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第1幕~見知った知らない世界、出会い~

投稿します!


今回の話は、試験運用を兼ねまして、視点は全て第三者視点で、~sideというのもなしで執筆していきます。読みづらいわかりづらい等の感想がありましたら変更するかもしれませんが・・・(^_^.)


それではどうぞ!



「ん・・・」


鈴々は意識を取り戻し、瞳を開ける。


「ここは・・・」


辺りを見渡すと、そこは先ほどまでいた野原ではなく、木々が生い茂る森だった。


「昴?」


共に野原に来た昴の名を呼ぶ。だが、その声に返事が返ってくることはなかった。


「昴・・・、どこ? どこにいるの!」


最愛の人が自分の傍にいないことを理解し、心細さを感じてしまう。


「ここ、どこなんだろ・・・」


鈴々は、現状把握に努めようと試みる。


超常現象に巻き込まれた鈴々だが、幸い、以前に昴から守り手時代の冒険譚や経験を詳しく聞いたことがあったので、ギリギリのところでパニックにならずに済んでいる。


辺りを見渡すと、人の姿や気配はないが・・・。


「あ、蛇矛・・・」


すぐ傍に、自身の得物である蛇矛が転がっており、鈴々は、ひとまずその蛇矛を拾い、森を歩き始めた。










            ※ ※ ※



20分程歩くと森を抜けることができた。森を抜けると、すぐそこには、桃の木が並ぶ街道があった。とりあえず、鈴々はその街道を進むことに決めた。


「何だろう・・・、この場所、この景色、見たことがある・・・」


街道から見える風景、鈴々の記憶に引っかかるものがあった。


鈴々は必死に記憶を手繰りよせる。だが、この時点では思い出すには至らなかった。


あれこれ考えながら街道を進んでいくと・・・。


「ん?」


視線の先に、マントを深く羽織った者を大勢の男達が囲んでいた。


「もしかして・・・、賊・・・、なのかな?」


男達はこぞって武器を持っており、下卑た表情を浮かべている。傍目から見ても、友好な感じには見えない。


「命が惜しかったら、金目の物を全部置いていきな!」


男達のその言葉に鈴々は完全に確信した。


「まったく・・・」


安易に賊へと走る男達に怒りを覚え、嘆息を吐く。鈴々は、賊に囲まれている者を助けようとその集団に近づいていく。


「全く、世も末だな・・・」


マントを羽織った者がそう呟くと同時に、マントをその手に掴み、その素顔を晒した。


「えっ・・・」


その瞬間、鈴々の足が止まり、思考も一瞬停止した。


その素顔に見覚えがあった。忘れるわけがない。いや、わからないわけがない。


長く、そして美しい黒髪。手には龍を象った青竜偃月刀。


その人物は・・・。


「我が名は関羽! 乱世に乗じて民草を苦しめる悪党ども! 命が惜しくなければかかってこい!」


関羽と名乗った女性は、その青竜偃月刀を男達に向かって構えた。


関羽・・・。それは、鈴々にとっては家族同然の女性であり、共に乱世を戦い抜いた義理の姉だ。


「愛紗・・・」


目の前に姉が現れたことに鈴々は安心感からその目に涙が浮かぶ。


愛紗、それは、関羽と名乗った者の真名である。


真名、それはその者が持つ本当の名前であり、家族や親しい者以外がその名を呼べば、たとえ首を刎ねられても文句は言えない神聖な名のことである。


鈴々は、一歩一歩その人物のもとに足を進めていく。


「あん? なんだてめぇは?」


近づく鈴々に気付いた賊の1人が怪訝そうな顔で鈴々に視線を向ける。


「?」


それを見た関羽が振り向き、鈴々とその目が合った。


「っ!」


関羽と目が合うと、鈴々は身体をビクつかせる。


関羽のその目に恐怖を覚えたからだ。


別段、鈴々に殺気を向けたわけじゃない。しかし、関羽のその目は・・・。


「(何で? どうして、愛紗は鈴々にそんな目を向けるのだ? そんな、知らない人を見るような目を・・・)」


姉妹の契りを誓い合った者にそのような目を向けられたことにより、鈴々の胸に、戸惑いと恐怖、そして悲しみが生まれた。


「そこのお前! 危ないぞ! 早く逃げるんだ!」


自身に向けて発せられたそんな言葉。再び鈴々の胸に悲しみがジワッと広がる。鈴々は、涙を必死にこらえた。


「あっ・・・、その・・・」


鈴々はどうしたらいいのかわからず、しどろもどろになる。


話したいこと、聞きたいことがある。だが、それが言葉として口から出てこない。


「おいおい、お前も俺達と遊びたいのか? だったら俺達が思う存分―――」


賊達が鈴々のもとに歩み寄ってきた。


ドォン!!!


