風邪引き彼氏と世話焼き彼女
まだまだ拙い文章なため、そういう小説はダメ、と思う方は今のうちにお引き返しください。
ベッドの上で苦しそうに顔をゆがめ、息を乱している竜司を見て胸が痛くなる。
「ごめんね竜司、大丈夫?」
「はぁっ、平気。彩音はもううち帰ってもいいよ?」
「そうはいかないでしょ。おじさんもおばさんも明日の夜まで帰ってこないんだから……こんな状態の竜司おいて帰れないよ。それに、竜司が風邪引いたの、私のせいだし」
そう、数日の大雨で水が増量河原で溺れかかっている子猫を見つけて、助けようとしたところを危ないと竜司に止められたにもかかわらず助けに行こうとしたら、俺が行くからといわれてその言葉の意味を理解したころにはもう竜司は走り出して猫の救出に行っていた。
川の水位はかなり上がっていて、竜司は全身びしょびしょになって、家まで20分以上もかかる場所からだったし今はもう寒くなり始めている秋の終わりごろ。
そんな中でそういうことすればやっぱり風邪も引くわけで……
「彩音が、元気なら、俺、それでいいから」
そう言葉を紡ぐ竜司は本当に苦しそうで痛々しい。
「竜司、やっぱり病院行こう?」
「やだ」
そういってそっぽ向いた竜司に思わずため息が出る。
幼いころ風邪をひいて注射をして以来、注射怖い病院怖いと思うようになっておかげで大の病院嫌い。
もともと体が弱いわけでもないし、怪我もそんなにしないほうだから病院に行く機会がなく、幼いころの恐怖をいまだに引きずっているため39度ほどの熱が出ていても病院に行くことだけは断固拒否する。
「竜司、大丈夫だよ。病院は怖いところじゃないよ?」
「嫌なものは嫌だ。ぜーったい行かないもん」
幼い口調で言う竜司はかわいらしいが……それでも、やっぱりこんな状態はちょっとまずいと思う。注射か点滴してもらはないと竜司だってきついと思うんだよね。
「竜司」
竜司の肩にそっと手を置いて、少し揺らしながら声をかけたら、竜司は本当に病人かと思う素早さで私を布団の中に引きずり込み抱き着いてきた。
「俺の薬は彩音だから、ほかはいらない。こうしてたら治るし」
そういって私の胸のあたりに顔をぐりぐりと押し付ける竜司を見て、可愛いなと思い思わず頭をなでて和んでしまった。
はっ、和んでいる場合じゃないよ私!
「りゅ、竜司! 病院行ったほうがいいって、きついのずっと続くの竜司だって辛いでしょ? ね? 私も一緒についていくから」
「やだ」
そういってさらにギュッと力を入れてきて、どこからそんな力が出るんだと思うくらいのもので、ちょっと苦しくなった。
私が苦しんでいるのに気付いたのか、さっきよりちょっと力を抜いて、それでもぎゅーっと抱き着いたまま竜司はいやいやという風に首を振る。
「……はぁ。わかった、竜司が行きたくないなら無理につれていかないけどこれ以上熱が上がったりひどくなるようなら何が何でも病院に引きずってでも連れて行くからね」
「うん、大丈夫」
ちょっと顔をひきつらせながらも、そうはっきりといった竜司に私は満足して竜司の頭をそっとなでる。
「竜司、そろそろ離して? おかゆでも作ってくるから」
「んー、いや」
「竜司」
「こうしてるの気持ちいいから」
「もう、そんなことばっかり言って……おなかすかないの?」
「すかない」
グーギュルギュルギュル
「本当にすいてない?」
「すいてな」
グー
「もう別に無理に我慢しなくてもいいから。そんなに時間かからないから離して?」
ものすごーく嫌そうな顔をしつつやっと離してくれた竜司に一息ついてからキッチンへ向かって手早くおかゆを作った。
「竜司?」
そっと音をたてないように扉を開いて、心持ち声を小さくして竜司の名前を読んだ、けれど返事はない。
そのまま忍び足で竜司のベッドまで近寄ったら、竜司は眠ったらしく目を閉じてすやすやと寝ていた。そこに先ほどまでの息苦しさはなく、少しはよくなったのかな、と思ったらちょっとうれしくて思わず顔がほころんだ。
おかゆが入ったお椀をベッドわきのチェストの上において、ベッドの端に腰掛けてそっと竜司の顔に近づく。
「早く良くなって、いつもの元気な竜司を見せてね」
起こさないようにささやくような声量で言ってからそっと竜司の額にキスをした。
翌日すっかり良くなった竜司と、そして竜司の風邪をもらって寝込んだ私を看病している竜司の姿があったそうな。
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