悪役令嬢の魔女疑惑5
薄暗い小屋の奥、窓側の隅に私とルーナは二人きりでいる。
正確には床にへたり込んだ私と立ったまま私を見下ろすルーナがいる。
あの騒動の後、ジェロームさん達が小屋を出て行き、すぐにルーナにお礼を言いたかったのだが。
はらほろひれはれ〜。
「お姉様!」
壁にもたれたまま、ずるりとへたり込む私に心配そうに声を上げたのはルーナ、優しい私の妹ちゃん。
どうやら私、気が抜けて立ちくらみをおこしたようだ。早く起きてお礼を言わないと。
慌てたように駆け寄ってきたルーナが心配そうに私を見下ろす。
「大丈夫、大丈夫。ちょっと立ちくらみがしただけだから」
壁に手をつき立ち上がろうとする私をルーナが制止した。
「お姉様、無理をなさらないで」
その言葉に甘えて私はしゃがみ込んだまま彼女を見上げた。
「ルーナ、来てくれてありがとう」
ぎこちなく微笑むと、彼女はどこか居心地が悪げな表情を見せる。
あの時ルーナが来てくれなかったら私はどうなっていたのだろうか。ジェロームさんに成敗されて、今頃塵芥と化していたかもしれない。
「ねえ、お姉様、どうして言わなかったの?」
「何のこと?」
ルーナの瞳が覗き込むように私の目を捕らえると、なぜかその瞳を逸らせなくなる。
「なぜお姉様が闇の存在ではないと否定しなかったの?」
どう答えるか困ってしまう質問だ。いくら可愛いルーナの問いでも、もしかしたらモノホンの闇の存在かもしれないからでーす、とは言えない。絶対言えない。
さて、どう誤魔化そうか。
「ジェローム様のあまりの剣幕にびっくりしちゃって」
これは本当のこと。彼はちょっと思い込みが強いようだ。今後も私のことを疑ってかかるのかな。ちょっと憂鬱である。
「本当にそれだけ?」
ずずいっとルーナの顔が迫ってくる。
「私のことを最初から信用していないみたいだし、何を言っても無駄かなって」
「……そう」
アハハ、と笑顔を繕いながら伝えるとルーナは納得したようだ。私と同じように壁を背にして隣に座ると一つため息をついた。
「お姉様は闇の存在ではないわ」
ポツリと小さな声が聞こえた。
闇の存在かそうではないかなんてどうでもいい。ルーナのその言葉が何より嬉しかった。
「ルーナ、ありがとう。あなたは天使ね」
隣に座るルーナに思わず抱きついてしまった。ぎょっとした表情を浮かべ、逃げようとするが構わずぎゅっと抱きよせてしまう。あ、なんかいい匂いするぞ、ルーナ。
「お姉様、姉妹同士とはいえ……」
困ったように呟くルーナを無視し、暫くぎゅーっとしてしまった。暖かくて、安らぐなぁ。
そんな時無情にも鳴り響いたのは昼休みの終わりを告げる鐘の音だった。
「お姉様、午後の授業に間に合わなくなりますわよ」
ルーナは何事もなかったかのようにすっと立ち上がると、その手を差し出した。私はその手を握り、立ち上がる。
え、これから授業とか勘弁してほしいのだけど!!!サボっちゃ駄目ですかね?




