↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウィルナの願い星ーSelf-centeredー 【破滅からの再生をもたらす円環の戦綺譚】  作者: 更科梓華
第零章 ~ 礎と意志 ~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/165

終始 伍

「ヨル爺」と皆から呼ばれる事が好きだった。辛いことが多すぎた。


そう呼んでくれる人が去るのを見続けてきた最年長はそれでも生き続けた。


長年生きたその人生は戦いそのもの、戦いの度体は壊れ続け悲鳴を上げた。


そして平均寿命の短すぎるこの村で、

最年長として皆の為、子供達を守る為、妻の笑顔を守る為、

常に最前線で死力を尽くし戦い続けた。


ヨービルが主に扱う土操魔法、これを戦用手段として用いる村人は今現在皆無、

理由は単純、様々な弱点を有し扱い難いからだ。


全ての魔術式構造は自然界に存在するマナを自身の魔力で練成、変成、操成、

三つに分類された工程を行うことで一つの魔法という行動になる。


矢を手に取り、弓に矢を番(つが)え、弦を引き絞り

漸く矢を放ち攻撃できるという一連の流れに似ているといえる。


土操魔法は他の魔法に比べ起動から発動後に至るまで速度が遅く当てにくい事、

魔法操作が難しく自身が硬直し無防備になる事など欠点が多く、

最大の弱点として土操魔法は、周囲の地面を操作する事が何よりの弱点となる。


発動時、発動地点の地面がうねり波打ち、低い攻撃速度である事も災いし、

周囲に目を向けない弱者以外、つまり強者には

テレフォンパンチとなり予測警戒され躱され易い。


罠を仕掛けても掛からなければ意味が無い。


それでもヨービルが土操魔法を高い次元まで使い続けた理由は、

子供達のためだった。


砂で色々な形を作り出し子供たちが学び喜び笑う、

そんな日常が憩いであり、更に良いものをと精進し続けた日々の研鑚。


発動準備時、大地の動きで予測警戒されるのならば、

認識されなければ良い。


『蟻の様に』


動物全ては動く物全てに敏感だ、

しかし動いた事に気が付かない程に極限まで抑え、

僅かすぎる動きで動き続けた場合、高確率で気が付かれない。


しかし極限まで速度を落とした腕立て伏せにも似た行為であり、

展開した罠、つまり弓で矢を引き絞り続けるという行為も重なり、

自身にかなりの負担と準備時間、魔力消費を強いる事となる。


「ワシの命はくれてやる、お前の命も置いゆけ」


残る黒獣一体に向け発する言葉と共に強い意思を込め、

更なる罠を配置すべく右足を大きく踏み出した。


魔物と呼ばれる四足の黒獣は、生まれた時から変わらぬ大きさ、今の姿、

この世界で目を開けた時から自身が強者である事を知っていた。


現在に至る長い時の中で同族他種とも争ったし、

目の前の種はただその血肉に宿る魔力を奪い補充する為の単なる餌に過ぎない。


ある日、同じ姿の同族同種と初めて出会い行動を共にしてきた。


行動を共にする日々で理解した。

こいつも強い、己より強いかもしれない、が知能が低い事を知った。


そして今現在、自身を過大評価し、敵と成り得る餌にも気が付かず、

傍若無人な行動その挙句、目の前の餌に返り討ちに合った。


無様な。


逃げた内一匹の餌が持つ大きな物から撃ち出された大きな棒が

体に食い込み多少痛む。

魔法も多少食らったが、それらの傷は行動に支障をきたす程では無い。


怒りが電流の如く体内を駆け巡る、

ここまで手傷を負わされたのは記憶に久しい、それ故確実に仕留める。


問題は如何に仕留めるかだ。

燃焼、爆発、二種の炎弾による効果は見て取れない。

餌は大きく広がり、炎弾でまとめて仕留める事が出来ない。


単純な爪や牙での攻撃という選択肢は無い。

餌の間合いに入れば土の牙が己を仕留める可能性がある。


同種を仕留めたあの種の魔法は見た事があった、

過去に見た土を操作した攻撃及び防御魔法である事は理解した。

過去のどれも警戒を怠らなければ回避、対処は楽なものだった。


しかし明確なる別種、発動場所の予測が不可能な事は勿論、

発動開始から直撃までの速度すら比肩するものを見た事が無い程の異常。


視界の奥に餌の集団が見える。こちらに向かって来ている。

