第7幕~馬超の恨み、取引~
投稿します!
遅筆ですみません!
それではどうぞ!
無事、鈴々を見つけた鈴鐘は、馬超を連れて宿へと戻った。宿に戻ると愛紗と趙雲はすでに仕事を終えて戻っていた。
宿に戻ると鈴々は皆に馬超を紹介した。
愛紗が詳しく鈴々に説明を求めると、お金を稼ぐために偶然開催されていた武道会に参加し、その決勝戦で馬超と激戦を繰り広げた。結果は引き分け。その試合を目の当たりにしたこの国の領主である袁紹の城に2人は招待された。
その後は、その袁紹に客将に誘われ、一度は引き受けるも、何故か適正試験を受けることになった。だが、その試験があまりにも馬鹿馬鹿しい内容だったため、途中で放棄し、宿が決まっていない馬超を鈴々が自分達の宿に誘い、その道中に鈴鐘と合流したと説明した、と、途中馬超が補足をしながら説明した。
馬超の気さくな性格もあり、4人とはすぐに意気投合した。
夜更けまで語り合うと、そのまま眠り着いた・・・。
※ ※ ※
翌朝・・・。
鈴鐘と愛紗と趙雲は昨日と同様、食堂で給仕の仕事へと向かった。
鈴々も働くとごねたのだが、愛紗が猛反対した。
鈴々はまた拗ねてしまったのだが、馬超が鈴々でもできる簡単な仕事があるから一緒にやろうと誘われ、嬉々として一緒についていった。
昼過ぎまで仕事をすると、鈴鐘はやはり鈴々のことが心配になり、女将に了承を得て鈴々の様子を見に行ったのだった。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・
「あの子、迷惑かけてないかな・・・」
鈴鐘は不安に駆られながら鈴々の元へと向かう。
すっかり姉が板についた鈴鐘。鈴々のことを誰よりも理解出来るだけに気が気でないのだ。
鈴鐘が大通りの前に差し掛かると・・・。
「?」
大通りに人だかりが出来ていた。その後ろにいた男性に理由を尋ねてみると・・・。
「都の将の曹操様の軍がこの辺りに巣食う賊を討伐してくださったんですよ」
とのこと。
この冀州に他所から賊が逃げ込んだらしいという話を風の噂で聞いていたので、曹操の治める国から賊が流れこみ、それを曹操自らが討伐したのだと鈴鐘はすぐさま理解した。
理由がわかったところで鈴々の元へと向かおうとしたその時!
「曹操、覚悟!」
突如、聞き覚えのある怒号が鈴鐘の耳に届いた。それと同時に・・・。
ガギィン!!!
鉄と鉄が激しくぶつかり合う轟音が響いた。
ただ事ではないと感じた鈴鐘は大通りに集まっていった野次馬を飛び越し、大通りの中央へと躍り出た。
そこには、夏候淵に後ろ手で守られている曹操。手持ちの直剣を構えている夏候惇。そして・・・。
「曹操! 母様の仇、討たせてもらうぞ!」
馬超が兵士から奪ったと思われる槍を構え、殺気と憎しみを曹操にぶつけていた。
「っ!」
馬超の言葉に曹操は顔を歪ませ、夏候惇と夏侯淵は目を見開いた。
「馬超! ケンカはダメなのだ!」
馬超を止めるべく、鈴々が馬超の首にしがみ付いた。
「馬超! ・・・どうし・・・っ!」
ここで鈴鐘は思い出した。元の世界では当初、馬超は曹操のことを激しく憎んでいた。
「(翠の華琳に対する憎しみの原因は確かお母さんのこと。もしかしてこの世界でも・・・)」
あり得ない話では決してない。こっちの世界と元の世界とでは違う点も少々あるが、共通点も多数あるのだから。
「ぐっ! 離せ!」
「にゃぁ!」
馬超を抑えるために必死にしがみ付いていた鈴々を引き剥がし、曹操目掛けて突っ込んでいった。
「いけない!」
鈴鐘も同時に飛び出した。
曹操は官軍の将。如何なる理由があろうとも武器を向ければただではすまない。
「おぉぉぉぉぉーーーーっ!!!」
馬超が怒声を上げながら曹操に迫っていく。
「くっ! 華琳様には指一本触れさせん!」
その間に夏候惇が割って入った。両者が激突しようとしたまさにその瞬間!
ガシッ!!!
