第3幕~姉妹と義姉妹の契り、旅立ち~
投稿します!
物語に序章的な話はこれで終わりです。
それではどうぞ!
「うにゃ~、お姉ちゃん~」
姉となった鈴鐘(※以降は大人鈴々はこのように呼称します)の胸に飛び込む鈴々。
「すっかりお主に懐いているな」
「ふふっ」
そんな光景を微笑ましく眺める関羽。鈴鐘はそんな鈴々の頭をそっと撫でる。
外はすっかり暗くなり、関羽は鈴々と鈴鐘の計らいで鈴々の小屋で泊まることになった。
「庄屋さんの家の落書きのことは明日ちゃんと謝るんだよ?」
「・・・わかったのだ」
渋々ではあるが、鈴々は了承した。
「私も一緒に謝りに行ってあげるから、ね?」
「うん、なのだ!」
元気よく返事をした。
「私まで泊めてもらい、申し訳ない」
「旅に慣れている関羽でも夜の山道は危ないからね」
「お姉ちゃんと一緒に泊まっていくのだ! それにしても、関羽もなかなか強いのだ。鈴々と互角に戦えるとは思わなかったのだ」
「鍛錬に鍛錬を重ねたからな。・・・私はもっと強くならなければならない」
関羽が青竜偃月刀を強く握りしめがらポツリと呟いた。
「? ・・・何か理由があるのか?」
鈴々は関羽の変化を感じ取り、理由を尋ねてみた。
「私は幼い頃、村が戦に巻き込まれ、家族を失った」
「っ!」
「・・・」
鈴々は息を飲み、鈴鐘は黙って耳を傾けていた。
「私は家族を守ることができなかった。・・・だからその時に心に誓った。こんな悲しみは繰り返したくない。二度とこんなことが起きない世を目指そうと」
関羽が顔を上げ、鈴鐘と鈴々に向き合った。
「張飛も、張翔も。こんなを世界を変えたいとは思わないか? 理不尽に奪われ、理不尽に殺されていくこんな世の中を」
「・・・」
「・・・」
「話しは聞いた。お前達は賊に両親を殺されたのだろう? 張飛、お前もこんなところで山賊ごっこをしてないで、その武、世の中のために使おうとは思わないか? 張翔、お主も」
「・・・うん。私も、力のない民が苦しむ世の中を変えなきゃいけないと思うよ」
「・・・鈴々も、苦しんでる顔なんて見たくないのだ」
鈴鐘、鈴々共に関羽の言葉に頷く。
「お前達の力を貸してくれないか? 私達に何ができるかはわからない。だが、必ずできることがあるはずだ。我ら3人が力を合わせ、共にこの世の中を変えよう」
関羽が2人に頭を下げる。
「・・・うん。私も、乱世を変えたいと思ってる。私で良かったら強力するよ。関羽」
「お姉ちゃんがやるなら鈴々もやるのだ! 3人で悪い奴らをブッ飛ばしてやるのだ!」
鈴鐘は笑顔でそれに応じ、鈴々も立ち上がってそれに応じた。
「お前達が一緒なら心強い。そうと決まれば、我ら3人、この乱世を変えるため、共に力を合わせ、共に戦おう!」
「うん!」
「応、なのだ!」
力強い返事が家の中に響いた。
関羽、張飛、そして張翔。
並行世界を越えて巡り合いし3人。
乱世を変えるため、今、立ち上がった・・・。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
チャポン・・・。
その後、汗を流すため、湯に入ることになった。
「湯加減はどうなのだー?」
湯の外から鈴々が尋ねる。
「ちょうどいい加減だ」
「大丈夫だよー!」
中にいる鈴鐘と関羽は返事をした。
鈴々宅の風呂はそれなりに広さを有しているため、2人で入ってもまだ余裕がある。
「しかし、なにも2人で入らずとも・・・」
「女同士なんだからいいでしょ? 薪だってもったいないし、お風呂は大勢で入った方が楽しいよ♪」
関羽は少々顔を赤らめているのに対し、鈴鐘は特に気にする素振りは見せず、湯を満喫していた。
ガララ!
風呂の扉が勢いよく開けれられた。そこから服を脱ぎ捨てた鈴々が飛び出した。
「鈴々も一緒に入るのだー! 突撃ー!」
鈴々が駆け出し、飛び跳ねると、勢いよく湯船に飛び込んだ。
ザッパーーーン!!!
飛び込むのと同時に大きな水しぶきを上げた。関羽はその水しぶきを見事に浴び、鈴鐘は両手で水しぶきを防いだ。
「こらーーっ! 湯に飛び込む奴があるか!」
「あはははっ!」
関羽は立ち上がり、鈴々を叱った。それを聞いて鈴々は肩をすくめた。それを見て鈴鐘はケラケラと笑っている。
「全く、風呂の入り方も・・・ん?」
関羽は、自分の身体を凝視している鈴々の姿に気付いた。
「どうかしたか?」
「大きなおっぱいなのだ・・・、どうしたらそんなバインバインになるのだ?」
「っ//」
関羽は恥ずかしさのあまり、身体を隠し、湯に肩まで浸かった。
「どうしたらって・・・うむ、そうだな。志だ! 志を胸に強く抱けば自然と胸も大きくなる! ・・・はず・・・」
それを聞き、鈴々は立ち上がった。
「よーし! なら鈴々も大きな志を胸に抱くのだ!」
両拳を握り、それを胸に当て、決意をする鈴々。だが、その後、鈴鐘の胸をジーッと凝視すると・・・。
「うぅ・・・、でも、お姉ちゃんの胸はそんなに大きくないから、鈴々も小さいままかもしれないのだ・・・」
と、肩を大きく落とし、落胆した。
ピキッ!
