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第12幕~賊討伐、結ばれる絆~

投稿します!


オリキャラを交えた話です。


それではどうぞ!



「いっくよーっ!」


鈴鐘が賊の手前で大きく跳躍、賊のど真ん中で長尺の蛇矛を地面に叩きつけ、その周囲の賊を吹き飛ばした。それに続くように趙雲が二又の槍、龍牙で賊を刺し貫いていく。


「はぁぁぁぁっ!」


―――ズシャァァァッ!!!


鈴鐘が蛇矛を一振りする。その一振りで10人程の賊の胴が飛ぶ。


「はいはい、はいーっ!」


―――ザクッ! ズシュッ!


趙雲がそれに続き、鋭く、速く、的確に賊の喉元、心臓を一突きで刺し貫き、賊を屠っていく。


「な、何だ!?」


「ば、バケモノだーっ!」


次々と仲間を屠られている現状を目の当たりし、賊達はパニック状態に陥っていく。


その後も鈴鐘と趙雲は圧倒的な武をもって賊を屠っていった。


「矢だ! 矢を放って奴等を殺せぇ!」


離れたところから指示が飛ぶ。鈴鐘がその声がする方向を向くと、賊が10人程固まり、弓矢に矢を番え、弦を引き絞っていた。


「趙雲! 来るよ!」


いち早く気付いた鈴鐘が趙雲に声をかける。


「っ!? 応っ!」


趙雲は心臓を刺し貫いた槍を抜き去り、飛来される矢に備える。


「放てぇーーーっ!」


矢を構えた賊達の弓矢の弦から手が離され・・・ようとしたその時!


「させっかよぉーーーっ!」


―――ドガァァァァッ!!!


「「「ぐわぁぁぁっ!」」」


その弓隊に二対のトンファーを持ったボーイッシュの女性が突っ込んだ。賊達は瞬く間に吹き飛んでいく。


「援護致しますわ!」


トンファーを持った女性が討ちもらした賊を一対の棍を持った長身の女性が仕留めていく。


「何処のどいつかは知らねぇけどよ! 一緒にこいつら片付けようぜ!」


トンファーの女性と棍の女性が鈴鐘達と合流する。


「うん! もちろんだよ!」


「ああ!」


4人が背中合わせとなる。それを囲うように賊達が包囲する。


「随分と賑やかになっちまったな」


「どうやら、東側を攻めていた賊もこちらに来たようですわ」


「ふーん。何か賊が増えたなって思ったけど、どうりで」


村を襲っていた賊の全てが鈴鐘達を倒すためにこの場にやってきた。


―――ザッ・・・。


賊達がジリジリと鈴鐘達ににじり寄る。賊の数は多く、普通であれば絶望する状況だ。だが・・・。


鈴鐘達は笑みを浮かべていた。その表情に絶望はなく、むしろ、余裕すら感じられる。


「こっちは迷子になった妹を探さなくちゃならないから、とっとと終わらせないとね」


「うむ。時間を掛ければさらに行方が知れなくなるからな」


鈴鐘が蛇矛を一振りし、趙雲が龍牙を構える。


「はっ! 用があんなら、速攻で片付けないとな! ・・・とりあえず、名前だけ聞いといていいか?」


ボーイッシュな女性がトンファーをグルグル手元で回しながら尋ねてくる。


「私は張翔、字は益徳だよ」


「我が名は趙雲、字は子龍だ」


鈴鐘と趙雲が名を名乗る。


「俺は凌統、字は公積だ」


「わたくしは周倉、字は烈陽ですわ」


それに続き、凌統と周倉が名を名乗った。


「それじゃ・・・」


「ゆくぞ!」


―――ダッ!!!


