表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

3代生きれば、その国の人

仲間たちが次々に倒れていった。


ある者はC国の女スパイのハニートラップで。

ある者はコウガのクノイチの唇に触れ、猛毒の苦しみに悶絶しつつ。


幼い頃から国の機密を守る者としての訓練を受けてきたが、ぼくらには戸籍がない。

親もいない。


伝説となった公安のエージェントの遺伝子をもらい、研究所で生まれ、研究所で育てられた。


だがしかし、その遺伝子には欠陥があったようだった。

同胞でもあり、兄弟のようでもある仲間たちは、みな女性との関わりで失墜してきた。

このままでは、ぼくも危うい。

R国への潜入を前にして、不安に駆られる。

最長の兄でもある管理官に相談しても、計画の変更はなかった。

「安心して、死んでこい」


たしかにエージェントとして、任務の過程での死は栄誉かもしれない。

同じくR国に潜入しているというA国の女性エージェントと現地で合流する。


彼女とは心を許し合い、生死を共にする覚悟で臨んだ。

任務なので、家族として、の国で家庭も築く。

特に制限もされず、指示もなかったので、子供も生まれた。

もちろん、お互いの組織には報告してある。


むしろ、その子達が、次世代の構成員としての任を受けるらしい。


ある夜、夫婦となったぼくらは、そのことを話し合った。

お互いの国の平和が守られ、潜入したこの国も長い時間をかけて、内側から変えられていくのだろうねと。


ぼくは幸せを感じた。

任務の過程で失敗していった仲間たちのことも忘れない。

もしかすると、彼らは、ぼくらと同じように、それぞれの国で根を張るための工作の中なのかもしれない。


使命の中で生きるとは、きっとこのようなものなのだろう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