「っ!?」
「なっ!?」
馬超と夏候惇の間に鈴鐘が割って入った。鈴鐘は馬超の槍の柄を掴み、夏候惇の剣を人差し指と中指で挟み込んだ。
2人は驚愕した。両者共にその実力は大陸に轟かせるほどだ。その2人が渾身の力で振った得物をいとも容易く止めてしまったのだから。
「2人共動かないで。馬超、お願いやめて」
鈴鐘が馬超に懇願する。
「くっ・・・! 離せ! 邪魔をするな!」
馬超が必死に槍を引き離そうと試みたが、槍は全く動かない。夏候惇の剣も同様だ。
「お願いだから・・・。こんなことしちゃダメだよ・・・」
「いいから離せよ! あたしは曹操に・・・っ! くそ・・・」
馬超は槍から力を抜いた。もう既に、馬超達の周囲を兵士達が武器を構えて囲っていた気付いたからだ。状況を理解した馬超は大人しく観念した。
馬超は縄で縛られると、そのまま街の外に構えている曹操の陣まで連行されていった。
※ ※ ※
「「お帰りなさいませ! 御主人様・・・?」」
「むぅ~・・・」
食堂で給仕をしていた愛紗と趙雲は頬を膨らませてむくれている鈴々と、鈴々を小脇に抱えている夏侯淵とその傍らに佇む鈴鐘の姿を見て怪訝そうな面持ちをした。
「こいつら酷いのだ! 馬超がいきなり斬りかかったら怒って馬超を捕まえたのだ!」
「? ・・・お主の説明では向こうはさほど悪くないように思えるが・・・」
鈴々の説明に愛紗と趙雲は頭に『?』を浮かべた。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「なるほど、そういうことでしたか」
店頭では話が出来ないので、食堂の奥の倉庫にまで移動し、夏侯淵から詳しい説明を受けた。
「話しはわかりました。馬超は私の妹分の友、捨て置くことは出来ません。会って話をしてみようと思います」
話を聞いた愛紗は馬超の元へ行くことに決めた。
「私も一緒に行くよ。私も当事者の1人だし」
鈴鐘も同行の名乗りをあげる。
「うむ、そうだな。鈴鐘も一緒に頼む」
「鈴々も行くのだ!」
「お主はダメだ」
同じく名乗りをあげた鈴々を趙雲が止めた。
「なんでなのだ! 鈴々も馬超を取り戻しに行くのだ!」
「短期なお主が行ったら話がややこしくなるだけだ」
「いーやーなのだ! 鈴々も行くのだ!」
尚も駄々をこねる鈴々。
「鈴々、馬超は私達でちゃんと取り戻すから、私達を信じて宿で待っていて、ね?」
鈴鐘が優しく鈴々を宥める。
「むぅ・・・わかったのだ」
姉の申し出に、鈴々は渋々了承をする。
「では、私と鈴鐘で曹操殿の陣に行ってくる。星と鈴々は待っていてくれ」
「うむ。こやつのお目付け役は任せるがいい」
「愛紗! 鈴鐘お姉ちゃん! 馬超のこと、頼むのだ!」
鈴鐘と愛紗は夏侯淵に連れられ、街の外の陣にまで案内されていった。
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・・・・・・・
・・・・
曹操の陣、馬超が投獄されている天幕に入った鈴鐘と愛紗。天幕に入ると、簡易的に造られた小さな牢の中で馬超が足を抱えて俯いていた。
天幕内に人が入った気配を感じ、馬超が顔を上げる。
「関羽・・・、張翔・・・」
「馬超・・・話は聞かせてもらった」
「・・・私としたことが、頭に血を昇らせて・・・。まさかこんなところで曹操と出くわすなんて思わなくて・・・」
馬超は自嘲気味に笑った。
「おまけにお前や張飛が邪魔しやがるから・・・、それさえなければ・・・!」
馬超は歯をグッと噛みしめた。
「馬超・・・、あなたと曹操の間に何があったの?」
鈴鐘が馬超に訳を聞いた。馬超は身体をワナワナと震わせ・・・。
「曹操は・・・あいつは・・・! 私の母様を殺したんだ! それも卑怯極まりない手段で!」
憎しみに顔を歪ませながら叫んだ。
「なっ!?」
「・・・」
その言葉に愛紗は驚愕し、鈴鐘は深くを目を瞑った。
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・・・・・・・
・・・・
鈴鐘は愛紗は曹操の待つ天幕へと移動した。天幕内に入ると一際大きな長椅子に曹操が腰掛けていた。
「まさか、このような形であなたと再会するとはね」
「・・・曹操殿。単刀直入にお聞きします。馬超をどうなさるおつもりです?」