鈴鐘と趙雲の掛け声を合図に4人のそれぞれ正面にいる賊達に向かっていった。













・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・



「うりゃぁーーーっ!」


鈴鐘が圧倒的な剛力で賊を屠り・・・。


「はいはい、はいーーーっ!」


趙雲が正確無比、それでいて速く鋭い突きで賊を刺し貫き・・・。


「おらおらおらーーーっ!」


凌統がトンファーと蹴りで賊を弾き飛ばし・・・。


「はぁーーーっ!」


周倉が棍を巧みに回し、賊を薙いでいく。


かなりの数を有していた賊も、この4人の豪傑により、みるみる数を減らしていった。包囲した当初こそ、余裕に満ち溢れていた賊も、今では恐怖に染まっている。


「くそぉっ! 退けぇ! ずらかるぞぉっ!」


賊の頭の声が辺りに響く。その声を聞いて賊達は一目散に退いていく。


「賊が逃げていく・・・」


「勝った、勝ったんだ!」


戦勝に沸く村人達。ところかしこで喜びを讃えながら抱き合っていく。趙雲も笑みを浮かべ、凌統と周倉もふぅっと一息吐いた。ただ、鈴鐘のみが未だ厳しい表情をしている。


「趙雲、凌統、周倉、まだ戦える?」


鈴鐘が3人に尋ねる。


「私はこのまま、賊達を追撃しようと思うの」


それを聞き、3人の表情が引き締まる。


「うむ。確かにこのまま奴等を放置するわけにはいかないな」


趙雲がその提案に賛成する。


「わたくしも賛成ですわ。賊の数からして、この近くにきっと賊達の隠れ家がありますわ」


周倉も鈴鐘の意見に賛成する。


「あー、確かに、隠れ家で待ってる賊と合流されたら面倒だな。そうでなくても、他所で散らばってる賊達と合流されたらまたこの村を襲うかもしれねぇ。今の内に片付けとかないと面倒になるな。俺も賛成だ!」


凌統もその意見に乗っかる。


「私も・・・賛成、です」


そこに、村で指揮を執っていた司馬懿が現れた。


「あの賊達は・・・ここで討たなければ・・・また来ます。村人達は・・・もう戦えないので・・・、4人に、お願いしようと、思ってました」


司馬懿が途切れ途切れ喋りながら提案していく。


「軍師様がそう言うなら、なおのこと片付けないとな」


「ですが、賊の隠れ家はいったい何処に・・・生憎、賊達は全て逃げてしまいましたし、賊の生存者も見たところ見受けられませんわ」


賊は既に逃亡。賊の生き残りも残念ながらいない。肝心な賊のアジトの場所がわからず、4人の表情が曇る。


「心配には・・・及びません・・・」


司馬懿が持っていた紙を広げる。そこにはこの辺りの地図が記されていた。


「賊の逃げていった方角から・・・察するに・・・」


司馬懿はつうーっと地図に指を走らせ・・・。


「ここの森・・・、ここが賊の隠れ家だと推測できます」


司馬懿は地図の一角にある森のところまで指を走らせ、指で円を描いた。


「ふむ・・・、して、ここが賊の隠れ家だという根拠は?」


趙雲が司馬懿に尋ねる。


「ここには・・・、随分昔に放棄された・・・、廃村があります。隠れ家にするには、うってつけの場所です」


「なるほどな。となりゃ、すぐにでも殴り込みに行こうぜ!」


凌統が大きく意気込んだ。


「ですが、村人達はかなり疲弊しているみたいですし、行くとなるとわたくし達だけで行くことになりますわね」


「大丈夫、私達だけで充分だよ!」


周倉の懸念を鈴鐘が晴らす。


鈴鐘達は、戦勝で沸いている村人達を尻目に、司馬懿が指定した賊の隠れ家へと向かっていった。














            ※ ※ ※



移動すること2時間、森の中にある廃村の手前にまで辿り着いた。


「軍師様の推測どおり、廃村が賊の隠れ家になっておりましたわね」


そこには、先程追い払われた賊達の残党がひしめきあっていた。


趙雲が廃村の周囲をグルリと1周して偵察したところ、この廃村を大きく囲うようにして、高さが3メートル程の塀が築かれており、そして、廃村への出入り口は北と南の2つのみだということが分かった。


