祠と謎の箱
ついてしまった、最初の連戦はなんだったのかと思うほど道中なにもなかった。
「これが祠かぁ」
「なんか小さいわね、思ってたのとちがう」
今回の目的であった祠は、建っているというより、置いてあると表現する方が正しそうなサイズ感だ。
「お前らなぁ、一体どんなのを想像してたんだよ」
「もっと大きくて中が探索できるような奴よ」
僕もにたようなものを想像していた、大きな神殿のような物を、実際は石造りの小さな教会ようなものだった。手ぐらいは入れられるかもしれない。
「伝説通りならこれに神様か魔王級の何かが封印されてるはず とてもそうは見えないけど……」
「ランスお前、あの伝説を信じてるのか?」
「信じてますけど?」
あの伝説とは『世界の始まり』に関する伝説のことだ、このお話は、二柱の大いなる神様の話から始まり動物、魔物の創造や最初の人族、亜人族、魔族のことなどを『最初の戦争』と呼ばれる時期のことまでを描いた物語だ。
大抵の人は、ほら話だとか、昔のことを誇張しすぎた話とか言うが僕は信じている。
「実際一定以上の強さの魔物からはお金も落ちますし嘘ばっかりてわけじゃ……」
「ははっ分かってるよ、そんなにまくし立てなくても。何も信じてないって言ってる訳じゃねぇただ、落胆したんじゃないかと思ってな」
「大丈夫ですよ」
確かに封印場所が思ったよりも控えめで少し、思うところがないわけもないが、他にも伝説の残る場所はあるしここだけを見て、気落ちすることもない。
「そういえばノラは、どこに行ったんだろう?」
「やけに静かだと思ったらいねぇな、アイツどこ行きやがった?」
相変わらず、落ち着きがないなノラは、多分この先にでも探索に行ったのだろう、まぁ強いし問題はないと思うけど少し心配だ。
「この先、何かありましたっけ」
「いや、少し開けた場所があるぐらいで、何もねぇぞそれに先にいるとも限らねぇだろ」
「居ますよ、ノラのことですから」
そう言った時グレックさんが感心したような、何か僕にとって非常に、不本意なことを考えていそうな顔になった。
「ほーん、彼女のことよーく理解してんだな」
やっぱり、グレックさんもそうだが、なぜか僕の住むイートス村の人のほとんどが、僕とノラが付き合ってると思っている。
確かにほとんどの時間を、一緒にいて模擬戦(一度も勝ったことない)をしたりしているが、別に付き合っているわけじゃないのだ。
「とりあえず行きましょう」
「そうだな」
少し歩いていくと、確かに開けた場所に出た。
日当たりもいいし、ここでピクニックなどしたら気持ちのいいことだろう、そんな場所でノラは何かを探していた。
「なに探してるの、ノラ」
「ああ、ランス来たのねあんたも手伝いなさい」
「だから何を探してるの、もしかしてこれ?」
ノラの足元に、手のひらサイズの黒い箱がある、見える範囲にあるのになぜ、気づかなかったんだろうか?
「これって、どれのことよ? 何もないじゃない」
「今僕が手に持ってるヤツだよ」
「あんたが意味もなく、ウソをつかないのは、分かってるけど、私には何も見えないわ」
ノラにはこの箱が見えないらしいグレックさんはどうだろう?
「俺にも見えねぇな」
二人に見えないのは、少し気味が悪い。
「これどうしよう?」
「持って帰れば良いじゃない」
あまりにもあっさりそう言い放ったノラに驚く。
「他人事だと思ってそんな軽く……」
「良いじゃない、自分だけの発見なんてすごくロマンがあるでしょ、それに、見つけて手にとっちゃたら、持ち帰っても帰らなくても同じこととだと思わない?」
確かに一理ある気もする、下手に放っておくより、見える範囲においたほうが安心かもしれない、いじくりまわしちゃつたし。
「持って帰って調べることにするよ、調べると言っても、あまりできることはないけど」
「なにか分かったら私にも教えてね」
「分かってるよノラ」
日も落ちてきたし、少し急いで帰ろう、冒険は帰還するまでってよく言うし、何もないと思うけど警戒はしておこうかな。
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