表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TS.シスターは彼なのか?  作者: コーヒー微糖派
5節目:再び堕ちた者達
40/44

5-5.ぎこちなき、新たな来訪

 カスター達との交渉も終えて早数日。居住区ではいつも通りの日々が続いている。

 ボークヘッド一派の襲撃もない。この点はカスター達が引き続き上手くやってくれているのだろう。


「シスター・リース。何やら先程から外を気にされてますが、何かあるのですか?」

「最近はボークヘッド一派もおとなしいですし、少し休んでいてもよろしいのでは?」

「『今はおとなしい』で警戒を緩めるのも考え物ですが、今回は別件です。……おそらく、もうじき訪れるはずです」

「誰か来るんですかね? こんな場所に?」


 そんな俺は相変わらず入口で警備を担っている。人員問題は相変わらずといえ。カスター達の思惑を知ったら気も楽だ。

 リースとして振り舞いつつも、待つのはカスター達といった旧自警団の面々。あれから時間も経っているし、そろそろ姿を見せてもいい頃合いか。




「ッ!? シ、シスター・リース!? あいつら……ボークヘッド一派ですよ!?」

「しかも、かつて自警団をやってた連中か!? これまでは全然出てこなかったのに!?」


「……やっぱ、歓迎ムードとはいかないッスね」




 そう考えているとやって来る当人達。住人達も知り合いだけあってすぐに見破り、辺りにどよめきが走る。

 それはそうだろう。連中も今はギャングでボークヘッド一派の下っ端。恐れられるのは当然だ。

 カスター達も理解してやって来たからこそ、苦い顔をしてバツが悪そうにしている。


「ご安心を。皆様はここでお待ちください。……カスター様に皆様方。ようこそお越しくださいました」

「シ、シスターさん……どもッス。今日は穏やかッスね? なんだか、やりにくいッス」

「ああなるのはスイッチが入っている時だけですので。それより、覚悟は決まっておりますか?」

「き、決まってはいるッス。でも、やっぱり身に刺さるものがあるッスね……」


 最初については俺も出よう。流石に流れも何もなさすぎる。

 カスターとしてはノアとしての側面が色濃く残っているようだが、正体にまでは気付いていない。

 気になっているのは対応面の方。こういう男にはリースとしての穏やかさは性に合わないのかもな。

 とはいえ、ここは一般住人の集う居住区。『スイッチが入るとああなる』なんて誤魔化しも多用できないとはいえ、それぐらいしか手立てもない。


「なんでまたあいつらがここに……!?」

「まさか、シスター・リースを脅して……!?」

「手出ししたら、ただじゃおかないぞ……!」


 住人の反応についてだが、まあ当然と言うべきか。受け入れる様子など微塵もない。

 陰で嫌味を言っているものの、これについては咎めるのも無粋。実際、そう思われても仕方ないだけの土壌がある。

 カスター達も覚悟をしてやって来たからか、反論もせずに黙ってうつむくのみ。まさに方々敵だらけの四面楚歌か。


「まあ! カスターさんに皆様方! よくぞお越しくださいました! ささっ。こちらへどうぞ」

「アーシも話は聞いてたけど、本当にカスター達が来たし。まあ、お母さんやシスター・リースの言葉なら信じるし。今は立場とかも関係なくどうぞだし」

「あ……あざッス!」


 それでも、カスターに味方する人間もゼロではない。この場に招待したユリーさんは笑顔で案内を始める。

 娘のセレンちゃんも事情は理解し、母親と一緒になっての行動。ボークヘッド一派とのいざこざについても、今は胸の内に留めてくれるようだ。


「ステルファスト親子がカスター達を案内って……た、確かに昔はよく見た光家だがよ? 大丈夫なのか?」

「もし万が一何かあっても、私の方で対応いたします。ご安心ください」

「シ、シスター・リースが一緒なら大丈夫ですよね……」

「てか、この集落で最強なのがいまだにシスター・リースってのも、どうなんだろうなぁ……?」


 住人達が不安そうに見守りつつも、俺というブレーキ役だっている。納得までは行かないが、妥協はしてくれたようだ。

 まあ、ユリーさんの人柄もあるからこそ、強い反対も出ないのだろう。

 流石は元会長夫人。カスター達のような荒くれも惹きつける母性には感服する。


「な、なんか……ムズムズするって言うんスかね?」

「細かいことを気にしていては始まりません。どうぞこちらへ」

「……シスターさんの態度が一番ムズムズするッス。俺達、あんたに手も足も出なかったんスよね?」


 俺も一緒にしばしの休息といこう。カスターから妙な言葉も飛び出すが、無視できるものは無視だ。

 まあ、俺もぶっちゃけ素の方が喋りやすいんだがな。内心、カスター達の流儀の方が俺には合ってる。

 でも、そう簡単には見せられないんだよな。今日はウィネもいないから、グチグチ言われることもないと言いたいが――




「……ねえ、ノアさん。やっぱり、カスター達とはひと悶着あったし? やっぱり素を見せてたし? ……私としてた話、物の見事に嘘だったし?」

「理解してもらえるんだったら、胸の内にしまっといてくれ。ぶっちゃけ、予想はできてただろ?」

「……ぶっちゃけ。でも、控えた方がいいと思うし」




 ――横でコソコソとセレンちゃんの忠告が入ってくるんだよな。これが。

 言いたいことは分かるんだよ。素になってる時が一番『ノアっぽい』状態だし。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