流石にあれ全ての対処は更なる脅威出現の可能性含め今の状態では無理だ。


「ぐるうるるる」喉が鳴る。時間が少ない、攻撃手段は炎弾、となれば。


自身の魔力を高め今構築出来得る最大火力の爆炎弾を作り出し、

前方の餌から多少位置を離し地面に着弾させ爆発を引き起こす。


黒獣の視界内で最奥の餌が両手をこちらに向けている事を、

魔法の構築をしながら確認する。


「グゴォアァァ」という唸りと共に発動、

更に前方及び極端な左にジグザグ移動しながら連続して三発放つが、

此方が動き出すと同時に餌も動いた。


先程の威力こそ無いとはいえ、やはり爆炎の熱波と煙の中ですら、

こちらに魔法で反撃してくる。

が、爆炎とこちらが動く為、正確に狙えていない。


回避では無く、このまま攪乱を続け、目的地まで移動する。


最後に餌の集団中央付近に着弾させた時には、

最初に狙いを定めていた小さな棒を撃ち出していた餌、

そして、その餌共が凡(およ)そ重なって立つ目的地点、直線上に回り込んだ。


こいつだけ魔法攻撃は無い、小さな棒すら持っていない。被弾は無い。


餌を中心に置いた青い光は響く音と共に砕け散り、無抵抗に己を通過させた。

過去の経験から難なく通過出来る事は知っていた。


反撃を警戒しつつ飛び掛かり爪で薙ぎ払う。無力で目障りな。

渾身の爪に残る感覚と共に、何かが割れる音が響き渡り、

ガラスの様な破片が光に当てられ様々な角度で光を反射し、

空中に漂う赤い水泡を輝かせる。


やはり餌の同族周囲及び直線上で土の牙含め攻撃は無い。


餌は餌を巻き込む可能性のある魔法攻撃を使わない。

それにあの餌、強力な土の牙を創り出す魔力が尽きた可能性もある。


一匹仕留めた。残り四匹。次。


反撃から逃れるため即座に距離を取り爆炎弾を適当に撃ち込む。


先程仕留めたやつもだったが、己が炎弾を撃つ度、

全員が自身を中心に置いた青い球状の魔法で身を守っている。


二匹増えてからだ、厄介だ。だが餌は殆ど移動しない。なぜだ。


「ぐるるうるるる」また喉が鳴る。餌の分際で。


餌の周囲に近づきたくは無いが仕方がない。来ると分かれば回避は出来る。


移動と爆炎弾を更に一発撃ち、先程やられた同種の近くまで来た。


自身が森側、やられた同種まで多少の距離、更に奥に餌の巣の集合が見え、

こちらに来る餌の集団が近い。


体を固定し燃焼弾を連続発動、自身の右前方、

近い距離で纏まっている二匹の餌に集中して撃つ。


今の時点で土の牙による反撃は無い、範囲は限られているのか。

全てが他の魔法、手数も少ない、魔力が尽きたか。多少の被弾は辞さない。


数弾被弾し考えを改める、流石に止まると反撃が痛い、

これ以上の体力低下は逃走の機会すら逃す可能性が高い。

たまらず右へと回避移動を開始するも炎熱魔法は執拗に発動し続ける。


青く輝く亀甲形の魔法の壁に阻まれる為、囮として餌ども中心に爆炎魔法を着弾、

今度は左に移動しながら継続して右二体を炎熱魔法で攻め続ける。


そろそろか。


魔法の効果は終了すると消える。しかしその余波と影響は自然界に残り続ける。


人体を炭化させる程の高温で周囲を、

周囲の草花大地が火に揺らぐ程、空気を熱せられ続けた二人は終に倒れた。


単純な文字道理の火力押し、

餌がマズくなるから炎熱魔法は嫌いだが仕方がない。


これで後二匹、魔力が少ない、体力もだ。接近するか。

先程と同じ位置、同種の倒れた場所へと警戒しながら足を進める。


同種に接近する真際まで近づいた直後、

土の牙が二本、背後左右から狙ってきたが予測はしていた。


これを躱して正面のやつに喰らい付く!


「でぇいりゃああああああ!!!」

誘導出来なかった。護れなかった。悲しみを貫く雄叫び。


「グガアアアァァ・・・」

一体何がどうなっている。現状が把握出来ない。不安を体現した雄叫び。


今この正面で吠えている餌だ、攻撃の手数がやけに少ない筈だ!!!。


多少の右前方に躱した後、同種のやつと自身が落下している事に気が付いた。


現着後、構築し囮として発動待機させていた最後の二本の鋭尖形土柱。


踏み出した大きな一歩で発動展開させた唯一の罠。


ヨービル正面、かなりの広範囲が瞬時に4メートル程陥没し

巨大な落とし穴が形成されていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。