旅人と別れ道
世界には想像もつかないような人間たちがいる。
ジャングルの奥で全く他の人と関わらずに生きる人々や、砂漠のど真ん中でとてつもなく高度な技術を持つ人々、極寒の地で巨大な集落を作って生活している人々・・・。
旅をしている中で、私はあらゆる村や街を訪れ、人々と交流してきた。
噂に聞く「正直村」と「嘘つき村」は、意外にもなんてことのない森の奥にあった。
長い一本道を歩いていた。薄暗い森の中、砂利にまみれた細い道に開けた場所があると思うと、そこで道は二手に分かれていた。
「この先正直村」
「この先嘘つき村」
突き当たりには、どちらがどちらか分からない二つの看板があるだけだった。
「矢印が消えてしまったのだろうか?誰かのいたずらにしては、タチが悪すぎるな。」
しかし困った。二つの道はさらに深い森の奥へと続いているようである。もし道を間違えたら、戻るのは骨が折れそうだ。
ちょうどその時、右側の道から老人が歩いてきた。これはチャンスだ。今こそあの質問をする時である。
「すいません。あなたはこちらの道から来ましたか?」
老人が来た方向を指差して聞いてみる。
老人は苦笑いして答えた。
「ははは。わしもお主と同じ旅人じゃよ。正直村に行きたいなら、反対の道を行くといい。」
確かに、背中に明らかに大きな荷物を背負っているし、旅人というのは嘘ではないようだ。
「ありがとうございます。ですが、なぜわざわざ嘘つき村に?」
「なあに、少し興味があっただけさ。絶対に嘘をつく人間ってやつにね。」
なるほど一理ある。冷静に考えれば、嘘しか言えないなんて、とんでもなく不便である。嘘しか言わない人間たちがどうやって共同体を形成し、協力して生きているのか俄然興味が湧いてきた。
私は散々迷った挙句、好奇心からまずは嘘つき村に行ってみることにした。