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ハイエルフの人間学入門  作者: みし
第三章 アルビス市民国編
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アルビス市民国編10 闘技場の巻

 朝一でお風呂に入ると筆頭書記官(オーガ・ロード)の妨害を受けましたが、それはそのまま放置し、すがすがしく朝風呂をおえると朝食を取りに向かいます。朝食は麦粥でしたが正直あまり美味しい食べ物ではありません。下男向けの食べ物を出されている可能性もあります。何しろあの無礼な評議員の子分の家です。そこで巾着の中から干し果物を取り出して麦粥に入れると多少マシな感じの味付けになります。それを一気にかきこみそのまま闘技場に向かいます。しばらくすると後ろから屋敷の下男後ろをこっそりついてきてました。どうやら気配を消す気も無いぐらい雑な尾行をしています。試しに後ろを振り返ると戸惑ったような顔をしながらどこかに隠れようか、偶然同じ方向に向かっているのかどう誤魔化そうか考えて居る気配が漏れまくっていました。気配から感じ取るに害意は内容ですし闘技場に向かっているか確認しているだけのみたいでしたので取りあえず放置しておくことにしました。


 エリウの屋敷からはそれほど歩かず闘技場に到着します。しかし闘技場の建物が大きく入口がかなり沢山あります。そこで通行人に話しかけながら受付入口を探します。闘技場を見るためではなく参加するために来たので参加受付の方に行かないといけません。闘技場自体が非常に広く受付に辿りつくまで少々時間がかかりました。そこでイキの良さそうなおっさん——周りからそう呼ばれていました——に闘技場に参加したいと言う話をしました。


「エルフの王国のエルフがこんな所にくるのは珍しいな?訳ありですかい?」


 おっさんは勝手に悟ったような口調で話しかけてきます。


「取りあえず流れで参加しないと行けなくなりましたので訳ありといえば訳ありでしょうか」


「そうだな、闘技場の競技に登場する為の方法はいくつかあるが冒険者ギルドには登録しているか」


「これでいいのでしょうか」


 エルフの王国の冒険者ギルドの登録証を見せました。


「……エルフの王国の冒険者ギルドの登録証かな。少し待っていろこちらとは評価基準が違うので換算表をチェックしてくる……これなら《ワクワクチャレンジコース》までは行けるな。参加料は帝国金貨一枚になるな」


 図が描かれた看板を指しながらおっさんが言います。そこには(ドラゴン)牛人(ミノタウロス)、獅子、兎、一番下に虎に食われる人間の絵が描かれており、その横に上から順に金貨十枚、五枚、二枚、一枚が描かれています。一番下の虎に食われる人間の横には首輪が描かれていました。


「エルフの王国の金貨で払えないでしょうか?」


 会計から帝国金貨を貰っているのですが試しに聞いてみました。ここで帝国金貨十枚使ってしまうと中央市場で買いだしができなく可能性があるので使わなくて済むなら使わない方法でも良いでしょう。


「出来ない事は無いが両替手数料が入るので少し割高になるぞ。《ワクワクチャレンジコース》はエルフ金貨二枚でおつりが帝国銀貨18枚っていうのが今の相場になるな」


 おっさんは数字の書かれた表をみながら言います。その数字はいくつかの硬貨の換金表で帝国金貨、ディベーユ金貨、エルフ金貨、ドワーフ金貨などとの交換比率が書いてありました。市場ではエルフ金貨の方が帝国金貨より価値が高いのですが、ここに両替手数料を加算されるので帝国金貨の方が割安になるようです。フェルパイア連合内だけでもなく帝国内でもディベーユ金貨が使われる事が多いと聞いていましたがアルビス市民国で帝国金貨が公定貨幣に準じているのでるので取り回しの悪いエルフの王国の金貨より帝国金貨の方が価値が高くなるそうです。そう言えば図書館も単位が帝国金貨でした。なおそこに書かれている文字を読める人はおっさん曰く、十人に一人か二人ぐらいだそうで残りの八から九人が理解出来る様に料金表は絵で描かかれているそうです。


