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ひねくれカルメはログの溺愛が怖い……はずだったのに! ハリネズミと太陽  作者: 宙色紅葉


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17/30

三組三様かまくら大会

 かまくら大会当日は快晴で、風は冷たいが日差しは温かく、なんとも不思議な天気だった。


 村の中央広場にはかなりの人数が集まっていて、それぞれに割り当てられた区画の中でかまくらを作っている。


 家族単位で作っているところもあれば友人や恋人同士で作っているところもあり、他に、かまくら作成には加わらず、皆が楽しんでいるのを眺めている者たちもいた。


 雪が降っているせいで、できる仕事や行動の幅が自然と狭められてしまうため、基本的に冬というのは暇な季節だ。


 おまけにとにかく寒いので、体力の有り余っている子供くらいしか積極的に外を出歩き、遊ぶということをしない。


 だが、そうして室内で籠っていると、無意識のうちにストレスや運動に対する欲求が溜まっていく。


 かまくら大会は、そんな村人たちにとって丁度良いものだったようで、カルメたちの想像よりもずっと盛り上がっていた。


 サニーなどは、


「ふむ、かなりの大盛況ね。これなら、来年も開催してもいいかも。でも、全く同じっていうのもアレだし、何か、もう少し盛り上がれそうなものを……誰がかまくらを一番うまく作れたかで競ってみるとか?」


 と、ブツブツと独り言を言いながら、早速、来年のことを考えていたほどだ。


 カルメたちは主催側なので当日も多少は仕事があるが、大会自体があまり時間やルール、進行などについて細かく取り決められていない、緩い遊びの延長のようなものだ。


 そのため、彼女たちも各々かまくらを作るなどし、自由に遊んでいた。


 むしろ、そうやって大会にはしゃぎ、雪だるまなんかも作り出してしまうほどであるのが、雰囲気をより楽しいものに変え、周囲をさらに盛り上げている。


「ログ! これ、思ってたよりも楽しいな! 出来るだけ大きくして、ログがのんびり過ごせるようにしてあげるからな!」


 雪かき用のスコップでベシベシと雪を叩き、早速かまくらづくりを始めたカルメは、満面の笑みを浮かべている。


 魔法を使えば、かまくらなど簡単に作れてしまうのだが、あえて身体強化の魔法のみを使い、自分の力だけで作るというのが楽しくて仕方がないようだ。


 ログは顔を赤くしてフンフンと張り切っているカルメのために、周囲から雪をかき集めて彼女の近くに置いている。


 妻のはしゃいだ笑顔を見るのが楽しいようで、ログの方も張り切っていた。


 どうしても力仕事になってしまうため、カルメのように女性が主体になってかまくらを作っているところは珍しい。


 セイとウィリアのペアなんかは、初めからセイがかまくら本体を、ウィリアが内装や外壁の飾りなどを作ると決めていた。


 そのため、ウィリアはせっせと雪の塊を作っていくセイを眺め、お喋りをしながらユキウサギやミニ雪だるまを量産している。


 そんな中、中央広場から少しだけ外れたすみっこの区画では、サニーの瞳がハートで溺れていた。


『ああ! コールさん! やっぱり、コールさんは力持ちなのね!? そんなにいっぺんに雪の塊を持ち上げて! 私、コールさんの腕に力が入って引き締まってるの、見ちゃったからね、このスケベさん! もしかして、腹筋だって割れてるんじゃない!? さすって確かめさせてくれてもいいのよ!? ああ、額を流れる汗が美しい。ブラボー、ブラボー』


 コールは大盛りの雪をスコップに乗せてはかまくらに叩きつけ、大きな雪の塊を作っていく。


 そして、ある程度の大きさになったら、今度は少しずつ雪の塊に穴を開け、内側を固めながら、中身が崩壊しないように慎重に掘り進めていった。


 大きな動きをする反動でちらっと見える腕や足首をサニーはじっと見つめ、感嘆のため息をついていた。


 見てくれは上品にコールを眺めるお嬢さんだが、心の中ではコールの尊さに仰ぎ、スタンディングオベーションをしている。


 少し前にサニーが予想を立てていた通り、コールは同年代に比べて体格が良い。


 元の素質に加え、室内で裁縫ばかりしていた彼は飽きてくると筋トレをしたり、夜外に出たときに無駄に走ってみたり、格好良く木に登る方法を考えて実践してみるというアホな遊びをしたりして、体を鍛えていたため、がっしりと筋肉もついていた。