「「「「っ!」」」」


鈴々はその賊達の足元に蛇矛を叩き付けた。叩き付けられた場所に大きなクレーターができた。


「邪魔! どっかに消えて!」


鈴々は殺気を向けながら言い放った。


目の前の惨状に賊達の顔から笑顔が消え、恐怖に包まれる。賊達は首をコクコクと頷くと、我先にと一目散に逃げていった。


「助太刀は無用であったが、礼を言わせてもらおう」


関羽は、鈴々に礼の言葉を告げる。


賊達がいなくなると、再び鈴々は関羽に視線を向ける。そして、ジーっと関羽の顔を覗き込む。


「(あれ? よく見ると、この愛紗、鈴々が知ってる愛紗と少し違うのだ・・・)」


鈴々に一種の違和感を覚えた。この目の前の人物は、関羽には違いない。それは、義理の姉妹である鈴々には人目でわかった。


目の前の関羽は、鈴々の知る関羽より、若干ではあるが若い。佇まいや雰囲気なども、鈴々の知る関羽とは僅かに違う。


ここで、鈴々は、昴が以前に話してくれたことを思いだした。


パラレルワールド・・・、並行世界。


鈴々にはチンプンカンプンであったが、昴がわかりやすく・・・。


『この世には、同じようで違う世界が無数にあって、そこには、ここにいる鈴々とは違う生き方をした鈴々がいるかもしれないんだ。例えば、愛紗と出会わなかった鈴々がいる世界、とかな』


そう説明してくれたことにより、その意味をおぼろげながら理解することができた。


「(この愛紗は、もしかして、鈴々を知らない、鈴々が知らない愛紗なのかな?)」


鈴々は頭の中で考えを巡らせる。


「? ・・・あの、私の顔に何か?」


不審そうな顔で関羽が尋ねてきた。


「えっ!? あっ、ううん、何でもないよ!」


鈴々は手をブンブンと振ってごまかした。そして、話題を変えるために質問をぶつけてみた。


「と、ところで! ここって、何処なのだ・・・かな?」


「ここですか? ここは幽州の街道ですが・・・」


その問いに鈴々は、先程記憶に引っかかったものの正体に気付いた。


「(そうだ・・・。ここって、鈴々が生まれ育った場所だ・・・)」


この場所は、鈴々が生まれ育った地だったのだ。そして、義理の姉妹と出会った場所でもある。


「そうか・・・、そうだったんだ・・・」


鈴々は、世界は違えど、久しく足を踏み入れていなかった自身の故郷に郷愁を感じた。


「どうかしましたか?」


表情がコロコロ変わる鈴々に関羽は怪訝そうな顔を浮かべる。


「ううん、何でもないよ。・・・それはそうと、あなたはひょっとして、黒髪の山賊狩りかな?」


鈴々がそう尋ねると、関羽は恥ずかしそうに顔を赤らめた。


「そ、それは、確かにそう呼ぶ者もいるが、自分からそう呼んでるわけではないぞ//」


「(この世界でも愛紗はそうなんだ・・・)」


鈴々は、自分の知る関羽との共通点を見つけ、密かに喜びを感じた。


「なるほど~、いろいろ教えてくれてありがとう! それじゃあ、私はもう行くね」


話したいことは山ほどある。出来れば一緒に付いて行きたかった。だが、鈴々には確かめたいことが山ほどある。まずはそれをするのが先だと判断し、ここで別れることを決意した。


