悪役令嬢と海の国1
キラキラ輝くいい男がクラスメイトに囲まれている。全力で近寄らないようにしよう。そう思っていたのに。
「あー!リュシアさんこっちこっち」
視線があったフィーリアさんがおいでおいでをするように手を振っている。あ、大丈夫。間に合ってますので。いやでもフィーリアさんを無視することなんてできようか。
今日から学院生活三年目が始まる。教室の扉を開ければ前方に人だかりができていた。あそこはロザリーさんの席の近くだ。
なんで人が集まってるのかと伺って見ればヤツがいた。このゲームの攻略対象者、隣国の王子ラメール。身分を隠してお忍び留学し、この国について探りを入れつつヒロインちゃんと愛のお勉強をする。そしてなんやかんやで悪の存在、闇の力、つまり私を成敗するのだ。絶対近づきたくない、近づきたくないのに。フィーリアさんがニコニコしながら再度呼ぶのだ。
招かれるままに向かうと王子様が声をかけてきた。
「やあ。美しいお嬢さん、ご機嫌いかがかな?ボクはラメール、今日からよろしくね」
キラキララーンという効果音が聞こえそうな笑顔を向けられた。
「オハヨウゴザイマス、リュシアト申シマス。ソレデハ、ゴキゲンヨウ」
さっさと安全地帯へ帰ろうとしたところフィーリアさんに止められた。
「リュシアさん、おはよう。ラメールさんは海の国から来たんだって。今みんなで話を聞いてるんだよ」
通称海の国、それは隣国のことだ。この国にはない海がある大きな国。海を超えて他国と貿易もしているのだ。
「うんうん、何か聞きたいことはあるかい?」
海の国、といえば。やはり……。
「海産物は美味しいですか?」
「ははは、もちろんだよ。魚がよく捕れるよ。でも海の中には巨大な海獣がいてね。何本も足を持っていて船を引きずり込もうとするんだよ」
「きゃー、怖い」
「海ってどんな感じだろ。沼みたいなのかな」
「いや湖のでかいようなのだろ?」
手をうねうねと動かし説明を始めるラメールさんに対し皆口々に感想を言い始める。でも私は一人別なことを考え始めた。
海の巨大生物、それってもしかして……大きなイカとかタコなのでは?じゅるりと涎が口の中に込み上げる。
「でも君たちの国から派遣される魔術師達のおかげで対処できるようになったよ。本当に魔法の国が味方で心強いよ」
「退治された海獣を食べたりしないんですか?」
ラメールさんがなにか大事なことを言った気がするけれどそれよりも!イカ焼き!、卵も小麦もあるからタコ焼きも食べられるじゃないか。鰹節と青海苔はないかな?夢は広がるぞ。ワクワクしながら聞いてみる。