「ふむ、入り口は2つか。考えようによってはこれは都合がよい。・・・皆、聞いてくれ」


趙雲が策を提示し始めた。


「とりあえず、私と周倉、張翔と凌統の二組に分かれる。そして、北と南から同時に村へ侵入する。侵入した後は私と張翔で賊を屠りながら賊の頭を討つ。凌統と周倉は出口を確保しつつ、逃げる賊を討ってほしい」


趙雲が提示した策に凌統が眉を顰める。


「うーん、策に文句はねぇけどよ、俺も中で暴れてぇよ」


「ダメ。凌統も周倉もさっきまでの連日の戦ですごい疲れてるでしょ? だから私達が行くよ」


納得をしない凌統を鈴鐘が窘める。それでも納得しない凌統だが・・・。


「出口の確保も立派な仕事ですわよ。ここは2人に任せましょう」


周倉が凌統の肩に手を置きながら説得する。


「うーん、ま、しょうがねぇな。もしかしたらこっちに賊の頭が来るかもしれねぇし、おし、分かったぜ!」


凌統は納得し、これを了承する。


「それで? どうやって村に侵入するんだ?」


凌統が趙雲に聞き返す。村への出入り口は北と南の2つだけ、それ以外からの侵入は現状では困難。


「そんなもの、知れている」


趙雲が龍牙を握りしめ・・・。


「正面突破だよ!」


鈴鐘がニヤリと笑いながらそう返した。












・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・



「・・・あん?」


廃村の入り口を見張っていた賊の1人が何かに気付いた。それは、正面から真っ直ぐ入り口へと走ってくる2つの人影。賊はすぐさまその正体に気付いた。


「て、敵しゅ―――」


―――ザシュッ!!!


―――ドガッ!!!


見張りの賊達は言い終える前に斬られ、弾き飛ばされた。


「ここは任せたよ!」


「ああ、任せな! 俺の分まで暴れてこいよ!」


凌統は入り口で待機し、鈴鐘は廃村内に突入していった。













・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・



「うりゃうりゃーーーっ!」


鈴鐘は向かってくる賊を手当たり次第斬り伏せていく。賊達は、まさか自身の隠れ家が奇襲されるとは思ってもおらず、大混乱へと陥っている。


「賊の頭は・・・きっとあそこ!」


鈴鐘は廃村に入ってすぐに目に入った一際大きな建物目掛けて一直線に向かっていった。鈴鐘の経験上、賊の頭はとにかく見栄のためなのか、目立つところにいたがる傾向があるのを知っていたからだ。


半分の賊は逃げまどい、残りの半分は向かってくるが、鈴鐘は難なく屠っていく。


やがて、目当ての建物にまで辿り着いた。そこには見張りの賊がいたのだが、鈴鐘の姿を見て恐れをなし、脱兎の如く逃げ去っていった。


阻む者がいなくなり、すぐさま建物に侵入を試みたその時!


「張翔よ、上だ!」


「っ!?」


その声にすぐさま反応し、咄嗟に後ろへと飛び去った。それと同時にさっきまで鈴鐘のいたところに矢が数本刺さっていた。


鈴鐘が顔を上げると、建物2階から弓矢を構えている賊達の姿が目に入った。


「ちぃっ!」


賊は舌打ちをすると、今一度矢を弓に番えはじめた。


―――ドス!!!


