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悪役令嬢は双子の妹を溺愛する  作者: ドンドコ丸
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悪役令嬢と基礎魔法

 心もお腹も満たされて、私はロザリーさんと一緒に教室へ向かった。

 ルーナはいるかな。あ、いた。昨日泣いていた彼女を慰めていた女子と一緒だ。ルーナにも新しい友達ができたのかな。それは喜ばしいことだ。声をかけようか迷ったが、何やら熱心に二人で話しているので邪魔をしないように席に座る。


 通学者であろうクラスメイト達が徐々に増えてきた。教室に入ってきたヴェネレさんとフェルナン君も挨拶をしてくれてほっとする。ヴェネレさんには、「昨日気がついたらいなかったけど、転移したの?」と真顔で尋ねられた。「そんな高等魔法は使えません」と伝えると、「それもそうか」と笑ってくれた。


 もうすぐ授業が始まるな。机の天板を開くと寮から送った教科書が転移してきた。机の収納部分も不思議な作りになっていて、一見底がありそうに見えるが、厚みのある教科書全てを収納できるようになっている。不思議不思議。

 これで人間も転移できないかな。教室に誰もいない時、試してみようかしら。そんなことを考えていたら午前の授業開始の鐘が鳴った。


 今日の授業は魔力の確認と基礎魔法の復習だ。授業初日から不安でいっぱいである。


「まずは皆さんの魔力を順番に確認していきますね。試験ではないから緊張しないでくださいね」

 そんなこと言われても緊張してしまう。

「結果はあまり気にしないでいいですよ、調子が悪い時もありますからね」

 そう言って教師は魔力盤を抱えて、窓際一番前の席から順々に魔力の確認を始めた。


 魔力とは魔法を使うための力のこと。

 そして基礎魔法は例えば前世で言うところのマッチを使う代わりに火をつけたり、ちょっと手が汚れた時に軽く水で流す、程度の日常で当たり前に使う魔法のことだ。子どもでも使うことができる簡単な魔法だ。


 さらにその上のレベルは初級魔法だ。

 魔法学院ではまずは初級魔法を授業で習い、その後魔力に応じて中級、上級、高等、人によっては特殊魔法を身につけていくのだ。


 初級魔法はこの国の貴族が成人する前に当たり前に身につける魔法だ。逆に貴族で初級魔法ができないとかなり恥ずかしい。というかそんな人の話を聞いたことがない。その恥ずかしい人第一号はきっと私だろう。

 私の魔力は相変わらず低いのだ。勿論、子どもの頃からずっと勉強は続けている。それでも未だに基礎魔法がどうにかできるかな、といったレベルだ。それすら体調が悪かったり、悩み事があると、途端に魔力が弱まってしまう。

 授業中にもし魔力が弱まって、基礎魔法すら使えなかったらと考えるだけで胃が痛くなってくる。

 私は魔力の出し方、基礎魔法の呪文を何度も頭の中で復習した。教師がクラスメイト達の魔力確認をする様子を見ている余裕はとてもなかった。


「ではリュシアさんの魔力を見てみましょうね」

 おや、いつの間にか私の順番が来たようだ。うう、手が震える。


「よろしくお願いします」

「リュシアさん、リラックスして。はい、深呼吸して」

 深呼吸をすると少し緊張が解れた。

「では魔力盤に手をのせてくださいね」

 私は教師が机に置いた魔力盤に右手のひらをのせた。魔力盤、それは魔力を測ることができる優れものである。


 目を閉じて、雑念を払う。大丈夫、きっと大丈夫。

 体の奥に眠る力に意識を向け、その力を体全体に巡らせていく。そして巡った力を手のひらに集めて、放出する。


「はい!大丈夫です。うん、なかなかの物ですね」


 ん?魔力あった?ちゃんと出てた?

 集中し過ぎて、目を閉じたままだったので自分の魔力がどの位だったか見そびれてしまった。なかなかの物って悪くないってこと?まあでも、先生のお世辞かもしれないな。


「うんうん、皆さん、なかなかいい魔力をお持ちですね」

 教師が教壇に戻り、満足そうに頷いている。

「では次は基礎魔法を使ってみてください。私は適当に回っていきますから、質問があれば遠慮なく声をかけてくださいね」

 その声に魔法を使いやすいように皆が席を立った。再び教師が前から順にそれぞれの様子を見ている。

 あ、軽薄ローランドが腰巾着の髪の毛をちょっと燃やして先生にむちゃくちゃ怒られている。ホント馬鹿だな。雷の魔法でモジャモジャヘアになっちゃえばいいのに。


 お、前方の男子が、「闇の力を秘めし我が右手よ、その力を開放せよ!」と叫びながら魔法を発動させてる。周りは戸惑っているが、私もそれやりたい。


 さて、私は本当に基礎魔法を使えるのだろうか。再び魔力に意識を集中させる。程なくして手のひらにほわっと炎が浮かんだ。

 あれ?あれれ?いつもならば魔法が発動するまでかなり時間がかかるのに、オレンジ色の炎が難なく出てきたのだ。え、こんなこと初めて。

 私は炎を消すと、次は水の魔法を試してみる。両手のひらを水を掬うような形にして、魔法を発動する。おお!水が溢れてきたぞ!!!

 次は風の魔法!出てきた水を乾燥させてしまえ!おお、ちゃんと風の魔法も使える!

 え?なに?この学院には魔力を高めるシステムとか組み込まれているの?


 私は嬉しくなって基礎魔法を連発したが、魔力が衰える気配はない。調子に乗って何度も魔法を発動させているとふと視線を感じた。

 あ、ルーナが見てる。冷めた表情というのがぴったりの表情でこちらを見ていた。そんな表情もクールビューティーで可愛い。私が見ているのに気がついたのだろう。プイッと視線を前に向け、手のひらから大きな炎を出した。あ、炎の色、いつもの赤色じゃなくて、オレンジ色だ。


 その後もルーナを眺めていると、難なく基礎魔法を連発している。すると彼女の仲良し、左隣の女子がキラキラした瞳で、「すごいすごい」と嬉しそうに手を叩いている。

「さすがルーナ様!王妃に相応しいですわ」

「まあ、マルグリットさんったら、大げさですわ」

 ルーナは困ったような笑みを浮かべ、謙遜する。ふむふむ、あの子はマルグリットさんか。ルーナのことを何かと気にかけてくれる、ありがたい存在だな。

「それに比べてあなたのお姉さんは」

 おおっと、それ以上は聞きたくないぞ。そういうのはせめて本人がいないところでしておくれ。


 私の願いが通じたのか、その時お昼を告げる鐘が鳴った。

「はい、皆さん基礎魔法は問題なさそうですね。午後は基礎魔法の応用と魔力の扱い方の復習をしましょう。では良いお昼を」

 教師はそう言うと教室を出て行った。

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