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TS.シスターは彼なのか?  作者: コーヒー微糖派
1節目:新たな生
7/44

1-5.時が経ち、混迷が蘇って

「よりもよって、こんなタイミングで……!? こっちもこっちで大変だってのに……!?」

「ボークヘッド一派……だって?」


 やたらと厳つい衣装を身に纏い、乱暴に周囲へ声を荒げる集団――ボークヘッド一派。ご丁寧に自己紹介まで備えてくれる。

 残されたわずかな領民もその姿と声で委縮してしまい、隣にいるウィネもわずかに後ずさりしている。


「……成程。所謂『ギャング』の連中か。俺がいた頃に片っ端から潰したはずなんだがな」

「アンタがいなくなったことで、縛ってた鎖が解かれたってところかね。こういう御上の手が届かない地には、ああいう輩がのさばり始めちゃってんだよ。ボークヘッド一派なんて、この辺を勝手に縄張り扱いさ」

「人様がいなくなったのをいいことに、勝手な真似をしやがって……!」


 ギャングなんて久々に見る。俺が死んでた2年間を省いても久々だ。

 思い返せば、昔のブレイルタクト領はギャングが幅を利かせていて、治安の『チ』の字さえなかったな。群れて好き放題に暴れるせいで、領地としての評判なんてあったものじゃない。


 だからこそ、俺も領主補佐として率先して動いた。

 警察組織を強固に再編し、一般市民の安全を第一とするように法も改正。戦力が足りなかった初期などは、俺自身も前線に出て成敗していたもんだ。

 おかげで次々にギャング組織は解体。無論、再発防止のために溢れた連中には就職先も用意してやった。

 商工街こそがその台頭でもあったし、連中も苦労はしつつもおとなしく生活できるようにはなっていた。なのに、またこうして荒事を起こしてるってことか。


 ――本当に俺のやったことが全部無駄にされて腹が立つ。


「お? こっちの嬢ちゃん、可愛くねえか?」

「や、やめてほしいし! アーシ、あんたらみたいなのに関わりたくないし!」

「そう固いこと言うなっての。俺らはボークヘッド一派だぜ? ……逆らったらどうなるか分かんだろ? おぉう?」


 こちらには目もくれず、集団が標的に狙ったのは近くにいた黒髪の女の子だ。まだ学生の年代に見えるのに、いい大人が本当に節操のない。

 まさに俺がいた頃からは想像もできない光景である。ただ、もっと予想外だったのは周囲の反応か。


「セレンちゃん、おとなしくしてればいいのに……」

「気の強さが仇となったか……」

「我々ではどうしようも……」


 わずかに見える領民にも、ボークエッド一派の狼藉は見えてはいる。だが、すぐさま目を逸らして見ぬフリだ。

 生気のない表情のまま、腕を引かれる少女のことなど他人事。俺が知る領民はこんなに白状ではなかったはずだ。

 警察なんてものもここにはいない。このままだと、あの黒髪少女はギャングになされるがままだろう。




「……おい、カスギャングども、その子から手を放せ。嫌がってんのが見えねえのか?」

「えっ!? ちょっ!? ノ、ノア――じゃなくて、リース!?」




 もう我慢できない。俺はこの光景を前にして黙ってられるような男じゃない。

 後ろからするウィネの声にも振り向かず、ボークヘッド一派にズケズケと突っ込んでいく。

 見た目が(リース)だろうと関係ない。心は(ノア)だ。


「あぁん? 誰かと思えば、こんなところにわざわざ居座ってる陰気シスターさんだったか? てめえはお呼びじゃねえんだよ」

「そうか? 俺はこのシスターさん、結構タイプなんだが? ミステリアスで魅力的だし、顔立ちもそこそこ美人だろ?」

「今日はやけに目が釣り上がってんな? 美人が台無しってより、妙にそそるものがあるな……!」


 向こうも俺に気付いて振り返れば、まさしくもっての言いたい放題。一部は下卑た表情すら浮かべてくる。

 正直、俺もこのリースってシスターについてはタイプじゃない。もう少し豊満な女の方がタイプだ。好みについては分かり合えない。

 まあ、好み以前に分かり合える相手でもないか。向こうも挑発は交えつつ、剣に棍棒といった武器を手に取って威嚇してくる。


「そんな物騒なモンを振り回すんじゃねえよ。だからモテねえんだよ。女の相手をする時は、まず悪意がねえことをアピールして――」

「さっきからやかましいぞ!? この陰気シスターがぁ!」

「な、なんだか、いつもと雰囲気が違うな?」

「違っていようが、所詮は雑魚に過ぎねえだろ! だったら、てめえに俺らの相手をしてもらおうかぁあ!!」


 ちょいとした恋愛レクチャーを加えても、聞く耳持たずで武器を振りかぶってくる。まあ、俺もぶっちゃけ挑発のつもりで口にはした。

 周りの人間が誰も相手をしないのならば、俺が相手をするしかないだろう。襲われる女を見捨てていては、ノア・ブレイルタクトの名に傷がつく。

 向こうからこっちを襲ってくれるなら好都合だ。すでに修道服の袖口に隠した武器も準備はできている。



 ――ピンッ!



「んぐっ!? な、なんだ!?」

「か、体が……急に動かなく……!?」


 俺が左手を軽くかざせば、襲い来る暴漢ギャングどもの動きも止まる。ウィネにやった時と同じ要領だ。

 こいつらは俺を『リース・ホーリーアローという陰気なシスター』だと思ったらしいが今は違う。この管轄の繰糸(アドミニストリング)は俺だから扱える。


 ――それ即ち、ここにいるのが『ギャングも潰せるノア・ブレイルタクト』ということだ。




「テメェらみてえのなんざ、左手一本でも止めるに困らねえ。……ちょいと昔みてえにやらせてもらおうか」

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