表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/6

4日目

「けんちゃん!けんちゃん!」


 耳元で大きな声がした。うるさい。俺はアロワナさんと一緒にずっとこうしていたいんだ……ん?けんちゃん?……俺のことをそう呼ぶのは、俺の母ちゃんくらいだ……けど……


「けんちゃん!」

「はっ」


 目が覚めちまった。

 くっそ。


「よかった。けんちゃん、目が覚めてよかった」


 泣いてる母ちゃんに、今、とても申し訳ないことを思ってしまった。


 ここは、病院か。

 匂いで分かる。


 体が重くて、だるくて、しゃべる気にもならない。

 水槽の中の方が気持ちがよかったな……って、またしても。ごめん。母ちゃん。


「みっちゃんも動いた!」


 隣のおばちゃんの声がした。

 よくも、俺たちを風呂に入れようとしたな!あんなことして、ただで済むと思うな……よ?……みっちゃん……も……?


 深月も倒れてたのか?

 あぁ、だから、おばちゃんがエサやってくれたのか。マジで、センス無い。下手過ぎ。


「先生を呼んできましょう」


 看護師さんが来て、それから先生が何人も来て、検査して、また検査して、重だるい体を引きずって、ようやく解放された。


 俺と深月は同じ部屋で入院させられていた。


「深月、記憶あるか?」

「いや、あんまり」

「だよな」


 俺は眠った。




 ◇◇◇





 奇跡的に異常はなく、骨も折れてないし、俺たちは即日退院が決まった。

 母ちゃんたちが荷物をまとめてくれて、タクシーに乗って4人で帰った。


 果穂だけ、病院に残して……


「すみませんが、深月をお願いします」


 おばちゃんは、果穂の着替えを持って、病院にとんぼ返りをした。


「ちょっと、部屋に戻ります」


 深月がペコっと頭を下げた。


「俺も行っていいか?」


 水槽が気になってしまった。


「なんで?」

「ほら、倒れるといけないから、俺もついてった方がいいよな?母ちゃん」

「そうね、すぐに戻って来てね」


 深月の部屋は久しぶりに入る。

 俺が中学生の頃までは、よく一緒に遊んだ。

 と言うか、速く走る方法とか、かっこよく跳ぶ方法とかを一緒に研究した。

 俺が高1になったら、中1になった深月と話が合わなくなってきたんだよな。

 中高一貫校で校舎は違ったけど、陸上部の練習は合同だったのに……

 まるで次元が違く感じて、深月はそれでもいい記録出してたけど……

 なんか、俺、一緒に居ると自分がカッコ悪く見えちゃう気がして……


「ああっ!」


 深月が大きな声を出した。


「どした?」

「死んでる」


 青いグッピーが一匹、死んでた。

 お腹のあたりの鱗に傷があった。


「ごめん」


 俺は小さな声で謝った。




 ◇◇◇




 青いグッピーは庭に埋葬して、俺んちに戻ったら、果穂の目が覚めたと連絡があった。

 俺はちょっと不安になった。


 実は、果穂のお腹には黒子がある。

 アロワナさんと同じところなんだ。

 アロワナさんは、死んでないよな。

 果穂がアロワナさん……なわけないよな。


「深月、水槽の電気落としたか?」

「あ、忘れたかも」

「消しに行って来いよ」


 一緒に行ってやるって言う勇気がなかった。

 アロワナさんに万が一のことがあれば、俺はどうかしてしまう。


「どうだった?」


 電気を消して帰ってきた深月に聞いた。


「どうって?」

「いや、何でもない」


 異変がなくてホッとした。


 おばちゃんは、果穂が退院するまで一緒にいる事になり、その日、深月は俺んちに泊まった。




ブックマークと【☆☆☆☆☆】にマークを付けていただけますようお願いします。


お読みいただき、どうもありがとうございました!

あお

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