愛紗は曹操の皮肉を受け流し、単刀直入に切り出した。
「斬るわ」
「なっ!?」
「っ!」
曹操の非情の判決に愛紗と鈴鐘は顔を歪ませる。
「当然でしょ? 官軍の将であるこの私に刃を向けたのだから。その報いは受けてもらうわ」
「それはそうだが・・・」
曹操の判断は至極当然。そのことは愛紗もよく理解している。
「・・・無理を承知でお願いいたします。馬超の命、曹操殿の器で何とか救っていただくわけにいかないでしょうか!?」
それでも愛紗は無理を承知で曹操に助命の嘆願を行った。その言葉を聞いて曹操は口元を吊り上げ、笑みを浮かべた。
「(華琳のあの顔。きっと何か企んでる)」
曹操の表情の変化にいち早く鈴鐘が気付き、嫌な予感を感じた。
「そこまで言うなら、私と取引をしない?」
「取引?」
「そうね・・・、今夜一晩、私と閨を共にしたら、馬超の命を助けてあげてもいいわ」
「なっ//」
曹操のまさかの取引に愛紗は顔を赤らめた。
「一目見たときから、あなたのその艶やかな黒髪に惹かれていたわ。是非とも手に入れたいと思っていたの」
「何をバカなことを! 人の命がかかっているというのそんなたわけたことを・・・!」
愛紗は曹操の申し出に激昂した。だが、曹操は意にも返さない。
「ふふっ、でも、あなたの気持ち1つで、人の命が救えるのよ? 取引としては、安いものではないかしら?」
「っ!」
その言葉に愛紗は歯を噛みしめる。馬超のしたことをチャラにする代償にしては確かに安い取引とも言えることだ。だが、取引に応じる当人からすれば話は別だ。
愛紗は暫し思案する。
「そんなにそれが応じられないと言うなら、別の条件を出してあげてもいいわよ?」
「ほ、本当ですか!?」
「ええ・・・」
曹操は視線を愛紗から鈴鐘に移した。
「後ろのあなた。名は?」
「り・・・私は張翔・・・だよ」
鈴鐘はおそるおそる名乗った。
「そう・・・。張翔、あなた私に仕えなさい」
「えっ!?」
「なっ!?」
曹操が出された代案に鈴鐘と愛紗は驚愕する。
「我が軍でも最強の将である夏候惇と馬超を素手であっさりと止めてみせたあなたの武。実に見事だったわ。あれほど武を私は見たことがない。是非とも手元に置いておきたいわ」
「・・・っ!」
鈴鐘は自分が武を曹操の目の前で披露してしまったことを後悔する。だが、そうしなければあの場で馬超が斬られていた可能性も大いにあった。
「(翠を死なせたくない。けど、愛紗に辛い思いだってさせたくない・・・)」
だが、曹操に臣になってしまうと行動を制限されてしまい、自身の目的を果たせなくなってしまう。
「(・・・でも、華琳の元にいればお兄ちゃんの情報が入ってくるかもしれない。悪いことばかりじゃない。華琳は優秀だし・・・)」
馬超を救うため、鈴鐘は無理やり曹操の臣下になるメリットを見出した。
「(翠を救うためだから・・・仕方ないよね・・・)」
鈴鐘は決心した。
「わかった。私が曹操に―――」
「ダメだ!」
鈴鐘の言葉を愛紗が大声で遮った。
「でも・・・!」
「お前がいなくなったら鈴々はどうなるんだ!」
「っ!」
妹の真名を出され、鈴鐘は言葉を詰まらせる。
「ずっと一緒にいると約束したのだろ? ならばその約束を果たせ」
愛紗は曹操に振り返る。
「曹操殿。私が一晩・・・ね、閨を共にする。だから、馬超の命を救ってほしい」
「愛紗!」
鈴鐘が愛紗の肩を手で掴む。愛紗はそっとその手に自身の手を置いた。
「大丈夫。私は大丈夫だから」
薄く笑みを浮かべ、鈴鐘を窘めた。
「決まりね」
曹操はニヤリと笑みを浮かべた。
「だが、約束は守ってほしい。必ず馬超の命を救ってくれると!」
「安心しなさい。約束は必ず守るわ」
曹操は長椅子から立ち上がり、天幕の入り口まで歩いて行く。
「・・・では、早速準備を始めるわ。・・・秋蘭、関羽を私の天幕に案内しなさい」
「はっ」
夏侯淵が返事をすると、関羽と共に天幕を出ていった。
「・・・愛紗・・・、ごめんね・・・」
鈴鐘は誰もいなくなった天幕内で1人、謝罪をしたのだった・・・。
続く
いったんここで筆を置きます。
メインはもう1つの二次なんですが、そちらも最近投稿が遅れるしまつ(T_T)
自分のペースでまったり進めていきたいと思います。
それではまた!