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カタコト転校生がうざすぎるのでどうにかして欲しい。  作者: チーズは苦手です
第一章 人生は思ったより甘くない
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4.波乱の幕開け

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

 


 ――これはどうするべきなのだろう。

 一応あちらも()()を続けているので、聞かなかったフリをして先程の件は触れないほうがいいのか。


 しかし、こちらとしてもあの場面が衝撃すぎて頭から離れてくれないのでいっそ本当の事を教えて貰ってから、誰にも言わないことを約束して穏便に済ませたほうが後腐れないしいいんじゃないか?


「――られたと……ら消え……しか……」


 何やら転校生が後ろでぶつぶつと呟いている。

 聞き取りづらいが怖いことを言っていたような気がする、嫌な予感がするので前者を選択してあの件は無かったことにしよう。


(困ったな、運がないにも程があるだろ)


 ただでさえ伊集院に目をつけられているのにこれ以上問題は起こしたくない、本当は無言を貫きたいが変に会話があったせいでそうもいかなくなってしまった。

 こうなると道中無言は流石に気まずいので、自分の印象が残らないような当たり障りのない問いかけを転校生に向かって投げかける。


「この学校には慣れましたか?」


「…………」


 返事がないようだ、俺の声が小さかったのか?

 少し声を大きくしてもう一度話しかける。


「えーと、来て1週間だし、流石にまだ慣れていないかぁ……ははっ……」


「…………」


 間違いなく先程の件の所為で転校生の様子が変である、対応しているこちらは冷や汗が止まらない。

 変な事は言っていないはずなのに何故なんだ、混乱しているのか、もしくは文化的な違いで失礼な言葉として受け取られてしまったか。

 ああ、もしかしたら慣れるという日本語がわからないのかもしれない。

 あれ? でも自己紹介のとき使っていたような……。


「キミのナマエは『キョウヤ』でアッテル?」


「ッ!……なんで俺の名前を」


「キニナッタカラセンセイにオシエテモラッタノ」


 まさか名前を知られているとは思いも寄らなかった。

 突然すぎて動揺が隠せない、何の前置きもなく下の名前を言い当てられて得体の知れない恐怖心に襲われる。

 声が詰まりそうになりながら辛うじて返答する。


「そうだったんだ」


「ウン、ワタシキニナッタコト、スグシリタクナッチャウノ。

 クラスのミンナ、イッテルコトチガウ、アナタトテモヤサシイ」


 彼女の言葉で精神状態が一気に不安定になる。

 ――彼女(てんこうせい)にはこれ以上関わるべきではない。

 俺の中で警戒音が鳴り響く、彼女にとっては普通のことなのかもしれないが過去の出来事で人を信用できなくなっているので、裏があるように思えてしまう。


 もし不用意に近づかれて、自分の中で張っている他人との境界線を越えられてしまえば、ただでさえ狭い居場所がなくなってしまうから。


 ……やっと()()になれたんだ、もう奪われないようにしないと。


 今後のことを伝えるため、俺から話を切り出す。


「あのさ、クラスの人達が言ってたように俺には話しかけないほうがいいよ」


「ナンデデスカ?」


「まぁ……過去にいろいろあって人と話すのが苦手なんだ。

 だから正直言うと、話しかけてほしくないっていうのが本音だよ」


 近づきにくくするために語気を強めて言う、申し訳ないが後々のことを考えると最初から遠ざけたほうが後味がいいだろう。


「……ウーン」


 転校生は困惑の表情を浮かべ、頭を悩ませている。

 考えが面倒な方向に向かわないよう、纏まらないうちに畳み掛けるとしよう。


「それにさ、聞いた話だと君はあの有名な大手企業REIZENの跡取りでしょ?」


 エネルギー産業で力を伸ばし、誰もが聞いたことのある大手企業『株式会社REIZEN』、転校生はそこの御息女である。

 転校生が来ると伝えられた日、先生から同じクラスメイトとして家柄など気にしないようにと伝えられていた。

 しかし、お世話になっている以上言いつけを破りたくはないがここで失敗すると後が無いので背に腹はかえられない。


「そんな人が俺みたいな奴と関わっちゃだめだよ」


「――は?」


 転校生がその美しい容姿からは想像できない、殺気を感じさせるような険しい表情で俺を睨む。

 ここまで怒ってしまうのは予想外だった。

 普段笑顔の人が怒る時は怖いと聞くがまさしくその通りで、内心その変化に気後れする。


「気に障ったらごめん、それでもわかってほしいんだ」


「決めた」


「ん?」


 決めた? 先生に報告でもするのか?

 もしそうなら困ったな、何とか和解できるように落ち着かせないと。


「恭矢、私に協力しなさい」


「…………は? 意味がわから――」


「あら? 理解できなかったのならもう一度言うわ、

 貴方、私が持て囃されるように力を貸しなさい!」



 転校生の勢いに気圧される。

 思考をまとめるだけで精一杯になり、少しの時間放心して立ちつくしていた。

 さっきまでいたカタコトで愛嬌を振りまく転校生は身を潜め、唐突に現れたのは私利私欲のために命令する暴君お嬢様であった。




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