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TS.シスターは彼なのか?  作者: コーヒー微糖派
4節目:上に立つ下の者
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4-3.人前に立つ姿、聖女の如し

「オミャーは確か……この辺に住んでるシスターだったかニャ?」

「リース・ホーリーアローと申します。今後は私が窓口となりますので、以後お見知りおきを。ニャンシー・ショートミケ様にワンソン・ウルフトリバー様」

「わざわざワン達の名前も確認しての対応か。様子を見ても、窓口となったのは事実か。よろしく頼む」


 これまでリースが表に出ることなどなかったからか、行商人二人の反応も初手はやや警戒。それでもこちらが丁寧に頭を下げれば、素直に受け入れてくれる。

 猫顔女の方がニャンシーで、犬顔男の方がワンソンか。何と言うか、非情に覚えやすい。

 とりあえず、リースとしての接し方をしていれば大丈夫だろう。表裏関係なく、交渉事に開幕いがみ合いなんてすることはない。


「まあ、別に窓口なんて誰でもいいニャ。ニャーもお仕事、お仕事っと」

「リースさんも説明は受けてるだろうが、ワン達は金銭ではなく物品で取引をしている。そちらに交換できるものはあるか?」

「まだ多くはありませんが、こちらに用意してあります。ご確認ください」


 この二人にしても、わざわざこんな場所に来る闇商人だ。裏があると考えて進めた方がいい。

 形式については物々交換。俺も住人から話を聞き、流れについてはシミュレーションもしておいた。

 まずはこちらが用意した耗砂(セルミック)を差し出し、二人に鑑定をお願いしてみる。


「おぉ!? なんだか、普段よりも多いニャ!?」

「少々、算段が見えてきたものでして。河川の恵みがある限り、継続的な採取も可能でしょう」

「ほう。それはワンも期待だ。ニャンシー、金銭換算での鑑定を頼む」

「ガッテンニャ!」


 今後も期待できるとなれば、行商人コンビの機嫌も良くなる。まあ、今はこれでいい。

 問題なのはここからだ。俺も事前に聞いた話から察するに、この二人は見た目以上の食わせ物だ。


「……よし! 金銭価値にして、10万ルードで――」

「違います。30万ルードです」

「ニャァ!? な、何を言ってるニャ!? 3倍の値段なんて、ボッタクリニャ!?」

「それはこちらのセリフでしょう。量と質を考えれば、30万ルード分の価値はあるはずです」


 まあ、こいつらも裏ルートを持つ闇商人だ。ボッタクリも平然としてくる。

 提示された金額は相場より大幅に低い。この2年で耗砂(セルミック)の価格にそれほど変化がないのも調査済みだ。

 会長もいなくなったせいで、交渉事が上手く行ってなかったという予測の通りか。耗砂(セルミック)という交渉材料がありながら、まともな生活ができていなかったわけだ。


「30万ルードはいくらなんでも多すぎるニャ! せめて12万ルードニャ!」

「いいえ。せめてならば、28万ルードで」

「ニャググ……! 15万ルード!」

「25万ルード」

「に……20万ルードニャ! これ以上の値はつけられないニャ!」

「かしこまりました。私もそこで納得しましょう」


 ニャンシーとの価格交渉も始まり、最終的には20万ルードで確定。まあ、上出来ってところか。

 もっと高値で売れればよかったが、流石に欲を出し過ぎて二人とのルートが途切れることは避けたい。そもそもの価値も17万ルード程で、さり気なくサバ読んでたのもバレたくないし。


「交換する品は干し肉といった日持ちする食料に、医療品の一式に――少し余るようなので、酒類もいただきましょうか」

「分かった。どうにも、あんた相手にちょろまかしは無理なようだ。どうせ他の値段も把握してるだろう」

「ご理解いただけたのならば、こちらを信じさせてほしいものです。今後良い関係を築くためにもなりますので」


 価格的価値が決まれば、値段相応の物々交換へ。一応は目を光らせるものの、ワンソンは観念したように素直な対応をしてくれる。

 優先するのは現状の確保が難しいもの。その中でも優先度の高いものを列挙していき、余った分でちょっとしたお楽しみも購入しておく。

 いつも仕事で疲れているだろうし、息抜きだって必要だ。こういう気遣いも大事ってな。


「おお……! シスター・リースが購入できた分って、いつもの何倍だ?」

「水路の確保といい、物資の調達といい、ただ方々を巡って手にした知識とは思えないな」

「もしかすると、他所で聖女様だったとか?」

「いいな、それ! 聖女リース様だ!」


 流石にこういった手腕を見せつけると、住人達も羨望の眼差しを向けてくる。まあ、これぐらいを頼るのは許容範囲だ。大目に見よう。

 だが『聖女』はやめろ。体は女でも、心はれっきとして男なんだ。言われただけでゾッとする。

 リースも元々は地味な女でしかないし、聖女なんてガラは全然似合わない。流石にそれはないと言い切れる。


「皆様。私のことでアレコレ申す暇があるならば、しっかり休んで作業にお戻りください。購入したお酒も振る舞いませんよ?」

「わ、分かってますって。シスター・リース、たまに怖いところもあるんだよな……」

「まあ、言ってることはもっともだがよ」

「それに酒の楽しみがあれば、活力も漲って来る。もう少し頑張ろうぜ」


 ちょっとした冗談に対して俺が目を細めれば、住人達も素直に従ってくれる。少しずつではあるが、信頼関係も芽生えてきたか。

 こっちも体に馴染んできたのか、リースのままでノアのような態度もできてきた。成長が必要なのはお互い様であろう。


「さて、こちらもこちらでやることがありますね。ウィネ、お願いしていたものの公開をお願いします」

「ほいさっさ。ようやくアタシの出番さね」

「ん? ウィネさんが何か作ってくれたんですか?」


 そして、もう一人信頼できる人間がいる。俺にも住人達にもできない分野において、類まれなる才を持つ魔女様だ。

 声をかければ、待っていましたとばかりに土台型の装置をいじり始める。普段目にすることがないものなので、住人達もついつい興味が行ってしまうようだ。


 この装置は俺もかつて導入を検討し、成功すれば情報共有の面で大きな成果も期待できていた。情報は成長のために必要な礎となるだろう。

 ウィネの錬工師(エンジニア)としてのスキルの見せ場だな。オーダー通りの仕上がりになっているかどうか。



 ブオォン



「うおっ!? な、なんだ!? 空中に浮かぶ巨大なマフォンのような画面――いや、掲示板か!?」

「フッフーン。これぞ、アタシ特製の汎用錬術具(アーツファクト)――ビジョン掲示板さね!」

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