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013 : 窮屈な日常と、兆し

今後に必要だと思った話ですが、微妙な内容かも。


 私は湯船に浸かりながら、ため息を吐く。精神的に免疫が付いてきたのか、今では睡眠やお風呂の時も魔法少女になっている。多少の恥ずかしさはあるものの、あくまで『自分の体』という感覚が強くなっていた。


「――」


 鼻歌を歌いながら、浴室に響く自分の声を楽しむ。私はこの声が一番好きで、二番目にこの姿が気に入っている。最近は仕事に行く以外で、元の姿に戻っている時間の方が少ない気がするが、魔法少女になって睡眠を取ると、身体の調子が良かったりする。


「今日はどうしよう?」


 時々はコスプレ衣裳で一日を過ごすが、部屋着までは揃えられていないので、少し大きめの男性用シャツとズボンを着ている。美少女が『サイズが合ってない格好』をしているのも、意外と可愛いと感じていて、暇があれば自分の姿を鏡で確認している。

 寝間着には、ネグリジェやパジャマを買うか考えた事はあるが、そんな格好を人に見せる機会もないし、そこにお金を使うくらいなら、欲しいコスプレ衣装がたくさんあった。


「そろそろ『私』も、表に出ないと駄目なのかな……」


 私はシルフを抱き枕のようにかかえる。拾った時より毛並みが良くなっていて、本人は嫌がるが、時々お風呂にも入れて洗っている。

 顔をうずめて感触を楽しんでいると、耳がぴくぴく動いて、頭をぺちぺち叩いてくる。痛くはないが、不機嫌さが伝わってくる。


「どうしたの?」


 私は最近『冷』として存在する事の限界を感じていた。

 今まさにメールを開くと、そこには動画を投稿したり、ネットアイドルとして活動する人向けの『クリエイター事務所』から、所属しないかという連絡が来ていた。こういう案件は、自分から応募するものだと思っていたら、調べてみると有名になった無所属の人に、事務所側からアプローチをかけてくることもあるらしい。

 それ自体は、所属することで得られる恩恵は大きいものの、私に限って言えば『社会的に存在しない』という部分がネックになり始める。

 どこまで行っても、魔法少女ではない『私』との関係を明らかにせずに、この姿で生きていく事は難しい。それをまさに、ここ数日の間に実感したばかりだった。


「何でもないよ」


 シルフを撫でながら、私は今後の『在り方』を考えていた。近況で困ったことと言えば、私の配信を動画にして投稿していた人物が、SNS上で私になりすまして発言を始めたこと。こういう問題は、あまり放置しておくと大変なことになる場合がある。

 私が知っている中で、とあるクリエイターの動画をまるごと転載していた人物がいて、偽者からの通報で本物のアカウントが消されるという、信じられない実例があったりする。その件自体は、後から運営がアカウントの復旧と、偽者の削除という結末で落ち着いたものの、この『なりすまし』は簡単に行える割に、対処が難しい問題でもある。


(私の偽者、どうしようか?)


 私としてもかたりが行われ始めた時点で、動画サイトの運営に著作権違反で通報を試してみたが、著作権者の情報を求められ、情報を出すか迷っている内に、運営から一度はスルーされてしまった。アプローチを変えて、再度の通報を試しているが『事実の確認中』という旨のメールが届いて以降、音沙汰が無い。


(これで駄目なら、弁護士に依頼する必要があるのかな……。でも、私の名義で相談しても、冷とどんな関係か聞かれるのかな?)


 今回のライブ配信に限れば、つくよみPさんが対策をしてくれていた。あらかじめ、私の練習風景や音声を共有しておいて、つくよみPさんの側でミュージックビデオに編集しておき、配信と同時に動画を投稿するというもの。編集がどれほど時間が掛かるか私は知らないが、凄まじくフットワークが軽く、仕事が速いというのは伝わってくる。


「すごい」


 その動画を見ると、所々に映像的な演出が追加されていて、私が配信で歌ったよりも格好よく仕上がっている。

 どうしても配信では、衣擦きぬずれやステップの音が入ってしまうが、渡した『歌声のみのデータ』を使用しているので、特に聞こえてくることもない。

 五分程度の動画を、何度も聞き返していた。再生数も、一日で百万回を越えていて、急上昇動画のトップを飾っていた。


(個人だと、限界があるのかな……)


 不思議と、心の中に弱音が浮かんでくる。別に、今のままでも問題がある訳じゃないのに。例えば、ライブ配信をするだけなら、配信サイトと個人の間には、何の特別な関わりも生まれない。誰かとコラボレーションする企画を始めても、相手がクリエイター事務所に所属している場合でなければ、個人間の会話だけで企画が進むことも充分にある。


(もふもふして、気持ちいい)


 シルフを撫でていると、猫みたいにおなかを向けて、されるがままになっている。夏美と会った日からしばらく、シルフは少し元気がなかったものの、最近は特にそんな素振りを見せていない。

 こうしていると、ただのウサギに見えるシルフだけど、言葉は喋るし、私に魔法少女の力を与えてくれる『超常の存在』ではある。


「ここが良いの?」

「ちょ、ちょっと、くすぐったい。もう駄目!」


 悪のりが過ぎたのか、全身くまなく撫でていたら、シルフが飛び跳ねて逃げてしまった。両手を広げて怖くないアピールをしていたら、膝の上には乗るものの、撫でようとすると耳がピンと立って、警戒していた。


「ごめん」

「気にしてないから」


 次は何をしようか考えながら、冷蔵庫に買い置きしてあるケーキで、シルフのご機嫌を取ることにする。今後のことは、その時の気分で決めれば良いと、自分に言い聞かせながら。





もしかしたら、どこかの都市が消滅するかも?

上手くエピソードに繋げられたら、どこかで戦闘(?)が起きるかも

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