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カタコト転校生がうざすぎるのでどうにかして欲しい。  作者: チーズは苦手です
第一章 人生は思ったより甘くない
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2.カタコト転校生登場

この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

 


 ガラガラッと音を立てて教室の扉が開く、どうやら先生が来たみたいだ。


「お喋りは終わりにしてみんな席に着きなー、HR始めるよー」


 生徒達にそう一言伝えると、眠そうな表情を浮かべる担任の日向ヒムカイ 真知子マチコは教壇の前に立って早々に大きな欠伸をかいていた。

 ガサツだが、なんだかんだ生徒想いな先生なので慕っている生徒は多い。


「出席は……全員いるようだし取らなくていいか」


 相変わらずの雑な対応、一見気が抜け切っているようにみえるが、観察眼が鋭いのか体調が悪い生徒にはすぐ気づき、保健室送りにする。


「今日の時間割は変更になっているから、間違えないように」


 日向先生のHRは当人が面倒くさがりなため、重要な要件がない限り数分で終わってしまう。


 今日の話も先生の表情から察するに聞かなくても別に問題はない内容だとわかっていたので、机に突っ伏しながらボーッと外を眺めていた。


「――――以上だ」


 先生が話し終えたので、各々が雑談や授業の準備のために動き始めた。


「あー、あと今から転校生がクラスに来るから自己紹介の準備しときなー」


 全くもって唐突である。

 1時間目の授業が日向先生担当の化学に急遽入れ替わったのはそういうことだったのか。


 突然の報告にクラスの連中はざわざわと騒ぎ始め、ムードメーカーの大木が先生に不満をぶつける。


「先生! 昨日はまだ先って言ってたじゃないですかぁ!」


「進行は学級委員長の伊集院にまかせるからよろしくー」


「はい、わかりました」


 大木の言うことを無視し、委員長の伊集院イジュウイン 瑞希ミキにそう言い残して担任の日向は教室を出て行った。




    *    *    *    *




「順番を決めたいので意見のある人はいますか?」


 前に出て進行を務めるのは委員長である伊集院、品行方正という言葉がいちばんしっくりくる人物だと思う。


 何せ伊集院の両親はどちらも弁護士で父親に至ってはエリート弁護士かつ大手弁護士事務所の社長なので、その子供である彼女も言うまでもなく優秀。

 定期試験では常に上位にランクインしており、彼女曰く、親と同じく将来的には弁護士になることを決めているらしい。


「意見が出ないので、これから私が提案する方法に賛成か反対かの意思を示して下さい」


 自分でもなぜこんなに詳しいのかと嫌気が差す。

 伊集院は風紀委員に入っており身嗜みや規則には人一倍うるさいので、クラス内での態度があまり良くない俺はその標的となっている。

 毎日のように学園での生活態度を注意され続けているだけで別に親しいわけじゃない。

 顔を合わせる度に注意されていれば誰でもこうなるだろう、毎回聞きたくもない説教と身の上話をされているこっちの身にもなってほしい。


「時間も限られていますので、シンプルに出席番号順で進めたいと思いますが反対の方はいますか?」


 もちろん委員長の質問に返答はなく、反対の意見は出なかったので出席番号順での自己紹介となる。


「では自己紹介が始まりましたら、出席番号順で早い人からよろしくお願いします」


 委員長は艶のある長い黒髪を靡かせ、席に戻る。

 逆らうと理詰めで問いただされるのが目に見えているから誰も否定しない、まぁ……こういうときに委員長へ立ち向かおうとするのは大木くらいだが今回はめった打ちにされる未来しか想像できなかったのだろう、大木も静かにしている。

 1年のときも同じクラスだったが彼女の隙を見たことがない、はたしてこの人に弱点はあるのだろうか。



 ――そんなこんなで先生が出てから15分程たった頃、廊下からコツコツとヒールの音が近づいてきた。

 響きが大きくなるにつれて、それに反するようにクラスの話し声は小さくなった。


 やがて音が止み扉が開くと先生とともに、おそらく外国出身であるようなくっきりとした目鼻立ち、モデルだと言われても違和感がないような紛うことなき美少女が入ってきた。


「冷泉さん自己紹介をお願いしてもいいかな」


 日向先生が彼女に向かってそう問いかけると、黒板の前に立っている美少女はクラスを見渡して一呼吸おいた後、笑顔で挨拶をした。


冷泉レイゼン 可憐カレンデス! ニホンゴ アマリナレテイマセン! オシエテクレルトウレシイデス!」


「「「可愛いー!」」」


 慣れない日本語で話す転校生、その可愛さにクラスからは歓声があがる。


 クラスの連中がここまで沸き立つのは初めてかもしれない、ただし大木に関しては目が血走っていたので周りの生徒は少し引いていた。


「アリガトゴザイマス!」


「冷泉さんの席は真ん中いちばん後ろの空いてる席に座りなー」


「ハイ!」


 熱烈な視線を受けながら、転校生は元気よく返事をして先生に指定された席に向かう。

 大木を筆頭に席が前の方の男子は恨めしそうな視線を後ろの席の男子に送っていた。


 いつもなら大概は気に留めずに関わらないよう視線を外している俺も、あまりにクラスの雰囲気が変わりすぎていたこともあって転校生のことを少しの間眺めてしまった。


「キャラ濃すぎだろ……」


 いきなり美人でハーフ?でカタコトの生徒が現れたのだ、あまりの急展開ぶりにぼそっと呟いてしまう。


 はっと我に返ったときにはすでに遅く、指示された席に向かっている転校生と一瞬目があってしまった。

 転校生が満面の笑みをこちらに向けてきたが俺は目線をすぐ逸らした、はぁ……心臓に悪いな。


「じゃあ自己紹介よろしくー」


 日向先生がそう告げるとクラスメンバーの自己紹介が始まった。



 冷静になってみると彼女の話し方は、変な言い回しだがカタコトなのに流暢な、まるで使い慣れているような微妙な違和感を感じた。

 しかし、つまらないことに頭を悩ませるのは億劫なので、きっと相当日本語を練習したんだろうと自分に言い聞かせてさらさらと退屈な時間が過ぎるのを待っていた。




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