「エルフの王国から来た冒険者か、換算レート誤魔化しはできんなよぁ……あ、ここでやっているわけでは無いけどな。換算レートを知らなかったり、文字が読めないのを良いことにこの手の誤魔化しをやる奴が結構いるのよ」


「そうですか」


「他にはタダで参加する方法もあるが時間もかかるし出場する前に死ぬ可能性も高いし辞めた方がいいだろうな」


「それは何でしょうか?」


「金を前借りできる虎の穴コースさ。このコースに行った奴は地獄見たいなところから一から鍛えられて百人に一人まで絞り込まれるのさ。その代わり、微々たる額だが給金は支給されるし食事はタダだな。しかし闘技場から卒業するまでは奴隷身分になるけどな」


 それは弟さんが入って居るコースの可能性があります。それなので、もう少し話を掘り下げて聞いてみることに聴いてみることにします。


「それでそのコースを選んだ場合本戦に出られるにはどれぐらい時間がかかるのでしょうか?」


「人によって違うが最短記録は1ヶ月かな……百年以上前の記録だから都市伝説かも知れないけどな。卒業するにはは最低記録でも三年はかかるかな。まぁその前に死んじまう奴の方が多いんだけどな。あのコースは地獄を見るからお薦めはしないな」


「それ試しても良いのですが今回は時間がありませんので、すぐ出られるコースをお願いします。それも一週間(フェルパイアに於ける一週間は六日です)で十戦以上戦えるやつ」


「そりゃ《勇者を目指せとことんチャレンジコース》だな……そのコースは金貨十枚かかるがいいか?まぁ十戦全部勝てば余裕で取り返せるぐらいの稼ぎになるがな」


 そういいながら竜の絵を指さします。竜に向かって剣を構えた剣士や杖を持った魔法使いが立ち向かっている絵が描いてあり、その横に金貨の絵が十枚描かれています。


「取り返せるとは、一体どれぐらい稼げるのでしょうか?」


「このコースはパーティでも出られるがそれ込みで聞くかい?」


「別にパーティを組む気はないのですが一応聴いておきましょう」


「まず報奨の話だ。一勝すると報酬は銀貨五枚だ」


「たった五枚ですか?それで十勝しても銀貨五十枚、金貨だと二枚半前後になりますよね。それでは元は取れませんよね」


「話はここからだ。このコースは二勝で追加で銀貨十枚、三勝目で金貨一枚の追加になり、そこから先も倍々で報奨が増える仕組みになっているのよ。つまり十勝すると金貨二百五十六枚の追加報酬とそれまでの報酬併せて、金貨二百五十五枚と銀貨十五枚が貰えるって寸法だ。ざっと二十五倍になって帰ってくる。ただ十戦までだ。十戦以上は追加報酬は無しで、別途特別参加料が必要になるから、それ以上戦う意味はないぞ。まぁ五勝できる奴は半分もいないがな」


「それではパーティを組んだ場合はどうなるのでしょうか?」


「こっちは参加料が倍々になる。二人なら金貨二十枚、三人なら四十枚、四人なら八十枚、六人なら二百四十枚だな。だから六人以上で出るメリットはない。六人以上のパーティを組む奴もいるけど、それはお偉いところの坊ちゃんが泊付けで参加するときぐらいだな。お抱え《超級(Sクラス)》冒険者が参加するときも八人から十人のパーティで参加する事もあるな」


「それではお一人さまで参加します」


 竜を参加させると余計な邪魔をしそうですし、エレシアちゃんの護衛もあるので今回は見物させるだけにし巾着から王国金貨を取り出し並べます。帝国金貨の方は取っておくことにしました。両替所まで行く時間がもったい無いですし王国金貨を抱えていても使う機会がしばらくないので少し減らしておくことにしました


