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来栖貴志君は嫌われ者です  作者: 結城智
プロローグ
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プロローグ

 未験者も大歓迎。明るくアットホームな会社です。


 店舗内の5割が高校生です。先輩が優しく教えてくれるので、未経験でも心配いりません。

体力自慢の方はどうぞ。高校生可。時給1000円!


 求人雑誌をペラペラとめくっていくと、どこも同じような会社に見える。接客の仕事は絶対に嫌だ。会社の人達が仲良く肩を組み、笑っている写真がある求人なんて論外。吐き気がする。


 接客に関わらず、職場での人付き合いは皆無の場所であって欲しい。


 肉体関係の仕事は、単純作業を繰り返しだから、性には合っているが、ガテン系の人達が多く、違う意味で面倒臭い。


 結局、この日本という国。いや、この世界にいる以上、人間関係を完全に断つのは難しい。しかも高校生だと職種も限られ、高校生不可という求人が大半だ。


 若さは財産だというが、今の俺に若さはデメリットでしかない。未成年と言うだけで、出来る仕事が限られ、時給も安いのだから。


 俺の名前は来栖貴志(くるす たかし)今年、十七歳になる高校二年生。


 成績や運動神経は平均値より若干上に位置する、と思う。いや、というのも普段、周りと比べることをしないので、自分がどの位置にランク付けされているか、定かではないし、興味がない。出来ることなら、このまま、勉学だけに集中し、ボッチのまま高校を卒業。そのまま、当たり障りのない会社に就職して、一生独身。誰とも深く関わらず、天涯孤独で過ごしたい。


 高校生である今はなにも考えず、ダラダラと過ごしていたいのだが、神様は気分屋で意地悪なものだから、俺は今から、稼がなくてはならないのだ。


 俺の家は母子家庭で、母、俺、妹の三人家族。幼少の頃から日々、家計簿と睨めっこしている母の姿をずっと見続けていた。


 俺はこの家の長男として、生活を少しでも支えなくてはならない。これは親孝行でもなんでもなく、生きるためには仕方ないことだ。


 ああ、なんでもいいから、俺に適正な仕事はないだろうかと、頭を抱えていた。そんな時、俺の携帯がメールを受信する。


 ああ、補足すると、俺のは携帯だから。スマホじゃないよ。ガラケーだからね。当然、今流行りのラインとかいうのも使っていない。そもそも俺にメールを送ってくる、友達なんていないから不必要なんだけど。


 母か妹からだと思い、受信BOXを開くが、そこには身に覚えのないメールアドレスが表示されていた。


 悪戯メールか? そう思い、削除しようと操作していると、メールのタイトルに目を奪われた。

バイト急簿! 


 そのタイトルに誘われ、俺は取りつかれたように本文に目を通してしまった。




 バイト急簿! バイト対象者は白銀学園の生徒に限る。


 明るくて、優しくて、コミュニケーション能力があり、友達が多い人はお断りします。


 根暗で、捻くれていて、コミュ症でボッチな人。人に恨まれようが、なんとも思わず、淡々と依頼を遂行してくれる腐った人を求めています。


 バイトの内容は面接時に説明致します。


 入会金は十万円。依頼は遂行事にお支払い致します。


 バイトは歩合制です。依頼を遂行出来れば、依頼達成ごとに高額報酬をお約束致しますが、遂行出来なければ0円です。


 特別な能力は求めておりません。


 繰り返しますが、人に嫌われ、恨まれることを苦とせず、依頼を遂行出来る方であれば、誰にでも出来る仕事だと思ってください。


 逆を言えば、嫌われることを苦と感じる方は、応募することをお勧めしません。


 ご興味のある方は、こちらのアドレスに返信をお願い致します。




 メールの文章はそこで終わっていた。


 ついにこの俺にも、神が微笑みかけてくれたようだ。日頃の行いが良いせいだろう。


 しかし、何故、白銀学園の生徒限定なのかは不明(白銀学園とは俺が通う高校名だ)


 そして、何処で俺のアドレスを知ったのか。怪しさMAXのメールであることは間違いない。普通は警戒する場面だが、今すぐにでも金が欲しい俺にはもってこいのバイトだ。


 嫌われることを苦に感じるか?


 その質問の回答はNOだ。人にどう思われようと、正直どうでもいい。というか現状、俺は嫌われるどころか全員、無関心な状態だと思うが。


 善は急げ。俺はこのバイトを他の誰かに取られることを避ける為、その場ですぐ面接希望のメールを返信した。

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