「鈴々~、それはどういう意味なのかな~#」
額に怒りのマークを浮かべた鈴鐘が鈴々の背後に詰め寄り、鈴々のこめかみに拳を当て、グリグリとさせた。
「痛い痛い! 痛いのだ~!」
「私が小さいんじゃないの! 愛・・・関羽が大きすぎるだけなのだ・・・なの!」
鈴鐘は怒りと同時に目に涙を浮かべながら鈴々のこめかみをグリグリし続けた。
「何とも騒がしい姉妹だ・・・」
関羽は呆れ気味に溜め息を吐く。
「ごめんなさいなのだ~!」
鈴々の声が風呂場に響き渡るのだった。
※ ※ ※
風呂から上がると、夜もすっかり更けており、3人は寝ることにした。
鈴鐘と関羽は寝間着を持っていなかったので、鈴々のものを借りることとなったのだが・・・。
「はにゃぁ、やっぱり鈴々のじゃ小さかったのだ」
「いや、充分だ」
関羽は特に気にする素振りは見せないが。
「私も大丈夫だよ(ちょっと複雑なのだ・・・)」
幼い頃の自身に服が問題無く着れたことに少し複雑さを感じていた。
3人は鈴々の提案により、同じ部屋で3人で川の字になって寝ることになった。
左に鈴鐘、右に関羽、その間に鈴々が入り、1つの布団に横になっている。
「ふにゃ~、誰かと一緒に寝るのは久しぶりなのだ~」
鈴々は満足げな様相だ。
「ふふっ」
そんな鈴々を見て、微笑ましい顔で鈴鐘が見つめている。
「こうして寝ていると何だか・・・父様と母様と一緒みたいなのだ」
それを聞き、関羽が複雑そうな表情を取った。
「わ、私はそのように言われる年齢ではないのだがな・・・」
「はにゃ?」
「精々姉と言ったところで・・・」
ごにょごにょと口ごもる関羽。
「だったら、関羽も今日から鈴々のお姉ちゃんなのだ!」
そう言って、鈴々は関羽の胸に抱きついた。
「ま、待て! お主にはもう姉がいるだろう!?」
「関羽も一緒にお姉ちゃんになってほしいのだ! ダメ・・・なのか?」
鈴々は目元に涙を浮かべて懇願した。
「う・・・」
その姿を見てたじろぐ関羽。
「お姉さんになってあげて、そうすればこの子も喜ぶから」
鈴鐘が一緒になって関羽に頼み込んだ。
「・・・わかった。今日から私もお前の姉となろう」
「やったー、なのだ! 鈴々にお姉ちゃんが増えたのだー!」
その言葉を聞き、満面の笑みで喜ぶ鈴々。
「よかったね、鈴々。・・・それじゃ、よろしくね、お姉ちゃん♪」
鈴鐘も続いて関羽に声をかけた。
「あ、姉!?」
関羽は戸惑いの声をあげた。
「だって、鈴々の姉なんだから、当然私のお姉ちゃんだよね?」
「だ、だが、どちらかと言えば、姉はお主の・・・」
「よろしくね、お姉ちゃん♪」
「~~! す、好きにしろ!」
半ばやけくそ気味に関羽はそれを了承したのだった。
※ ※ ※
翌日・・・。
3人は山を降り、村に行くと、庄屋の主人のもとへ向かった。
鈴々は、誠心誠意頭を下げ、謝罪すると、庄屋は怒りを鎮め、それを許した。
その後、この村を出て、3人で旅に出ることを告げると、これまで鈴々をよくしてくれた村人達が集まり、別れを惜しみながら鈴々を見送ってくれたのだった。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・
「よかったね、許してもらえて。これもちゃんと鈴々が謝ったからだよ」
「うん!」
3人が歩いてゆくと、そこには例の一本杉が。
「一本杉を右に行くぞ。それとも一度小屋に戻るか?」
「ううん、いいのだ」
関羽の問いかけに、鈴々は首を横に振った。
そのまま3人は歩き出したが、鈴々の表情は暗かった。
「・・・山賊団の子達が見送りに来なかったことを気にしてるの?」
「っ!?」
鈴鐘の言葉に鈴々は身体を震わせた。
「きっと、鈴々がいいおやびんじゃなかったから、皆は見送りの来なかったのだ」
鈴々は顔を俯かせながら言った。
そんな鈴々の言葉に鈴鐘は首を横に振った。
「そんなことない。そんなことないよ、鈴々。ほら、あれを見て」
鈴鐘が指差す方向、そこには・・・。
「あ・・・」
山賊団の旗を持った、山賊団の子供達の姿があった。
「武者修行頑張ってねー!」
「すぐ帰ってきてねー!」
「皆、帰ってくるの待ってるからねー!」
「おやびーん!」
子供達は両手を大きく振って鈴々を見送っていた。
「皆・・・」
その姿を見て、鈴々の瞳に涙が溢れてきた。
「ほら、笑って見送ってあげなきゃダメだよ。旅の門出に涙を流したらダメなんだから」
鈴鐘のその言葉を聞き、鈴々は涙を拭い、満面の笑みを浮かべた。
「皆ー! 行ってくるのだーーーーっ!」
鈴々は大きく手を振り、山賊団達を見送った。
こうして、3人の新たな旅が始まったのだった。
続く
念のために言っておくと、大人鈴々の立ち位置は、原作の桃香というわけではありませんのであしからず。
原作に沿い、かつ、原作とは違った味が出すことを目標に頑張ります!
それではまた!