悪役令嬢は大わらわ3
午後の授業が終わった。授業と言ってもテストの返却と簡単な解説、そして諸注意が伝えられたのみである。
生徒達が先生に帰りの挨拶をした、その直後に聞き覚えのある声が席を立とうとした皆を留まらせた。
「諸君!提案がある!」
声の方を見ればやはりアレス様だった。
私は早く寮に戻りたい。そして、ひたすらゴロゴロ何もしないことをしたいのだが?
しかし王太子様を無視することはできない。同じ気持ちであろう他の生徒達も皆彼の方に顔を向ける。
アレス様は皆の注目を集めたことに満足したのか話を続ける。
「我々は今日この時の為に力を尽くしてきた!試験に向けて頑張ってきた!そして今日、その結果と対峙した!満足がいく結果を得られた者も、そうでなかった者もいるだろう」
皆の顔を見回しながら話す様はまるで演説をしているようだ。これは来年も頑張ろう的な激励スピーチであろうか。
彼は言葉を続ける。
「だが結果がどのようなものであろうと我々は休息が必要だ!疲れた頭を鎮め、心をほっとさせるひと時が必要だ!」
おやおや、話がおかしな方向に行こうとしているぞ?
「だからお疲れ様会をしたいと思う。というかしようと思う、今日の放課後に!」
今日の放課後って今、ナウじゃない?
教室がざわめき始めたが、さすがに王太子が相手では誰も指摘できないようだ。
「実は食堂をもう借り切ってある!」
自慢げな顔で胸を張っている。さらに可愛い妹の前に立ち、エスコートする気満々である。
これはもう絶対に断ることができない空気である。全員参加な雰囲気である。えー、私のごろごろ読書時間がー。くぅ、皆が向かってる時にこそっと抜け出しちゃおうかな。でもバレるかな。
「隣国の王室でも愛されている紅茶もあるからな。ぜひ楽しんでくれたまえ」
その時私の耳がぴくりと動いた。
紅茶?紅茶ですと?海のないこの国ではやたらといいお値段のする紅茶ですと???紅茶が飲めるんですか???
はーい!はい、はい!リュシア、参加しまーす!
見えない尻尾を振りながら私は食堂へ向かうのだった。