「これだけあれば十分でしょうか」


「ああ、十分だ。釣りは帝国銀貨で十枚だ。それからこれが参加証だ。後は参加規約について説明するぞ」


 長い説明が始まったので簡単に纏めると使用できる武器・魔法及び細かい規定、対戦相手は例外を除き半刻前——アルビスでは日が出てから沈むまでを六等分してその一つを一刻と呼んでいます——に決まる事、対戦相手が決まった後は闘技場の職員以外との接触が禁じられること——これは八百長を防止する為だそうで闘技場の試合結果は賭け事の対象になるため不正を防ぐ為だそうです——それから相手を戦闘不能にするか降参させれば勝ち、その逆は負け、反則行為は重大さに応じてペナルティーがあり酷い場合は即敗北で参加資格を失うと言う事が説明されました。


「今日の対戦は既に決まっているから参加出来るのは明日の朝からだな。参加するならそれまでに準備はしておけよ」


「準備と言いますと?」


「持ち込む武器や防具や薬の類。後は体調だな。二日酔いで来る奴がいたりするからな。そんなのを出したら客が怒るからな。じゃあ明日ここに夜明二刻(八時頃)までに来てくれ。多少遅れても失格にはならないがその代わり強敵と当たり安くなる。それから傷病保険と言うものがあるが入るか?」


「傷病保険と言うのは何でしょうか?」


「これはだな対決で死なない限り怪我をしたとき治癒術師が無料で即座に治療してくれるオプションだ。一戦につき金貨一枚かかる。仮に死亡した場合は棺桶の用意と湯灌と葬式もタダでやる」


「必要なさそうなので要りません」


「入った方が良いと思うけどな……そうやってケチって大けがして後遺症が残ったり、金貨十枚ぐらいでは済まない治療代がかかったケースもあるぞ」


「必要有りません」


 死なない限り自力で治せますので無駄な気がします。最悪エレシアちゃんが居るので問題ありませんし、試しに後から試合数と重症数や死亡数などから計算してみると銀貨五枚が適正料金と出て、かなりのぼったくりでした。


 その日は既にする事が無くなったので仕方なく図書館で時間を潰す事にしました……二度と行く気がなかったのですが暇だから仕方ありません……司書さんがいろいろな〔おもろ草子〕を薦めてくるのですがコレといった面白そうな薄い本も見つからず結局空振りで終わりました。


 その後、大衆浴場(ハンマーム)で軽く汗を流して帰りに市場でアイスクリームを見つけたので食べながら帰ってきました。


 このアイスクリームは氷の入った金属製の容器に入ったまま売られているようでした。氷より冷たいものを氷で冷やせるのか?とは思いましたが観察してみると氷に魔法の粉らしきもの混ぜて氷を更に冷たくしている様でした。その粉は何なのか聴いてみると別に秘密でも何でも無いような感じでアイスクリーム屋の店主がドワーフの工房で作られる氷を冷たくする粉と説明してくれます。何でもこの粉が最近この街に大量に出回って庶民でも食べられるアイスクリームが作れるようになったと言う話でした。通常アイスクリームを作る場合は長時間持続する《凍結》の魔法が必要になり、その時間も二刻以上になるため複数の魔法使いに頼む必要になるのでかなり高くなるそうです。一度《凍結》の魔法で凍らせた氷を使う冷蔵保存法と比べても更に数十倍のコストがかかるとのことです。この魔法の粉の登場によりフェルパイアではアイスクリームが劇的に安くなり冬場は庶民でも帰る値段で販売出来るようになったと言う話でした。朝一に渓谷の上の方で一晩凍らせた氷を担いでくればその日一日のアイスクリームが供給できるそうです。しかもアルビスではアイスクリームを名物にしようと国が氷運び専門の奴隷を用意し店に安く卸してくれるそうです。夏場に関しては氷室で保存した氷を使えば出来ると言う話ですが、量がそれほど多くは用意できないので不足分を魔法使いから買う必要があるなるそうで、まだまだそれほど安くできないそうです。ここだけの話と言うことで近々、水を凍らせる魔法の粉をドワーフの工房が試験販売を始めるらしいと言う話までしてくれました。


