表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

企画参加作品(ホラー抜き)

命日

作者: keikato

「おーい、ミチコー」

 オレは座敷から妻を呼んだ。

 今日はオレの命日であるというのに、妻のミチコが仏壇の前にやってこないのである。

 死んでまだ一年だというのに、もう命日を忘れてしまったのだろうか。

 まさかボケ始めたのでは……。

 なんとも心配である。


 ミチコが座敷にやってきた。

 掃除機をブンブンと鳴らし、のんびり掃除なんぞをしている。

「おいこら、オレの命日を忘れたのか!」

 オレは怒鳴ってやった。

 まことに残念ながら、あの世にいるオレの声はミチコの耳には届かない。

 掃除をすませたミチコが仏壇の前に立った。

「ミチコ、今日は九月十八日、オレの命日だぞ。供え物のお菓子はどうした? それに坊主は呼ばんのか?」


 ミチコがオレの遺影を見て言った。

「あんた、死んでボケは治ってるよね。そうじゃないとあの世で会ったとき、ボケてたら私のことがわかんないでしょ」

――オレがボケてるだと!

 失礼なやつである。

 ボケているのはおまえの方じゃないか。オレの大事な命日を忘れやがってから。

「明日、あなたの命日よ。ねえ、ちゃんと覚えてる?」

――えっ?

 オレは位牌を見た。

――ふむ。

 オレの命日は明日だった。

――ボケは死んでも治らないのだろうか。

 こまったもんだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
なんだかほっこりさせて頂きました(*´ω`*) 死んでも変わらないことって、確かにあるのかも。 後半のおじいちゃんの失速っぷりがかわいらしいです。 keikatoさん、ありがとうございました。
やっぱり最後がkeikatoさんはお上手です(n*´ω`*n) ボケは死んでも治らないでしたっけ?笑 そういう馬鹿を言っちゃあいけませんよね。
ほんと、困ったもんだ。(^^;) オチはなんとなく予想がついたけど、落とし方がよかったです。 名人の落語みたい。。 参加してないので、心置きなく☆入れていきます。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