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010 : 一方的すぎる展開


「絶望しているの?」


 シルフに頼まれて、魔法少女を助けに来た。そこまではいいけど、その少女は無残に服を切り裂かれ、ぼろ切れのように服は血を吸って身体に張り付いている。

 普通、こんな怪我を負ったら出血多量でショック死しているか、痛みに耐えられず精神に異常が起きていると思う。なのに、それは見られない。

 当たり前ではあるが、肉体的な強靭さを見れば、少女が間違いなく魔法少女であることが理解できる。精神安定作用、肉体の強化など、私が自分自身を分析して得た『魔法少女の特性』を兼ね備えているから。


(気にするほどでもないかな)


 隠れてるつもりなのか、あるいは、気配を消してるつもりなのか、二振りの剣を持った男性が近づいてくる。特殊な歩法なのか、砂利を踏む音すら聞こえない。しかし、そんな小手先の技などで埋めようのない力の差を、相手は感じることができないのか。


「に、逃げて!」


 少女が初めて、私に語りかけてくる。


(聖域:起動)


 目の前の少女も魔法少女であるなら、これで傷の回復や衣服の修復が始まる。周囲にいる魔法少女に力を与え、聖域内の器物が破壊されても元に戻ったり、およそ都合の良い状態を作り出す魔法である。

 ちなみに、普段使う聖域よりも強化されている。まともな方法では、周囲から観測できなくなる。


(魔法:触れられない薔薇の花(ローズ・クイーン)


 ひとつだけ納得がいかないのは、戦闘向けの魔法は全て、名前が痛々しいのだ。転移とかは念じるだけで良かったのに、落差が酷すぎた。


「……」


 そよ風のように、背後の剣から生じた風圧が後ろ髪を撫でる。振り向けば、私に届く三十センチ前で二振りの剣が制止し、持ち主は驚愕の表情を浮かべている。だが、もう表情が変化することはない。


(彼はもう、死んでいるから)


 最近になって、私は気付いたことがある。他人に興味がなくて、自分自身にも同じくらい興味がない。それが『普通じゃない』と認めたくなくて、他人に興味があるふりをしてきたが、全てがどうでも良くなった。

 魔法少女の『冷』という、全てを投げ捨てても良いと思える『生き甲斐』を見つけたのだ。


「え?」


 男は灰になって消えていく。二振りの剣も同様に消えていく。

 今使った魔法は、せめて私に『傷を負わせる可能性がある敵』ではない場合に『戦闘の結果』だけを攻撃者に与える魔法。ちなみに、何故灰になったかは知らない。私の知る限り、燃やしたりする魔法は持ってないので、相手の能力か自分の能力の組み合わせで、燃えてしまったのだろうと結論付ける。


「傷は大丈夫そうだね。立てる?」

「……はい」


 聖域を発動したまま、戦闘形態を解除する。いつも脱いで着なおしていた魔法少女の服は、最初に使った魔法の効果で、追加の変身前の服に戻る。つまり、黒いジャケットにシャツ、スカートという装いである。


「冷さん……?」

「君は、朝に会った……」


 襲われていた魔法少女も変身を解くと、先ほど出会った少女だった。眼鏡をかけていて、少し地味な印象の女の子。多分、高校生くらいだと思う。


「あ、あれ……」


 少女は涙を流し始めた。同時に、腰が抜けたように座り込んでしまった。少女自身も戸惑っているようで、上手く感情が制御できていない様子だった。


「怖かったね。もう大丈夫だよ」


 こういう時、もっと気の利いた台詞が言えれば良いのだけど、それくらいしか声がかけられなかった。私も私で、動揺していることもあったから。


(きっと、あれが勇者なんだよね。殺しちゃったけど)


 私は私で、人の命を奪っているのに何も思わなかった。

 例えば、フィクションでは初めて人を殺した主人公なんかは、気分が悪くなり嘔吐したり、精神的に病んだりする。魔法少女の精神作用で平気なのかとも考えたが、思えば消してしまった勇者のことなんて『興味がない』のだ。


(私って、精神異常者なのかな?)


 死に際が綺麗すぎたというのもあるだろう。と、心の中で弁解してみるが、弁解している時点で自分の異常性が認識できるという堂々巡りに入った。この考えは、やめとこう。そうしよう。


「どこか、喫茶店でも入る? こんな場所じゃ落ち着けないから」


 少女をなだめ、どうにか立ち上がらせて提案する。

 周囲の様子を確認して、聖域の魔法を解除する。誰からの視線も感じないし、私が感じ取れる範囲で監視カメラなどもない。衛星のカメラだといきなり現れたように見えるかもしれないけど、そんな可能性は考えても仕方ない。

 強化した聖域は、聖域内を周囲からは『映像的にも何も存在しない』ように見せている。今までのガバガバな魔法から進化した代わりに、自宅で使うには力の無駄遣いなので、従来の聖域も使い道は当然ある。


「行こうか」

「はい」


 そして私は、一人の少女を伴って歩き始める。



書いてて、これで良かったのか?と思っています。

ただ、私は場面の展開候補を書き貯めしますが、決めたら早く公開したい欲求に負けます。

でも、展開を再考しても良かったのでは?と公開してから悩みます。

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