048:時が止まった世界(裏話)
この話は『物語の設定』を語る話です。
長いですが、魔法少女世界の現状を書いております。
黒い世界があった。
周囲は何もなく、ただ空間だけが広がっている。
その中心に、背筋が凍るような青白い光に照らされた、ひとりの『少女』が浮いていた。
「――」
目を閉じ、微動だにしない少女は、生きていない。
空間の中心にいるのみで、周囲を惑星サイズの『無』が取り囲む。
空気が存在しない。
物質が存在しない。
青白い光は少女から発生しているが、それ以外は何も『無い』のと変わらない。
「――」
その宇宙は、星が動いていない。
見る者がいたら、公転も自転も忘れた、それでも輝く星々に違和感を持っただろう。
正確に表現するなら、少女に近い物質の動きは止まり、遠い物質は相対的に動いているのだが、光が届く速度よりも『停止』する影響力が強い為、何もかもが止まったように見える世界。
動かない世界。
その中心は紛れもなく、ひとりの『少女』だった。
それは――かつてリリスと呼ばれた、魔法少女の成れの果て。
異世界人から世界を救おうと抗い、自滅と引き換えに何もかもを凍結させた『人の形をした墓標』。
異世界人と戦う前、この世界における魔法少女は『概念』と戦っていた。
宇宙のある時点から、惑星や恒星から、エネルギーや存在情報を『喰う』特異生物が誕生し、宇宙各所で生存圏を広げていた。
それは生殖能力が低く、宇宙を破壊する細菌のようなものだったが、惑星に発生した有機生物を取り込む事で、爆発的に増える現象を宇宙のあちこちで繰り返していた。
それが、とある銀河を回る惑星に辿り着いてしまった。
当初、1万年に1個体が増える程度だったが、個体数は時間の経過とともに増加していき、数千、数百、数年と、銀河規模で致命的な個体数になった。
宇宙の超空洞と言われる『無』の空間を人工的に作り上げる生物、さながら『銀河食い』とでも呼べる生物。
そこで誕生したのが、宇宙各地の惑星で発生した『精霊』だった。
ウイルスに対する免疫のように、有機生物に『概念としての力』を与えることで、特異生物を駆逐する能力を与えた。
魔法少女とは惑星に宿る『精霊』が、人間と交流を持ち始めてから生まれたものだった。
最初に力を手にしたのが、純粋な少女だったから、いつしか魔法少女と呼ばれるようになった。
力を得た人間は、獲得した能力に指向性を持たせ、力を効率的に運用する事に長けていた。
そして有機生物を狙う『特異生物』と同じ能力を再現し、貸し与えた精霊がいた。
いつしかそれは、惑星を守る事から、人類文明を守る事に変わった。
――惑星上に現れた特異生物を、時には大気圏外へ空間転移させ、これを消滅させる。
特異生物は亜空間で睡眠を取り、活動を始めると物質空間へと降り立つが、不思議なのは観測する者により姿を変えるが、存在が固定されると単一の姿を取るという変幻自在でありながら、個別の能力や在り方をしていた概念生物であった。
ここで、魔法少女が認識する『世界』の在り方を述べておく。
簡単に言えば、精霊の力を引き出せるようになると、より高次元を認識できるようになる『目』を獲得する。
第一段階では『時空連続体』という、現代科学では定義しきれない概念へのアクセス権。
身近な例えをするなら、冷が認識する『それ』は、対象を残像のように『ある時点での三次元構造物が見える』ものであった。
さながら、未来予知や未来演算と表現できるだろう。
AをすればBになるという結果があったとして、AとBの繋がりを絶てば、Cという結果が生まれる。
それを高次元的に操作するには、有機生物が発する『精神エネルギー』が原動力になっており、特異生物はそれを狙っていた。
エネルギーの大小により、改変できる結果は制限されるが、覚醒した魔法少女の初期段階として、それを攻撃や防御に転用できるようになる。
次に、魔法少女が完全覚醒すると、より高次元を認識できるようになる。
自分が望む条件の『平行宇宙』を認識し、それを見たり活用する存在へと進化する。
あえて例えるなら、ゲームに登場する『アイテムボックス』のように、物を出し入れしたり時間を停止させたりする能力である。
陳腐な言い方をするなら、亜空間と呼ぶ連続性を失った非三次元空間を自由にする能力。
このあたりの能力は人間の認知外であって原則不可能だったりする。
存在を知らない、あるいは見えないものを、人間の脳は処理できないのが理由だ。
というより、精霊や特異生物すら三次元空間へ『降りてくる』のは、一番安定している空間の在り方であり、物質世界へアクセスする簡単な手段だからである。
その点で『冷』の能力は、本来なら精霊などの、上位存在しかアクセスできない機能なのだが、人間のまま、見る事も扱う事もできるようになった。
ただし、進化のきっかけがあれば、似た存在は生まれる可能性はある。
すでに居ないが、地球の『神』は、これに分類される存在だった。
その可能性は、既に閉ざされていたが、招かざる者達がこれを持ち込んでしまった。
何が起きるのか、それはいずれ語ることになるだろう。
閑話休題。
「――」
宇宙の中心となった場所で、誰にも届かぬ『少女』の時間は停止している。
けれど。
ほんの微かに、観測できない揺らぎが存在していた。
魂ではない。
意志でもない。
それはかつて、彼女が抱いた「まだ終わらせたくない」という未完の想い、その祈り。
契約を結んだ魔法少女は『生きていない』が、契約を交わした精霊シルフは、宇宙を超えても存在している。
そこに生じた矛盾が、宇宙の法則を部分的に超越する。
もし気づける者が現れたら、この世界は動きだす可能性を残していた。
それは、少女が最後に託した『祈り』であり、遺志だった。
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