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悪役令嬢は双子の妹を溺愛する  作者: ドンドコ丸
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悪役令嬢と目覚めの悪夢

 天蓋付きの大きなベッドの中で寝ていた私、リュシア3歳はガバリ、と飛び起きた。瞳からポロポロと涙が零れ落ちるのを止められない。


 夢を見たのだ。

 私が日本という国にいて、そこそこ平和に暮らしていた頃のことを。あの頃の私は今よりもっとずっと大人で会社で事務の仕事をしていた。これといった趣味もなかったけど俗に言う乙女ゲームが大好きで毎晩夜ふかししては各キャラクターとの親愛を深めていたのだ。

 うん、この世界、あの乙女ゲームの設定そっくりというか、そのまんまだよね。これってよく目にする転生物じゃないの!転生ということは私、一度死んだのか。わお!びっくり!

 びっくりついでに一つ残念なお知らせがある。

 私は乙女ゲームに出てくるお目々キラキラ、純朴で慈愛に溢れる心優しい主人公ではない。

 自分で言うのも難だが顔は悪くない、と思う。まだ幼いながらも一見すると守ってあげたくなるような儚げな雰囲気を醸し出し、悪意?それなんですか?といったあざと可愛い外見をしている。ゲーム内の成長した姿もなかなかの物だった。その実、主人公を陰で虐めぬき、その為には残酷な手段も厭わない、むしろそれを楽しむ余裕さえある、高慢で鬼畜な悪役令嬢、それが転生した私だったのだ。

 元々はこの国の王太子と幼い頃から婚約していて、それを至極当たり前に思っていた彼女。しかし時が流れ、この国の貴族が通う魔法学院での生活が始まると王太子様は真っ黒黒な悪役令嬢よりも純白な主人公の方に心惹かれていき、それを許せなかった彼女はヒロインをありとあらゆる方法で排除しようと企み、やがてヒロインを愛する取り巻き達にそれがバレてしまい、王太子とは勿論婚約破棄、さらには断罪されてしまうのだ。

 目には目を、歯には歯を、鬼畜な悪役令嬢にはそれ相応の罰をと。

 ヒロインがどんなルートを辿っても悪役令嬢の最期は勧善懲悪に相応しいものだった。

 断罪やだ!

 四肢切断の上幽閉やだ!

 拷問やだ!生きたまま火炙りやだ!生きたまま圧死やだ!生きたまま重りをつけて水に沈められるのやだ!残酷な死刑やだやだ!

 許してくださいとは言いません。でもまだ死にたくないです!一生修道院で大人しくしてますから!いえこの国にいられないなら、どこか国外追放でもいいので!いえ罪が罪なら死刑でも仕方ないですよね、ならせめて、せめて、スパッとサクッと一瞬で終わらせてくださいませ、後生ですから!!!


 私のお先真っ暗な未来を思い浮かべ、未だシクシク泣いていたその時、ふと隣で一緒に眠る少女の姿が目に入る。


 同じ年、同じ月、同じ日に一緒に生まれた私とそっくり同じ顔、とてもとても可愛い双子の妹ルーナ。大切な私の妹ちゃん。


 そこでふと乙女ゲームの内容を思い返す。

 ……あれ?あのゲームの悪役令嬢に双子の妹なんていたっけ?


 暫し目を瞬かせたが思い出せない。まあゲーム本編に出てこなかっただけだろう。妹ちゃんが存在しないなんてありえない。どうやら彼女は私の泣き声で目が覚めてしまったようだ。


「おねえちゃま?どうしたの?泣いてるの?」


 寝ぼけ眼で私を上目遣いでみつめると身を起こし、そっと頬を両手で挟んでくれた。なにこれ、かわいい、かわいすぎる、私の妹超かわいい。語彙力なくなるほど可愛い。そもそも私3歳だから語彙力なんてないし。

 いつの間にか私の目から涙は止まっていた。


 チュッ。


 妹ちゃんは私のおでこに軽く音を立てキスをすると、小さな掌で頭をナデナデしてくれた。その温かいぬくもりになんだか安心してしまい、うっとりと目を閉じてしまう。やがて穏やかな気持ちになり、眠気が訪れた。

「おねえちゃま、おやすみなさい」


(たとえ断罪されても、妹ちゃんが幸せになってくれればいいか)。


 妹の可愛い声を聞きながら、私はそんな思いを抱き眠りについたのだった。

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