「そうですか・・・。それでは私もこの辺で。道中、気を付けてください」


「うん!」


鈴々は、関羽と別れ、その場を後にした。












            ※ ※ ※



関羽と別れた後、記憶を辿って街道を進み、1つの村に辿り着き、そこで情報収集に努めた。


昴に、新しい外史・・・、知らない世界に到着してまず最初にするのは現状把握と情報収集だと聞いていたからだ。


情報を集めた結果、ここは鈴々がいた世界とほとんど変わらない世界だとわかった。そして、自分がいた世界より過去であり、黄巾の布を巻いた賊が現れる少し前の時代だということも把握できた。


「そうなると、この世界はまだ乱世のままなんだ・・・」


皆と戦い、太平の世を勝ち取った自分の世界。だが、この世界はまだ乱世の真っただ中。そのことが鈴々の心を強く痛めた。


こうしている間にも、貧困に喘いでいる者がいる。賊の襲来に怯える者がいる。


「どうしよう・・・」


鈴々は、早くもとの場所に帰りたい。そう考えていた。それは今でも変わらない。


自分が知る皆がいる世界に・・・、皆が知る自分がいる世界に・・・。


だが、乱れたままのこの世界を放っていくこともできない。


そんなジレンマが鈴々の心を締め付けていた。


「・・・」


気が付くと、村を出て、1人で街道を歩いていた。


ふと、上空を見上げる。空は青く、蒼天の名の如く広々としていた。


この、同じ空の下にいる今この瞬間、もしかしたら、理不尽にその命を失っているかもしれない。


暫しの間、蒼天を見上げていた。そして、視線を前に戻すと、1つの決意をした。


「・・・決めた」


現段階で、もとの場所に帰ろうにも、その方法の糸口すら掴めていない状況だ。どのみち、帰ろうにも帰ることができない。だったら、その方法を探しながら困っている人を救っていこう。


もし、自分ではなく、鈴々の知る契りを結んだ姉妹達が同じ状況だったら、見て見ぬ振りなんて絶対しないだろうと考えた。


「よーし! まずは、昴を探そう!」


あの時、一緒にいた昴もこの世界に来ているはず。場所はわからずとも、きっとどこかにいる。昴と合流し、これからのこととこの世界のことを一緒に考えよう。


決意を新たに、鈴々は、街道を走り始めた。












            ※ ※ ※



1時間程街道を進んでいくと、1つの大きめな村に到着した。


それは、鈴々の記憶にもある、なじみの村だった。


もうそろそろ日も暮れるので、今日はこの村で宿を取ることに決めた。


幸い、手元にいくらかのお金を持っていたので、多少の間なら問題はなかった。


「うわ~、この村もほとんど同じだ~」


村の中は、鈴々の記憶に残る村とほとんど同じなため、家や店はもちろん、宿の場所も手に取るように理解することができた。


しばらく、思い出に浸りながら村を歩いていると・・・。


「で、出たーーーっ!」


前方から男の悲鳴が聞こえてきた。


「えっ? 何だろう・・・」


視線を向けると、前方に砂埃が舞っており、それが徐々に鈴々のもとに近づいてきていた。


「どけどけどけーっ! ――山賊団のお出ましなのだーーーっ!」


山賊団という言葉に一瞬身構える鈴々だったが、よくよく見てみると、それは子供達の集団だった。豚に跨っているのが大将で、周りの子供達はどうやら取り巻きらしい。


その集団が鈴々の横を抜ける。


「っ!?」


通り過ぎる瞬間、鈴々に、関羽を目撃した時以上の衝撃が走った。


「?」


子豚に跨った子供が一瞬横眼でチラリと鈴々の方を見たが、すぐに前方にその視線を戻した。


その集団は、あっという間に駆け抜けていってしまった。


「うそ・・・」


鈴々はその場で茫然自失となって動けずにいた。


薄々、予感はしていた。


この世界に関羽が存在しているなら、当然・・・。


鈴々は子供達が通り過ぎた方角に振り向く。


先程、通り過ぎた子豚の跨った子供・・・、それは―――














この世界の張飛・・・。


自身の・・・、幼少の頃の自分だった・・・。














            ※ ※ ※



己がよく知り、そして、違う世界に来た鈴々・・・。


そこで、2人の鈴々が会い見えた。


新たな物語が、今、動き出した・・・。












続く



現在の鈴々の紹介は、次話を投稿したらする予定です。


次話も明日の同じ時間の投稿を予定しています。


それではまた!


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