だが、その賊の胸に矢が刺さり、そのまま地上へと落下していった。


鈴鐘が矢が飛んできた方向、左に視線を向けると、そこには弓矢を構えた趙雲の姿があった。


「ふむ、この距離なら問題ないな」


趙雲は道中で拾った弓矢を構え、2階の建物から弓を構えている賊に次々撃ち落としていく。趙雲は一矢も外すことなく賊を射抜いていった。


「すごーい! 趙雲って弓も使えたんだ!」


「ハッハッハッ! このくらい、武人の嗜みの1つだ」


褒める鈴鐘に趙雲は胸を張って誇らしげに言う。


「さて、この厳重な見張りから察するに、ここに頭がいるのは間違いなさそうだな」


「うん。早く倒しちゃおう」


趙雲は拾った弓を捨て、2人同時に建物内へと突入していった。












・・・・・・・・・・

・・・・・・・

・・・・



建物内に入ると、何人かの賊がいたが、ほとんどの賊が鈴鐘と趙雲の姿を見ると武器を捨てて逃げまどった。2階に辿り着くと、そこには賊の頭と思しき者がいた。


「た、助けてくれぇっ! お、俺が悪かった!」


賊の頭は、2人に恐れをなして命乞いを始めた。


「「・・・」」


2人は武器を構えたまま無言で頭に近づいていく。


「た、頼む! 金でも食料でも好きなだけやる! だから命だけは―――」


「ふざけないで!」


「ひっ!」


鈴鐘は賊の言葉に激昂し、怒声を浴びせる。その言葉に頭は竦みあがる。


「その食料とお金はあなたの物じゃないでしょ。それはあなたが奪った村人達が一生懸命育てて、稼いだ物。あなたの物なんかじゃない」


鈴鐘は頭を睨みつけ、ジリジリとにじりよる。その姿に恐れをなし、腰を抜かしてジリジリ後ずさっていく。


「ま、待ってくれよ! 悪いのは俺じゃない! 俺だって好きでこんなことやってるわけじゃないんだ! こうでもしないと俺がおっちんじまうから仕方なく・・・そうだ、悪いのは官軍共だ! あいつら圧政のせいでこんな目に! だから俺は悪くないんだぁっ!」


賊の頭は怯えながら必死に命乞いを続けていく。


「・・・あなた達のような奴が生まれたのは今、この国を治めている人の圧政のせい。そのせいで力の無い民達が苦しめられてしまう。だから、見方を変えればあなた達は犠牲者なのかもしれない」


「そ、そうだろ? だから―――」


「でもね、たとえそんな苦しい状況でも、真っ当に生きている人はたくさんいる。そんな状況にもくじけず、必死に田や野菜を耕して生きている人はいっぱいいる。だから、あなたの言ってることはただの言い訳だよ」


鈴鐘は淡々と言葉を続けた。


「自分は悪くない? ふざけないで! 苦しいからって奪ってもいいなんて道理なんてない! あなたはただ逃げただけ。人の道から外道の道に。だから私はそんなあなたを許さない」


鈴鐘は蛇矛を振り上げた。


「あなたに恨みはない。でも、あなたに奪われ、殺されていった人達の無念のために、私はあなたを討つ」


鈴鐘は蛇矛を振り下す。


「ひっ、ひぃぃぃーーーっ!」


―――ザシュゥゥゥッ!!!


