027 : 歌詞、そして動画の拡散(裏話)
御伽噺の中ですら、白い兎は『凶報』を伝える先駆者である。
不思議の国を旅した少女は、終わらない地獄を見てしまい、心を壊して冷めた体に気付かない。
亡き人を想い、復讐へと駆け出した少女もまた、白い兎となり前足を血に染める。
古今東西、白い毛並みと赤い目を持った兎というのは、善意にも悪意にも、恐怖にも映る。
もし私が兎になったら、どんな姿になるのだろう。
形の無い正義? あるいは、冷酷な悪者?
どちらも、私の柄じゃない。
本当に望むのは、誰にも縛られない自由の花。
思わず触れたくなる、美しい薔薇のような、魔力に満ちた輝きが欲しい。
御伽噺の中ですら、白い兎を追いかけるのは、人間に課せられた宿命だろう。
鏡の国を旅した少女は、自らの知性を過信しながら、真実という刃で多くの人を傷つける。
手繰れば手繰るほど、溶けたチョコのように、両手は熱く濡れていく。
それでも修羅を歩めるほどに、私の心は強くなく、茨の道など興味もない。
誰よりも、綺麗な世界を望んでる。
希望が無いというのなら、自分が希望になればいい。
悪夢が覚めず不安なら、理想で上書きして潰せばいい。
私が出会った白い兎は、魔法の力を与えてくれた。
零時の鐘が鳴るまでは、美しく舞える、素敵な魔法。
この理想を守る為なら、全てを捧げる価値はある。
「すごい、格好いい歌だな……」
スマホを片手に、ある青年が動画を見ていた。
「ボーカルは……冷って人か。新しい『歌い手』かな? この曲も知らないな」
まるで遊んでいるかのような、楽し気な曲調。ベースとなるギータ―の音が、独特な雰囲気を出している。
声は少し低めだが、どこか心の底から勇気づけられるような、不思議な感覚がする。そうでなくても、一言で『格好いい』と感じる歌声をしていて、歌唱力もある。
(フォローしとこうかな)
歌っている本人なのか、黒を基調としたドレスみたいな服を着ていた。運動神経が良いのか、舞うように踊りながら、歌い続けている。
可愛いし、美しい。なのに、格好いい。
(拡散しよう)
青年はスマホで、動画のリンクをSNSで拡散する。それを知った人もまた、良いコンテンツだと判断したら、同じように拡散を始める。
こうして冷は、多くの人に知られていく。
裏話です。
歌詞を書いてみました。
15話くらいで描写した歌です。
何故か、書きたくなりましたが、この連休をまるまる使いました……。
私には作詞なんて無茶だと悟りました。
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