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TS.シスターは彼なのか?  作者: コーヒー微糖派
4節目:上に立つ下の者
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4-2.かつての種、再度芽吹いて

「――リース。おーいリース~、それともノア~。……起きろぉぉお! ノア・ブレイルタクトォォオ!!」

「どわぁああ!? な、なんだ、ウィネかよ……。ビックリさせんなよ……」


 セレンちゃんの騒動から早数日。俺が自宅で寝ていると、ウィネの大声で叩き起こされる。

 思わずベッドからも転げ落ちる始末。さっきまで見ていた夢の内容まで頭から零れ落ちそうだ。


「あ~……クッソ。メチャクチャ寝てた」

「だろうね。ここ最近はずっと夜中まで仕事してたみたいだし、疲れもたまってるんでしょ?」

「分かってるんだったら、起こすにしても優しく起こしてほしかったもんだぜ。おまけにノアの名前まで盛大に出しやがって」

「この家の中ぐらいだからね。聞き耳も立てられずに話せる場所なんてさ。まあ、アタシもアタシで用事があったもんで、強引にも起こさせてもらったよ」


 まだまだ眠気が抜けてないが、流石にそろそろ起きる時間か。ベッドに腰かけ直し、タバコに火を点けながらウィネとも話す。

 一応、表向きにはノアを見せない振る舞いにも慣れてはきた。だが、それはそれでストレスもたまりっぱなしだ。

 おかげで今の俺にとって、セーフハウスと呼べるのはリースの使っていた自宅のみ。窮屈だが、ないよりはマシだ。

 ここでならタバコの本数に制限を加えないことでウィネも同意してくれた。そこは感謝する。


「フー……寝起きの一服がねえと、頭働かねんだよな。それで、ウィネの用件ってのは?」

「アンタに頼まれてたものが完成してね。その報告。本当、錬工師(エンジニア)様をコキ使ってくれるよ」


 貴重なプライベートな一服を満喫しつつ、報告も耳にしつつ、さらに脳内ではここ最近の振り返り。疲労で眠りこけていたとはいえ、起きている時間は最大限有効活用したい。

 まあ、進み具合としては順調だ。むしろ順調すぎる。とはいえ、要因についても理解できている。


「ここの住人にしたって、元々は商工街で鳴らした腕前の持ち主も多いんだ。スキルの面では充実してる」

「これまでは悲観的になって発揮できてなかったってことね。セレンちゃんが尻に火を点けてくれたおかげさね」

「立地的な条件も決して悪くはねえ。だいぶ廃れちまったが、鉱物資源自体はまだまだ眠ってる。ブレイルタクト領の中央がここを見放したってのは、俺からすれば馬鹿な話だぜ」


 一通りの一服を終えれば、タバコを消してウィネと共に外へ。語り合いながら、再建中の商工街を見て回る。

 まだまだ商工街なんて大それたものでなければ、街なんて呼べるほどでもない。ただ、揃った要因は着実に実を結び始めている。


「あっ! シスター・リース、おはようございます!」

「ここ最近はお疲れでしょう? たまには休んでいてもよろしいのでは?」

「お気遣いありがとうございます。ですが、心配はありません。皆様もお疲れでしょうし、頼んでいたものもそろそろ頃合いと思いまして」


 ウィネと一緒に少し歩けば、作業を進める住人達が元気に声をかけてくれる。こっちも外に出ればリースとして振る舞わないといけないが、家に引きこもるわけにもいかない。

 住人達の生きた目を見れば、無理をせずともこっちも動く気になれる。かつての死んだ目に戻るまいとする気持ちは、今もなお行動へと駆り立てている。


「これでよろしかったでしょうか? 言われた通りに土を掘って、下に石を詰めましたが?」

「ええ。これで大丈夫です。では早速、連結している板を外してみてください」

「分かりました。人の安全も……良し。では、行きます!」


 そこに授けるのは、ノア・ブレイルタクトとして培った知識。元々の技術に合わされば、想定よりも進捗は早い。

 本当はもう少しかかると思っていたのだが、もう完成したとはな。具合の方も気になるし、指示を出して機能させてみる。


「おお! 河川の水が上手く流れ込んでいる! シスター・リースのおっしゃった通りですよ!」

「この一帯を守る堀みたいですね……! これならボークヘッド一派が来ても、簡単には入り込めなさそうだ……!」

「それだけではございません。河川の綺麗な水が居住区に巡ったことで、生活に活かすこともできます」

「そこまで考えられてたのですか。細かい水路も付け加えたのはそのためだったのですね」


 板を外せば河川の水が流れ込み、住人達の作った堀が水で満たされていく。流れもあるし、枝分かれした河川のようになるのも想定通り。

 この一帯はこれまで、水のためにわざわざ河川にまで汲みに行っていたそうだ。そんなのは無駄な手間だし、守るための堀だって欲しかったところだ。

 なので、堀と用水路を合体させて設計。住人達の土木スキルも高く、俺の思い描いた通りの光景が広がっていく。


「掘り起こした土に関しましても、皆様でフィルタリングできているでしょうか?」

「もちろんです。おかげで、結構な量の耗砂(セルミック)が採取できましたよ」

「マフォンといった汎用錬術具(アーツファクト)の部品に使える素材ですからね。需要はありますし、採取については任せてください」


 労働力も計算に入れれば、無駄となる部分も極力省きたい。土木工事ついでに資金源を確保する手段もある。

 かつて商工街が栄えた要因でもある耗砂(セルミック)を採取すれば、行商人にも売ることができる。

 まだまだ手を付け始めたばかりとは思えないぐらいの進展。過去の俺や会長が植え付けた技術が、今もまだ生きて支えとなってくれる。


「いやー、にしても、シスター・リースの知見は驚くほどですな。我々だけではこうも行きませんでしたよ」

「私は少々のアドバイスをしただけです。皆様のお力あってのことでしょう」

「いえいえ。我々ではできないことも多々あって――あっ、すみません。以前に話していた二人組が来ました」

「あちらの台車を引いた二人……ですか。では、予定通り私が請け負いましょう。皆様は少し休んでいてください」


 そして、住人達だけではできない部分は俺が担う。そこは明確に話し合い、役割も事前に決めておいた。

 こちらにやって来る男女二人組については、俺の方で相手をしよう。


「ニャ、ニャ? なんだか、見ない間に堀ができてるニャーね?」

「ワンも初めて見る。一帯の空気も変わったか?」

「お疲れ様です。行商人様」


 相手は商人。交渉事なら俺の出番だ。

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