『初めまして、非日常』
黒猫が前を通るデジャブを経験したので、初投稿(一年ぶり)です
頭に柔らかな感覚を覚え目を見開く、どうやら僕は横たわっているらしい、直前までの記憶では、謎の箱からでた黒い手のようなものに捕まって……
『……お目覚め?』
混乱のままに記憶を探っていると、頭上から声が掛かった、どうやら膝枕をされているらしく、読みかけらしい本から覗く幼顔が、心配そうにこちらを見ている。
可愛いと素直にそう思った、夜を写したかのような長い黒髪、あどけなさを感じる顔立ちに、心配そうに此方を見つめる瞳は朧気な月明かりみたいな危うさで、思わず見惚れてしまう。
「大丈夫だけど、君は誰?」
『わたしは、■■■■』
『黒の‥ 女神』
幼く掠れた声で紡がれたその言葉に、驚いて跳ね起きそうになるのをやんわりと制される。
黒の女神といえば、世界を作りし二柱の片割れであり僕ら人簇の守り手である白の女神と対をなす害ある存在の筈なんだけど……
「なんで黒の女神様が、僕なんかに膝枕をしているんです?」
『聞こえてな…いよね、わた‥… しのせいで、これから、大変だから』
悲痛そうにそして何故か悲しそうに、こらえるように言うものだからどうにも、言い伝えの悪どさと結びつかない。
頭を撫でる感覚が、ただただ暖かで慈愛すら感じている。
「何が、大変何です?」
『ここから、出て行くのが大変』
ここから……? そうだ! 余りのにも驚く事柄が多すぎて、根本的な、此処がどこでとか、何でいきなり女神様の前にいるのかとかがすっかり飛んでいた。
『落ち着いて、いち… から説明、する』
「は、はい」
あわてふためく僕に対して困ったように
~説女神中~
「なるほど…… ここは封印の中で、僕は女神様が此処から出るために作った、転送装置に捕まった」
『その通り、発動条件は、最も私との親和性が高く使徒となり得るもの』
「それでいて、ここを出るために試練を突破しなければならないと……」
『うん、私がズルしようとして外の力を借りようとしなければ、 本当にごめんなさい』
「謝らないで下さい、何千年もひとりぼっちじゃ、出たいと思うのもしょうがないです」
殆ど何も無い空間に一人でずっといるのだ、女神様だろうとなんだろうと、とても寂しくて辛いはずだ。
それに、話してみてわかったことだが、この女神様は気弱で優しい性格なのだと思う、今もこうやって巻き込んでしまったからと何度も頭を下げ続けてくれている。
「謝罪の気持ちも伝わりましたしそろそろ下げ続けるのを止めてください」
「申し訳ない気持ちでいっぱいになりますから……」
『……わかった、その、それで使徒にはなってくれるの?』
「良いですよ、話をして悪い女神じゃないとわかりましたから」
『えへへ、ありがとう』
『早速するから、そこで跪いて』
はにかんだようにお礼を言う顔に、若干の照れを感じながら儀式のために僕は、跪き目を閉じるのだった。
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