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悪役令嬢は双子の妹を溺愛する  作者: ドンドコ丸
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悪役令嬢の魔女疑惑3

 私がジェロームさんに連れて行かれたのは薬草園の近くにある温室だった。温室、といっても前世のそれとは少し様相が違い、見た目は石造りの小屋である。寒い時期、植木をここで保管するらしい。


 彼は扉を開くと、私に奥へ入るよう促した。薄暗いその中へ入ると、ガチャリと何か不穏な金属音が背後から聞こえた。


 奥に足を進めると小屋は頑丈そうな壁で覆われていることがわかる。一面にだけ大きな窓がいくつかはめ込まれていて、そこから光がよく射し込む。しかし小屋の中程にはその光は届かない。そして窓は閉められていて、外に人の姿はない。ここは元々生徒達があまり来ない場所なのだ。


 もしかして、ここって密室ではなかろうか。私が内心びくびくしていると後から入ったジェロームさんがこちらへやって来た。彼が手のひらから炎を出すと、部屋が少し明るくなる。それでも薄暗く淀んだ空気も相まって不穏な空気が満ちている。


「さてと。それでは白状して貰いましょうか」

「何を、でしょうか?」


 そう尋ね返すと彼は手のひらの炎を私に近づけて囁くように言った。


「あなたの正体についてです」


 正体……。

 も、もしかして、あなた、私の正体が悪役令嬢ってことをご存知なの?

 私は動揺を必死に抑えながら冷静な表情を取り繕う。


「……ナンノコトデショウ?」

「とぼけても無駄ですよ。隠しているつもりでしょうがあなたの行った悪事は僕にはお見通しです」


「悪事?」

「しらを切るつもりですか?」


 しらを切るも何も、私、何も悪いことしてないよ?しかしジェロームさんはそう思っていないようだ。


「クラスメイトの不仲を煽り、怪しい薬草を広めようと画策し、さらには未来の王妃である妹君を虐めて」


 ふぁっ?!何の事でしょうか。ミントもどきのことはともかくとして他は身に覚えがありませんが。とにかく彼の誤解を解かなければならないようだ。


「何か誤解があるようですが」 

「誤解?」


 私が訴えると、彼は口の端をつり上げ、冷たい笑いを浮かべた。


「教室を炎上させ、沢山の貴重な資料があるこの学院を燃やそうと目論見」


 た、確かに、教室を炎上させたのは悪いことですけど、わざとじゃありませーん。


 ジェロームさんの表情からいつの間にか笑みが消えている。そして次に彼の口から飛び出した言葉は衝撃的なものだった。

 

「幼い頃から妹に呪いをかけていた。」


 そう告げた彼の視線は強く、こちらを睨みつけている。そしてその視線を外すことなく、口を開いた。


「あなたが闇の存在であることは明らかです」


 闇の存在であるか、はともかくとして。私がルーナに呪いをかけているって、なんでそんな誤解をされているのだろう。


 というか私、大ピンチ。相手は仮にも大聖堂の神官見習いだ。悪役令嬢、退散!!!、とかお祓いされちゃうのでは?


 私は動揺を悟られないように、冷静に尋ね返すことにした。大丈夫、話せばわかるはず!


「闇の存在、とは何のことでしょう」

「おやおや、とぼけるのがお上手ですね」

「とぼけてなど……」


 そう否定しつつも、悪役令嬢であることは確かなので思わず言い淀んでしまう。するとそれを肯定と受け取ったのか彼は言葉を続ける。


「大聖堂では近い内に聖女の力を宿す存在が現れると予想を立てています」


 聖女の力を宿す存在、それはすなわちこのゲームの世界のヒロインちゃんのことだ。


「それはすなわち闇の存在が既に現れているという証明にもなります」


 ずずいっとジェロームさんが一歩近づいて来たので、私も一歩後ろへ下がる。


「僕は考えたのです。闇の存在が力を強める為に何をするかを」


 彼の中では私は闇の存在ということが確定しているようだ。


「この学院には貴重な書物、特に王族と学者にのみ閲覧を許された聖女様の情報が保管されています。あなたは膨大な魔力を使い、学院ごと書物を燃やすつもりだったのでしょう?」


「そんなつもりは」


「まあ、幸いルーナ様が防いでくださいましたがね」


 私は教室を燃やすつもりなんてなかった。何よりあんな力を出したのは初めてのことだったもの。でも魔力が弱いことを知られるのは恥ずかしい。

 そして確かにあの時ルーナがいなければ、大変なことになっていただろう。もしかして私、自覚がないだけで本当は闇の力を持っているのだろうか。自分で自分がわからなくなる。


 口を閉じた私に向かって、ジェロームさんが声高らかに叫ぶ。


「さあ、あなたの正体を見せてご覧なさい。僕が成敗してみせます!」


 成敗はご勘弁をー!

 彼の気迫に負け、私は後ろ向きに一歩下がる。すると彼も一歩進んできた。また一歩下がれば一歩近づいてくる。また後ろに下がったが、背中に固い物が当たった。どうやら壁際に追いつめられてしまったようだ。


「聖女様の手を煩わすまでもない。その力が弱い内に私が潰してあげましょう」


 ジェロームさんはなんだかノリノリであるが、私は涙目、大ピンチである。

前回の誤字報告、ありがとうございました。

とても助かっております


気になる点がありましたので修正しました。

内容に変わりはありません。

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