悪役令嬢は内職する2
そんなわけで遅れを取り戻すべく、尻に火がついた私は刺繍三昧の日々を送っている。
早朝、昼休み、放課後、就寝前、とにかく刺繍の毎日である。
今はせめてもの息抜きに食堂のテラス席で作業をしていた。やはりヴェネレさんに正直に話して締め切りを伸ばしてもらおうか。ため息を一つつく。
「リューシーアさん、何か楽しそうなことしてる?」
後ろから聞こえた声に振り向けば、そこにはキラキラした瞳のオレリアさんがいた。
その時私は思ったのだ、鴨が葱を背負って……いや、素敵なお友だちが罠にかかったなな、と。
この獲物、絶対に逃さないぞ。
そんな真っ黒けな腹を悟らせないよう、私はオレリアさんに現状を説明する。
「……というわけで、オレリアさんの力をぜひ貸してほしいの」
「刺繍?やるやる!楽しそう」
二つ返事で快く手伝ってくれることになった。
「このデザイン可愛い」
オレリアさんは慣れた手付きでいくつも仕上げていく。
「オレリアさん、すごい」
「あはは、家で繕い物とかするからね」
さすが、頼りにさせて貰います!
「あらリュシアさんにオレリアさん」
そこへやって来たのはルルディさんとソフィアさんだった。
ルルディさんは目を輝かせながら刺繍を見ている。これはもしや刺繍ホイホイ?手伝ってくれたりしちゃう?
オレリアさんが私のピンチについて説明してくれたが、ルルディさんは悲しそうな表情になり小さく呟いた。
「努力だけではどうにもならないこともあるの」
ソフィアさんが苦笑いしながらルルディさんの肩をポンポン叩く。
「私で良ければ手伝わせて。放課後に集まりましょう」
ふほほほ、オレリアさんにソフィアさんまで集まれば百人力じゃない?