 そのため、コールはモジモジと大人しい性格に反して力が強く、体力もある。


 サニーに良いところを見せようと、かなり飛ばし気味でかまくらを作っているのだが、さほど疲弊した気配は見せていなかった。


 そうして格好良く体を動かしている姿が普段との甘いギャップになって、サニーはすっかりコールの虜になっていた。


 しかも、ある程度かまくらの形を整えたコールが、額の汗を拭い、


「ねえ、結構できてきたんじゃない? 僕、昔から結構、力が強いんだ。そのせいで、ケイトさんにはいつも、力仕事を任されちゃうんだけどね」


 と、頬を上気させたまま、ニコニコと話しかけてくるのが更なる極上のギャップとなって、サニーの心臓ど真ん中を甘く射貫く。


「コールさん、かわいい……」


 うっとり、ため息をついてしみじみと言うと、普段はかわいいと言われても照れて顔を赤くしているだけのコールが、ムッと口を尖らせた。


「サニー、流石に今日は、その、カッコイイとかじゃないの? 僕、重い家具だって一人で持ち上げられるし、お肉の解体だってできるけど?」


 村では、森の野生動物や魔物を狩ることで肉を得るのが一般的だ。


 肉を解体し、食べられるよう処理をするためには、一定以上のテクニックが必要となるのだが、同時に、かなりの力と体力も必要となる。


 特に、鹿などの大物を捌くときにはそれが顕著だろう。


 数人がかりで肉の解体を行う時には、コールのように腕の良い者がいると一目置かれたし、家庭においても、肉の処理を率先して行ってくれる男性がいると非常に助かる。


 コールのそれは、彼を旦那に、と考える際のかなりの強みになる。


 そのことを本人も自覚しているため、格好良いや頼りになる、などといった言葉で褒められると思っていた。


 だが、家具を持ち上げたり、肉の解体を済ませたりして得意げになっているコールなど、サニーにとっては、かわいい以外の何ものでもない。


「コールさん、とってもかわいいわ」


 脳裏に浮かぶ姿に目元を緩ませれば、コールは二度目のかわいいに怒り、


「ちょっと、サニー!」


 と、サニーを睨むのだが、それですら彼女にはかわいらしく映り、胸がキュンと鳴ってしまう。


 可哀そうだが、完全に逆効果だった。


 普段はウジウジ、モジモジしているから仕方が無いが、偶に力仕事をした時くらいは格好良いと言われたい。


 コールがモヤモヤと不満を溜めていると、不意にやってきたケイトに後ろから声を掛けられた。


「コール、探したわよ。こんなすみっこにいたのね。あら、サニー、こんにちは。ふふ、サニーだったのね、コールの仲良しさんは。ちょっと、コール。あんた、随分とお目が高いんじゃないの?」


 ケイトはサニーに挨拶をした後、口元をニヤつかせてコールに耳打ちをする。

「う、うるさいなあ! 高望みなのは分かってるってば。もう! ケイトさんは何しに来たの? 冷やかしなら帰ってよね」


 保護者に恋愛関係をつつかれると、異様に羞恥心が募ってしまう。


 身内には少々強気なコールが、フン! とそっぽを向いた。


「もう、サニーの前だからってそんなに照れないの。だって、意地でも日が昇っているうちは外に出なかったコールが、いそいそと早起きして、お洒落もして、ソワソワと会いたくなるような女の子なのよ? そりゃあ、気になるじゃない。人目が駄目なコールが、パニックを起こしていないかも気になったし。平気なの?」


 何かあると、すぐにコートに閉じこもってしまうコールだ。


 広場の中心でいきなり貝になり、子供たちに木の棒などでつつかれていたら目も当てられない。


「うん。なんか、ここの人たちの視線は、思ったよりも駄目じゃなかった。それでも、あんまり見られたくないけど」


 コールがコクリと頷くと、心配そうに揺れていたケイトの瞳が優しく細められる。


「と、とにかく、僕は大丈夫だから、他の人たちとお喋りでもしてきなよ。僕たちは、これからかまくらを作ったら、一緒に内装も作るんだから」


 妙に気恥ずかしくなり、コールはケイトを遠ざけようと、グイグイと肩を押した。


「ちょっと、そんなに押さないの。大体、他にも用事はあるのよ。みんな、体を動かして小腹を空かせていると思ったから、お友達と一緒に材料を持ち寄って、沢山クッキーを焼いたの。それのラッピングを手伝ってほしいのよ。きっと、温かい紅茶にも合うわよ」


 村長宅は村の真ん中にあり、中央広場もその近くにある。


 そのため、村長は自宅の一部を休憩所として開放し、そこで温かい紅茶を配っていた。


 そこにケイトたちのクッキーも一緒に置き、休憩をより充実させよう、ということらしい。


「ええ~、僕、かまくらづくりで忙しいんだけど。それに、ケイトさんのお友達に囲まれるのは、ちょっと……情けない話だけど、僕、まだそこまで、他人と一緒にいられる気がしないんだ」


 ケイトと同年代の婦人たちに囲まれ、彼女らのかしましい話を聞きながら緊張の面持ちでラッピングを進める、という地獄を想像し、コールは震えた。


 話などを振られたら、メンタルが死んでしまう。


「大丈夫よ。コールの性格を考慮して、ラッピングするのは私とアンタだけだから。大量に作りはしたけど、テキパキとやればそんなに時間もかからないし」


 仕事の関係で、コールは何度もクッキーの袋詰めを手伝ってきた。


 ケイトの言う通り、二人で行えば三十分もかからないだろう。だが、


「でも……」


 と、コールは手伝いを渋って、チラリとサニーを見た。


 どうにも、サニーから離れたくないらしい。


 そんなコールの心を知ってか知らずか、サニーはあっさりと前に出て、


「それなら、私が手伝いますよ。かまくらは、ほとんどコールさんに作ってもらっちゃいましたし、私も、少しは働かなくちゃ。コールさん、コールさんは、さっきまで一生懸命、頑張ってくれてたし、休憩してていいのよ」


 と、ラッピング係に立候補した。


「え!? じゃあ僕も行」


「あら、助かるわ。ふふ、ありがとう、サニー。それなら早く行って、サッサと終わらせちゃいましょう」


 慌てて出されたコールの言葉は、途中でケイトにより掻き消されてしまう。


 仲良くケイトと歩いて行くサニーに、「僕も一緒に行くよ」とも「早く帰ってきてね」とも言えず、見送るだけの自分に嫌気が差して、コールはしょぼんと落ち込みながら、かまくら作りを進めた。

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