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TS.シスターは彼なのか?  作者: コーヒー微糖派
4節目:上に立つ下の者
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4-4.進む発展、望める未来

 ウィネに用意してもらったのは、ここ一帯の情報を確認できる掲示板だ。ただし、普通に張り紙を張るようなものじゃない。

 ビジョンという空中に画面を映し出すシステムをベースにしており、表示される情報は随時更新される。

 情報は金だ。素早く知れるからこそ、次に動く判断も的確となる。


「こうやって画面に触れれば、個人として情報を記入することもできるさね。まあ、メインは今の街の状況を表示することだけど」

「必要な物資の在庫数を始め、随時機能は更新していく予定です。皆様の交流の場として使っていただいても構いませんし、まずは実際に体験してみてくださいませ」

「おお!? これは確かに便利だな!」

「こんなものまで用意してもらえるだなんて、こっちもますます頑張らないとな!」


 本当は全員にマフォンを普及させればよかったんだがな。それはそれでウィネの負担が大きい。『小さいものを数作る方が難しいのよ』とのこと。

 それでも、こっちのビジョン掲示板だからこそできることだってある。大きな画面だから情報の掲載にも最適だ。

 一台しかないとはいえ、そこも考えようだ。人々が集える場があれば、自然と交流の輪も広がるだろう。


「マフォンをチマチマ作るより簡単とはいえ、情報更新のシステムも結構苦労したもんさね」

「まあ、オメエのことだから、不完全なものを出したりはしねえだろうよ」

「そこはモチのロンで。術式(プログラム)に不備はないさ。今もチェックしてるしね」

「へへっ、流石だぜ。ありがとよ」


 現状寂れたこの地に適したように組んでくれたウィネに感謝しよう。こいつがいてくれるおかげで、手の届かない技術面も埋め合わせられる。

 今も左腕につけた専用腕時計から別でビジョンを映し、右手で操作してチェックしてくれている。ブレイルタクト領どころか、王国内でもこれほど熱心で有能な錬工師(エンジニア)はいないだろう。


 こいつも俺と繋がっていたことで立場さえ追われなければ、今でも一線で活躍できる人間なんだ。

 叶うならば、全てが終わった後に表舞台へ復帰することを願う。それまでは頼らせてもらいたい。


「とりあえず、ここでできることはここまでか。俺も一息入れさせてもうぜ」

「で、お約束のタバコで一服ね。もうアタシも慣れて来たけど、できるだけ自宅で吸いなよ? 噂の聖女様のイメージがあったもんじゃないし」

「俺は聖女じゃねえっての。そういうのはウィネがやれよ。胸もデケえし」

「……聖女って、胸の大きさで判断するもんなの? アタシだから流せるけど、そういう話は他所でしないでよね? セレンちゃんみたいな子には特に」

「分かってるっての。丁度今から会いに行くわけだし、また気持ちも切り替えねえとな」


 用件を一つ終え、タバコを吸いながらしばしの休憩。ついついセクハラ発言を飛び出させてしまうが、ウィネとの間柄だから通用することは重々承知だ。

 正直、今はこの距離感が心地よい。リースに転生してから、俺の真相を受け入れてくれる人間なんてウィネしかいない。

 今更ながら、過去に破局済みであることが残念にも思えてくる。もっと長く付き合っておくべきだったか。3日は短すぎた。

 まあ、過去のお付き合いなんてのは悔やむより水に流そう。もっと先を見るべき若い世代だっている。




「フゥー……よし。ユリーさんにセレンさん、リースとウィネです。失礼いたします」

「お待ちしておりました。どうぞお入りくださいませ」




 タバコも終えてやって来たのは一件の小屋。現在はステルファスト親子の住宅となっている。

 リースの声色に戻して挨拶すれば、ユリーさんも笑顔で迎え入れてくれる。


「他にお仕事もあるのに、いつもいつもすみません」

「お気遣いなさらずに。私も好きでやっておりますので」

「こっちはこっちでアタシも気になるし、どんな感じになってるのかね」


 ウィネと共にお邪魔して、奥にある小さな部屋へ。今回ここに来た目的はユリーさんに会うためではない。

 目的の人物は今も俺の言ったことを守り、熱心に机へと向かっている。


「あっ! シスター・リース! 今日も来てくれたんだし! ウィネさんも一緒だし!」

「お勉強の方は順調でしょうか?」

「うん! もらった宿題も今できたとこだし!」


 セレンちゃんがやっているのはちょっとした勉強だ。教育も社会を形作る重要な鍵だからな。

 本来ならば教会が学校の役目を担い、セレンちゃんの世代の子に勉強を教えている。リースの自宅に教科書があったのもそのためだ。

 だが埃を被っていたことからも、ここではまともな教育など展開されていない。そんな余裕などなかったのだろう。

 ならば、そこも俺の方で担わせてもらおう。セレンちゃんもやる気を見せてくれるし、簡単な教師の真似事なら俺もできる。


「ほうほう。アタシも学生時代を思い出すね。今はどんな感じなのかな?」

「シスター・リースからの課題はほとんどできるようになったし。できれば、ウィネさんにも錬工師(エンジニア)の知識とか教えてもらいたいし」

「ニシシ~。勉強熱心でよろしいこったね。だけど、錬工師(エンジニア)の学問は基礎ができてからさ。学生レベルとは全然違っ……て……?」


 そのおかげなのか、セレンちゃんの成長速度は凄まじい。いや『凄まじい』なんて言葉で終わらせるのももったいない。

 俺が与えていた課題のノートを見れば、ウィネの目もこれ以上にないほど丸くなる。『目が点になる』をここまで体現した姿も他にはないだろう。

 だが、そんなウィネに『マヌケ面』などとツッコミを入れられたものでもない。俺だって最初は同じようになってた。




「ね、ねえ……リース。い、今のセレンちゃんって……どれぐらいのレベル?」

「ブレイルタクト領どころか、王国直下の教育機関でも上位に位置するレベルですね」




 セレンちゃん、メチャクチャ勉強が出来過ぎる。

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