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3日目

「アロワナさん、おはよう」

「おはよう、青いグッピーさん」


 俺はアロワナさんとお近づきになれた。


「青いグッピーは他にもいるけど……」


 この水槽で一番数が多いのはグッピーだ。


「俺は昨日、水槽から飛び出したグッピーだって、分かる?」

「ええ。ネオンタキシードというグッピー」

「ネオンタキシード?!そっちの方がかっこいいな」

「じゃあ、ネオンタキシードさんって呼ぶ?」

「はい!そうしてください!」


 アロワナさんは話しやすくて、大好きだ。

 優雅で美しい姿も好きだけど、穏やかな性格とキャピキャピしてない感じがいい。


「あの髭の長い魚はエンゼルフィッシュ」

「ああ、なんか、既に嫌われてるみたいなんだ」

「そんなこと無いと思うけど」

「いや、もういきなり『ぷいっ』ってされたんだ」

「え……」


 アロワナさんは少し驚いていた。


「あの赤い尻尾の金魚みたいな魚はなんて言うの?」

「トラディショナル・ベタ」

「そっか、あの子にも嫌われちゃったんだ」

「何したの?」

「金魚って、言っちゃったんだ」

「あ……」


 アロワナさんは少し「残念」みたいな顔をした。


 こういうところが好きなんだ。

 いちいち大きなリアクションとか無くて、静かに受け止めてくれる感じって言うのかな。

 安心して話せるし、ずっとしゃべっていられるよな。


「アロワナさんは、種類とかあるの?」

「シルバーアロワナという種類よ」

「見たまんまだ。もっと、なんかこう……『天女』とかがいいんじゃない?」

「て、んにょ……なにそれ、恥ずかしいんですけど」

「恥ずかしがることはないよ、本当にそんな感じだ。すごく綺麗だから」

「すぐそうやって、おだてるの?チャラいからやめた方がいいと思う」


 そんなぁ。


 勇気を出して、本当のことを言ったのに「チャラい」認定をされてしまった。

 物静かで、凛としたアロワナさんには受け入れてもらえなかった……しょんぼり


「でも、俺はアロワナさんのこと『天女さん』って呼んでもいい?」

「え!嫌だ、だめ」

「ちぇっ」




 ◇◇◇





 他の熱帯魚たちとも仲良くなってきた。


「アロワナさんに近付くなんて勇気あるね」

「エンゼルフィッシュさんは食べられなさそうだから、大丈夫じゃない?」

「大丈夫とかじゃなくて、なんか怖くない?」

「いや……」


 怖い?どこがだ?

 綺麗じゃないか?

 綺麗すぎて怖い?


 なら、分かる!


「ほら、食事が始まった」


 熱帯魚は皆、底の方に泳いでいった。


 水面に何かが落ちてきた。


 一瞬の出来事だった。


 黒い動く物体が水面から水中に沈んだ。


 アロワナさんは瞬く間にそれを口に入れた。


「ひゃっ」


 どこからか悲鳴が聞こえた。


 その黒い物体はポイポイと水槽に入れられ、アロワナさんはパクパクと残さず食べた。


 アロワナさんのお食事が終わったら、俺たちの番だった。


 多くの熱帯魚が水面でパクパクと口を開けた。


 一日一回のチャンスだから、もちろん俺も。


 もっと食べれるんだけど、エサはあっという間になくなってしまった。


 熱帯魚の食事は一瞬だな……


 また、アロワナさんのところへ……


「ねえ、アロワナさんは何を食べてたの?」

「コウロギ」

「虫の?」

「うん」

「へぇ」


 あの黒いのコウロギだったのか。


「気持ち悪い?」

「いや、驚いたって言うか、アロワナさん肉食なんだね」

「まあね」


 これだけ大きいし、俺だって人間界では肉食なわけだし、不思議じゃないか。


「食べてる姿もかっこよかった!」

「はあ?!かっこいいとか、やめて欲しいんだけど」

「恥ずかしい?照れてるアロワナさんも可愛い」

「可愛いとか……」

「チャラい?」


 アロワナさんをからかうのは面白い。


 けど、別に嘘をついてる訳じゃない。


 アロワナさんは、かっこよくて、可愛くて、綺麗で美しい。


 もう、こうしてこのまま熱帯魚でもいいやって思えてくる。


 大変なこととかまるでないし、泳いでるか寝るか食べるか。


 そんなシンプルな生活に、不満なんて微塵も見つからない。


 マジで、アロワナさんを見てるだけで、充分、幸せだしな。


 水槽の電気が落とされて、暗くなった。


「夜か……アロワナさん、一緒に寝ましょう」


 俺とアロワナさんは、頭をぼーっとさせて一緒に泳いだ。




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お読みいただき、どうもありがとうございました!

あお

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