賊の頭は脳天から蛇矛を振り下され、真っ二つに斬り裂かれた。鈴鐘は蛇矛の一振り、血振りをし、肩に掛け、賊の頭の遺体に背中を向ける。


「張翔・・・」


趙雲が先ほどとは違う鈴鐘の表情に気付き、声をかけた。


「・・・あなたがもう少し強ければ、こんなことせずに済んだのに。私はあなたを許さない。だから、あなたも私を許さないで」


鈴鐘は悲痛の表情で呟いた。












            ※ ※ ※



その後、鈴鐘と趙雲は北と南の出入り口で待つ凌統と周倉の下へ急いだ。


北と南、それぞれの出入り口の周辺には無数の賊の亡骸が横たわっていた。凌統、周倉共に怪我こそなかったものの、かなり疲弊しており、壁に寄りかかっていた。


廃村を根城にしていた賊は全て討伐が完了し、そのことを報告しに4人は村にまで戻っていった。


報告を聞いた司馬懿は再度賊の根城の廃村まで行くことを提案した。目的は、廃村に備蓄されている賊達が奪った糧食である。


鈴鐘と趙雲、司馬懿と、数人の村人を連れて廃村に向かい、探索をしたところ、1つの大きな蔵のようなところに1ヶ所にまとめて置かれていた。


司馬懿はそれらを全て焼却処理することを告げた。これに村人達は難色を示したが、司馬懿は、もし、これらの食料を持ち帰れば後に、また新たに賊が現れた際にこの村が再び略奪の対象になってしまう恐れがあると説明し、納得させた。


そこで趙雲が『また賊にここを根城されれば面倒だ。いっそ、この廃村ごと焼却してはどうだろうか?』と、提案した。司馬懿はそれに賛同したが、それは時間がかかるので少しずつ、ということになった。


蔵の中の物を外に運び出す際・・・。


「む?」


趙雲が蔵の中で、盗品と思しき物が置かれている場所の一角で何かを発見する。趙雲はそれを手に取り、ジーッと眺めている。


「趙雲、どうかしたの?」


鈴鐘がそれに気付き、趙雲に声を掛けた。


「いや、何でもない。気にするな」


「? そう?」


鈴鐘は不思議そうに思いながらも食料を外に運び出していく。趙雲は箱から蝶を模して作られた仮面を取り出し、それをそっと懐にしまった。















            ※ ※ ※



その夜、村では戦勝を祝って宴会が行われた。


村を救った立役者である鈴鐘、趙雲、凌統、周倉、司馬懿を主役とし、宴会は盛大に行われた。


「ハッハッハッ! 張翔、飲んでるか!」


凌統が鈴鐘の肩に手を回しながらグイッと酒を一気に煽った。


「飲んでる飲んでる・・・って、お酒臭い・・・」


絡まれた鈴鐘は思わず眉を顰める。


「そうかそうか! ハッハッハッ!」


完全に酔っぱらった凌統はまたさらに酒を注いでいく。


「ところでさ、少し気になったことがあるんだけど」


「ん?」


「凌統って、江東の孫策の所に仕える将だよね? 何でこんなところにいるの?」


鈴鐘は気になったことを聞いてみた。それを聞いた凌統はハァッと深い溜め息を吐いた。


「あー、実は、うちの大将には2人の妹がいるんだが、その末の妹が家出しちまってな。俺はその子を連れ戻すために武者修行を兼ねて探し回ってるんだ」


「末の妹って、孫尚香・・・」


「おー、よく知ってんな」


鈴鐘はそれを聞いて、凌統に同情した。


「お嬢には困ったもんだよ。自由奔放は結構だけどよ、少しはこっちの迷惑も・・・」


と、今度は愚痴が始まった。それを鈴鐘は苦笑いしながらただただ聞いていた。


一方で、別の場所では趙雲と周倉が酒を飲みながら談笑している。


「ほう? お主も旅をして回っているのか」


「ええ。この乱れた世に武人として生まれた以上、わたくしが仕えるにふさわしい主を探さねばなりませんわ」


「お主程の武人ならば、何処でも活躍が出来るのではないか?」


「そうだといいのですが、今のところ、冀州と幽州を回ってみましたが、袁紹は論外、公孫賛はどうにも魅力を感じませんわね」


「ハッハッハッ、そうであろうな! 袁紹は暗愚、公孫賛殿は・・・まあ、影が薄いしな」


こんな具合に話を弾ませている。一方、司馬懿は・・・。


「・・・(コクッ・・・コクッ・・・)」


疲労と酒により、眠そうに舟をこいでいた。独力で兵法等を学んでいた司馬懿であったが、本格的な戦で指揮を取ったのはこの戦が初めてであり、やはり、心労と疲労は計り知れなかったようだ。


