0話 トンネル
「うわぁ……ガチ雰囲気あるわ〜」
「これほんとに大丈夫なやつだろうか?」
友達、達也と酔いのノリで心霊スポットに行くと約束した。でかいトンネル。特にでかい噂がある訳では無いが、それの方がいいだろう、となり名もない謎のトンネルに行くことになった。
そして今に至る。
車のライトだけを頼りに走っていた。
「てか、このトンネルマジ長くね?」
達也はマジなといかにもギャルが使いそうな言葉を病的に使う。当の本人も自覚ないらしい。24才平社員が、と思いながらも達也が不安な一言を口から出した。
「ヤバいかも、ライトだけマジ光らん、、エンジンは行けんだけど」
「…嘘だろ」
「ヤバい俺の車マジ懐中電灯ないわ」
「残念ながら僕もさっきのサービスエリアのトイレに忘れたらしい」
「……なぁリース、マジ究極の二択。来た道戻るか先進むか、どっちに行く?」
「そんなの来た道戻るしかないだろう?」
「俺マジ先進みたい」
「ていうかこれ確実に戻れるのだろうか??」
「さぁな、それこそマジ千と○尋みたいに謎の世界行くかもな」
「戻れるのならばいいのだけれども、、」
「ま、大丈夫だろ」
今までにないほど片目ウインクして手をグッドの形にしているのだろうと分かる声音。見えないから確認する術もないが。
「なぁ、手繋がね?マジ怖いんですけど」
「おぉ、熱いプロポーズかな?」
とか言いつつも手を繋いだ。
平常時より少し冷たい、やはり怖いのだろうか。
「てかさ、気になんだけどリース、いやリリスってマジなんで固まった口調なん?」
「分かるだろ、俺は10歳までカナダにいたんだ。日本語の会話文なんて全て覚えた上それで話すだなんて何年かかるんだか、、」
「マジウケ」
「これ本当にウケているのだろうか?」
ごやごや話していると、小さながらもやっと光らしき物が見えた。
「もうすぐ出られるぞ、、!!」
「ヤバ、もしかして歩きすぎて結構時間かかってる系??明日、いや今日?も、普通に仕事案だけど」
そんな時にこんな事を間違えてもするんじゃない。
気力を持ちつつも少し早歩きでそこの光へと目指していく。
「……?!」
右足を地面に置こうとした瞬間、急に地面であった場所へと落ちていく。
「ひび割れ?!マジかよこんな時に」
まともに整備されていなかったんだろうと思うのもつかの間、どうしなければならないか、沢山の考えが脳裏によぎる、全て非現実的なものだが。
確実な死。
それだけが頭を埋めつくした。
既に足着地したらワンチャン着くかも、という愚かな考えをするレベルでは無い、長さを測れるような職人でなくとも直ぐに分かった。
「ぐっ…!」
2人の悲鳴は、2人の意識と共に直ぐに消えていった。