 ——またドワーフの工房の名前が出ました。しかもその氷からは魔素や精霊らしきものが一切感じられなかったのでこの氷を冷たくする粉は恐らく錬金術の産物だと思われます。恐らくドワーフの工房には優れた錬金術師がいるのでは無いかと思います。そしてドワーフの工房を訪れる事を考えながら意気高揚としながら屋敷に戻りました。


 翌日の朝、朝食を軽く平らげるとそのまま闘技場の受付に駆け足で向かいました。少し早いぐらいの時間に到着します。そこには何人かの冒険者らしき人が既にたむろってました。


「ここに要る連中は対戦相手になるかも知れないから受付を済ませたら会話は禁止だ」


 昨日のおっさんが言います。


「受付を済ませたら絵の描いた符を渡すからその符と同じ絵が描いてある控え室で待つように。特別の用事が無い限り、そこから出てはいけないからな。出た時点で不戦敗になる。特に対戦の半刻前以降は終わるまでは外に出られない。便所や食事はその前に済まろよ。食事の注文も一応出来るから控え室で食っても良いけど食い過ぎるなよ。食い過ぎて腹壊して失格試合とかこっちも石ぶつけられるから勘弁な」


 ——などと説明しながら符を配っています。この符は中途外出する時にも付けている必要があるそうで控え室の出入りの許可証の役割も果たしています。私は五つの林檎が描いてある符をもらったので林檎が五個描いてある部屋に入りました。そこは簡素な部屋で数人入れる感じですが殺風景で蝋燭一本だけの灯りしかなく昼間なのにかなり薄暗い部屋でした。


 ここは光精さんで軽く灯りを……そういえば今日は竜が近く居ません。エレシアちゃんの護衛に付けていました。そのため周囲に精霊が居ません。仕方ないので変わりに下代魔法の《灯り》の魔法をかけておきます。この魔法はコストパフォーマンスが悪いのであまり好きではないのですが背に腹は代えられません。


 試合までは時間があるので弟さんの居場所を探って見ることにしました。初めに聞き耳を建てて建物の構造を調べてみます。


 ……どうやらこの建物は地下に数階ある感じで私と同じ階の控え室は十部屋前後の感じです。この控え室から直接行けない場所に地下に降る階段がありそこから数階数十部屋がある気配がします。部屋の中には人が居たり居なかったりし中には鼠や蜘蛛の巣になっている部屋もあるようです。大体一部屋には数人居る様でした。そして、ここから地下に直接行くことは出来ないず一回ここから闘技場のアリーナに出て、そこから別の入口を通って地下に行かない感じです。弟さんは恐らく地下の部屋に居る可能性があります。ただし、どの部屋に居るかまでは分かりませんでした。


 もう少し調べたいところですが、もうすぐ試合だから準備しろと言う伝言が来ました。続いて試合の規約の説明を受けました。


 準備と言っても巾着を置いていくぐらいでしょうか?今回の試合の規約では魔法が付与された剣や杖は持ち込めるのですが薬類や巻物や使い捨ての魔道具の類持ち込みは禁止なので念の為巾着を持ち込むは辞めておくことにします。しかし巾着を無造作に置いていくのも危ないので《防護認証》の魔法をかけておきます。この魔法は私以外がこの巾着に触れられない様にする独自魔法です。効果時間は短めにする代わり効果を最大にしておきました。


 装備は最初に旅立ったときと同じ感じで緑の貫頭衣(チュニック)、皮のベルトに剣、背中に弓と矢を背負い、中に軽い鎖帷子(チェインメイル)を着込んでいます。初戦ですし相手もさほど強くないと思われるので軽装で十分でしょう。後は予備に投げナイフを数本ベルトに巻き付けて起きます。


 それが終わると「そろそろ試合だ」とぶっきらぼうに呼ばれたので試合会場に向かうことにします。


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