうか。よくやった」

カガリがカリスの頭をなでてやると、顔面の筋肉が崩壊したようににへらっと笑った。カリスは生まれたときからカガリを絶対的な主、もしくは飼い主か神のように慕っていた。

「いいツテが手に入りそうだから、上手くすればもうすぐ魔法学校に入学させられる」

「・・・はい」

返事をしつつもどことなく悲しそうな顔になるカリスに、カガリは苦笑いをする。

「なに、入学してもすぐに会えるよう自室に転移魔方陣でも置けばいいのではないか?」

「それができればいいのですが・・・」

そう不安そうなカリスにカガリもどう声をかけるべきか悩んでしまう。

(実質娘たちの中で一番魔力を使ったのはこの子なんだけどなあ)

そう思うが、どう慰めるべきか、そもそも慰めるというのかも良くわからない。

「・・・まあ、とりあえずどこの馬の骨とも知らんやつにお前を売り渡す気にはならんな」

そう言うと、憤慨したようにカリスがカガリを見る。ヴェリアは生暖かい目でこちらを見ている。

「当然です!私の存在の全てはお父様のものです。他所の誰かに譲るものなど髪の毛一本もありません!」

カリスの宣言に、カガリは苦笑しヴェリアはどこか遠くを見ていた。大方自分の娘が超ファザコンなのが精神的に受け止めづらいのだろう。

「まあそういう訳だから。時期が来るまでは魔力の精密コントロールの練習をするといい。おそらくだが格好重要になる気がする」

「わかりました。がんばります」

そう言ってカリスは一礼して部屋を立ち去った。

「いい子に育ったな。以前のお前とは大違いだ」

「そう、ですね」

カガリの言葉に複雑そうな声音でヴェリアが答え、小さくため息をつく。

「じゃあさっき言った子たちが来るまで一眠りするから、来たら起こして」

そう言って返事を待たずにカガリは布団にもぐりこみすぐに意識が暗闇に包まれた。


「カガリ様、到着されました」

「ん・・・・・そうか」

ヴェリアに優しくゆすられすぐに起き上がるカガリ。そうしてふと思ったことに苦笑する。

「どう、したのですか?」

「いや。半年前のお前がこんなことになっているだろうとは誰も夢にも思わないだろうな、と」

そう言いつつ着替え始めたカガリを、唇をへの字にまげて不機嫌ですといった雰囲気を出したヴェリアは小さくため息をつく。

「入り口か?」

「いえ。大広間に集まってもらっているそうです。一度顔合わせを済ませたのち治療に移ったほうがいいだろうとアッレさんが」

なるほど、とカガリは入り口へ急ぐ。昨日見た状態からそこまで余裕はないだろうと考えられるからだ。

「一応迷宮内に入った時点でアッレさんが薬を飲ませたそうです」

「・・・なんのだ?」

そんな指示を出した覚えのないカガリが眉をひそめて確認すると、ヴェリアが怒らせたのかと勘違いして青ざめつつ説明する。

「えっと、カガリ様がナシェリ様たちにお与えになった魔術教本の中に薬草学があり、それを覚えたナシェリ様が対モンスター用の出産遅延薬や精神向上薬を調合したそうです。あの、薬草については近くに群生地があったのをメイドたちが集めてきたのと、アッレさんが魔力で呼び出したそうです」

もはやアッレ無双だな、とくだらないことを考えながらカガリは大広間に着いた。ついでに不安そうにしているヴェリアの頭を優しくなでてやった。

 そこにはアバターで見た女性たちが、どこか不安そうだったり睨んでいたり恍惚とした表情でカガリを見上げていた。お広間に置かれた椅子のそばにはアッレとガリアが控え、そこから少し離れた女性たちに見えにくい位置にジューベーが隠れるように立っていた。

「ようこそ。私がここの主で、カガリという。先ほど君たちを救ったのも私だ。詳しい説明をしていると君らが危険だと思われるので、早急に治療に移ろうと思う。そのためには君たちが素直にこちらに従ってもらえると助かる」

余計なことをしたらそれなりの対応をする、と暗に伝えたその言葉に気づいたのは、やはりというかファティナだった。真っ先に頷いて案内するために装置へ続く扉の前に向かうアッレに近づき、2,3会話をしていた。その間に他の女性たちもメイドたちに支えられたりしつつ移動し始めた。

 女性たちが全員装置に入った後、カガリはアッレに「グッジョブ」と言って自室に戻り装置による治療を行った。予想外だったのは、孕んだ女性のスキルに『ゴブリンカウント3日』などなんとなくどういうことかイメージできるものがあったほか、数人の女性のスキルに『ゴブリンズマザー』というゴブリンを生む数を増やす特殊スキルなどが入っていることだった。それら明らかに不利益なスキルを全部削除し、余ったスキルポイントなどを料理や生活魔法などにつぎ込み、装置内で治療が終わる予定の1日と少しの間、放置することになった。余談ではあるが、兎人族のリナは種族特性としてなのかスキルに『子沢山』『出産耐性』など思わずカガリが苦笑いするスキルが入っていたりした。


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