酒宴は、夜更けまで続いていったのだった・・・。














            ※ ※ ※



翌日・・・。


日が昇り、身支度を整えると、鈴鐘を始めとした武人達は早々に村を出立することにした。


司馬懿は叔母の使いを済ませるために山奥の水鏡のところへ、凌統は家出人を探すため、周倉は自身が仕える主を探すため、そして、鈴鐘と趙雲ははぐれた鈴々と愛紗を探すため・・・。


「くあーーっ、頭いてぇーーーっ! だが、戦勝明けの朝は気分がいいなぁ!」


「・・・どっちですの?」


5人は村の入り口に集まっていた。


「皆さん・・・、お世話になりました」


司馬懿がペコリと頭を下げる。


「いやいや! こっちも軍師様にはすげぇ世話になった」


「司馬懿さんの采配にはわたくし達も助けられましたわ」


凌統と周倉は笑顔でそれに応えた。


「皆さんの・・・旅の無事を、祈ってます」


「うん! ありがとう、司馬懿! それじゃ、またね!」


鈴鐘は司馬懿に手を大きく振り、4人は歩いていった。


「さよなら」


そんな4人に司馬懿は手を振って見送った。


司馬懿と別れ、4人は歩いていく。しばらく歩いて行くと、二手に分かれた分岐点へとたどり着いた。


「俺はこっちだ」


「わたくしもこっちへ行きますわ」


凌統と周倉は左の道に一歩出た。


「我らはこっちだな」


鈴鐘と趙雲は右の道に一歩出た。


「はぐれた仲間と会えるいいですわね」


「うん! ありがと!」


周倉の激励に鈴鐘は礼の言葉を述べる。凌統はニヤリと笑みを浮かべ・・・。


「なあ、張翔、趙雲」


「ん?」


「どうした?」


「戦の時にも感じてたが、あんたら、すげぇ強ぇーな。趙雲もそうだが・・・」


凌統は鈴鐘を指差し・・・。


「張翔、特にお前はバケモノだな」


凌統の言葉に鈴鐘は困った表情を浮かべた。


「そ、そんなこと・・・」


「あるさ。俺は頭はあまり良くないが、武に関してはわかる。お前は別格だ。是非とも手合せを願いてぇーところだが、俺は一刻も早くお嬢を見つけなきゃなんねぇーし、何より、今やっても手も足もでねぇだろうから、今はやめとくぜ。だが・・・」


凌統はもう一度ズビシ! と、指差した。


「今度会ったら、そん時は相手してくれよ。俺ももっと強くなっからよ!」


「もちろん! 私も負けないからね!」


鈴鐘はそれに笑顔で応えた。


「では、わたくし達はこれで失礼させていただきますわ」


周倉は一礼をする。


「では、またこの蒼天の何処かでな」


「ああ! またなーっ!」


4人はそれぞれ手を振り合い、それぞれの道を進んでいった。


「早く鈴々達を見つけよう。ね、趙雲」


「星だ」


「えっ?」


「本当はもっと以前預けても良かったのだが、すっかり預ける機会を見失ってしまってな。今ここで預けさせてもらおう。我が真名は星だ。この真名、お主に預ける」


それを聞き、鈴鐘は満面の笑みを浮かべる。


「私の真名は鈴鐘! この真名、星に預けるよ!」


「ふむ。では鈴鐘。改めて、あの姉妹を探しに行くとしよう」


「うん!」


鈴鐘と星。互いに真名を預合い、また新たに絆を結んだ。


2人は、はぐれた鈴々と愛紗を探すため、道を歩いていくのだった・・・。












続く




大人鈴々の少々大人面を出してみました。


もはや、原作の鈴々の影が薄くなってきたような気がしてきました(^_^.)


もうそろそろ、愛紗達と合流を果たしたいですね。


感想、アドバイスお待ちしています。


それでまた!


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