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条件付きの結婚生活  作者: 八月葉月
【改稿前】
4/29

初夜(2)


「取り敢えず、その話し方は止めろ」

「?」


突然言われた言葉の意味が分からず褒姒(ほうじ)は首を傾げる。辟方(へきほう)はそんな彼女に少し苛立ったように付け加えた。


「普段の話し方にしろと言ってるんだ」

「何故です?」

「お前にそういう話し方をされるのは馬鹿にされている気がして気分が悪い」


子供のように拗ねたように言う辟方に、褒姒は呆れてしまう。けれど、その姿は先ほどの宴で見せていた王としての顔とは違い、年相応に見えて何だかおかしかった。


「被害妄想」

「うるさい! おおやけの場でだけ気を付ければいい。後は普段通りに話せ」


その申し出は褒姒にとってもありがたかった。

元々堅苦しいのは好きではない。両親も普段は砕けた話し方をしていたので、きちんとした言葉遣いは客が来た時と食事の時だけしか使ってこなかった。だが、流石に後宮に入ってまでそういう訳にはいかないだろう。覚悟をしていたとは言え、これから四六時中言葉に気を付けなければならないのかと、かなりうんざりしていたのだ。

なので、辟方の提案に是も非もなく賛成した褒姒は彼の気が変わらない内にと早速肩の力を抜く。


「堅苦しいのは好きじゃないからいいけど……こんなんだよ? いいの?」

「構わん。その方が違和感がないしな」

「へー」


別に彼の印象などどうでもよかった褒姒は気のない返事をする。

そのあまりにも気の抜けた褒姒の返事に、辟方は思いきり呆れた。仮にも目の前にいるのはこの国の皇帝であるのにも関わらず、気を抜き過ぎだろう。先ほどまでと落差があり過ぎだ。

あまりにも豪胆な彼女の態度に、こちらの気もすっかり抜けてしまう。


「……躊躇いがないな」

「問題が?」


自分で言い出しておいて何か文句でもあるのか? と褒姒が睨みつけた。そんな彼女のふてぶてしい表情に辟方はおかしくなってくる。権力を笠にきて闇雲に他者を抑え付ける気はないが、現在自分が最高権力者であることに変わりはない。その自分にこんな態度を取れる姫がいるとは思わなかった。

そのことがおかしくて、何故だか少し嬉しい。


「ない! ……こんな娘だったのか」


褒姒は突然くつくつと笑い出した辟方を不審な目で見た。


「……今更後悔してるわけ?」

「してない。憂鬱なだけだ」


憂鬱だ、と言いながら笑っている辟方が不気味でよく分からない。しかし、ここで困惑して相手に主導権を握られてしまうのは褒姒の本意ではないので、なんとか文句を言い返した。


「本人を目の前にしてよくもそんなこと言えるわね?」

「お前も俺のことなぞ気にしてないからな。俺だけ気にするのも馬鹿らしいだろ」

「ああ、そうだね」

「……」


あっさりと肯定されて辟方は一瞬言葉を失う。


(肯定するのかよ……)


それから苦笑したようにまた笑った辟方は、悪戯が成功した子供のような笑みを浮かべる褒姒に気付き、息が止まった。幼く見えるその笑みは、この後宮ではほとんど見られないような純粋さで、辟方の記憶にしっかりと焼きついたのだった。


褒姒はそんな彼の様子に首を傾げながら、しかし一瞬でその笑みを消すと先ほどまでの無表情に戻ってしまう。


「ついでに言うなら、条件を守らない君が悪い」

「あ? 条件?」


ぼーっとしていた辟方は何を言われたか理解出来ずに困惑した。

それに褒姒は呆れたように付け加える。


「婚姻を承諾するにあたって条件をつけたでしょう?」

「ああ。忘れてた」


全く悪びれずに開き直り、しかも今思い出したらしい辟方に、流石の褒姒も目を丸くする。


「は?」

「いや、あれはこちらに断らせるためのものだと思っていた」


何故だか先ほどまでとは違い、穏やかな目をして話す辟方に、褒姒は戸惑いつつも本心を漏らした。


「まぁ、そういう意図があったことも否定しないけど」

「けど?」

「本気」

「そうか」


辟方はあっさりと頷いて納得した。

だが、あっさりと納得されるとは思ってみなかった褒姒は訳が分からず困惑する。


「それでいいわけ?」

「別にあの条件が付こうと問題ない」


何だか辟方に主導権を握られている気がする。それは面白くない。そう思った褒姒は、主導権を握るべく、取り敢えず怒らせようと挑発してみることにした。


わざと蔑むような目で辟方を見つめながら、少しだけ彼から距離を取る。


「はーん。変態だったんだ」

「は? 何でそうなる?!」


褒姒の思惑通りに喰いついて来た辟方に、にんまりと意地の悪い笑みを浮かべた。


「いや、だって“目隠し行為プレイ”が好きなんでしょ?」

「違う! 大体お前が付けた条件だろう! “性行為を行う際には目隠しをして行うこと”って!」


誤解を解こうと慌てて言い募る辟方の焦りように、褒姒は段々と楽しくなってくる。


「そこが気に入って婚姻に乗り気になったと父様に聞いたけど?」

「面白いとは言った。だがな、それは、そんなことを堂々と条件として突きつけてくる姫がいることが面白かったんだ。断じてそういう行為が好きなわけではない!」

「へー」

「お前! 信じてないだろう!」


褒姒は横を向いて適当に返事をした。そのおざなりな態度に、一向に誤解が解けない焦りがこうじた辟方は、身を乗り出し、彼女の肩を掴む。そして、無理矢理自分の方に彼女のたいを向けると低く重い声で一言告げた。


「聞け」


すみません。まだまだ続きます。


なんだか人が話し出すと簡単に暴走してくれるので困ってます。

暴走して、戻って、書き直してを繰り返して現在ぐるぐる回っています。

お陰で最初の予定と少しずつズレてきました。

まだ4話目なのに……orz


あ、性行為という言葉が出ましたが直接的な表現はしていないからいいか、ということでR15指定していません。

それは問題でしょ?! とか、不愉快です! と思った方がいたら一報いただけると嬉しいです。

私は少しズレているらしいので常識の基準がいまいち分かっていません。

皆様が頼りです。


ホントお願いします。

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