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ハイエルフの人間学入門  作者: みし
第二章 デレス君主国編
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デレス君主国11 決勝の巻

 エレシアちゃんが帷帳の中で休んで居る間、竜がぶんどってきた肉の串焼きを左右が山分けして肉を食べていると銅鑼の鳴る音が聞こえてきました。そろそろ試合が始まるらしく選手が会場に小走りで集まってきます。


 選手達は八人一組で円を作って行きます。会場のあちこちに幾つもの円が出来てきました。そこに年を取った男と若い男が一人ずつ指示を出しています。選手は全員上半身裸です。そうすることで服をつかんで投げると言う行為を封じているそうです。族長がまだ生まれていないほどの昔の時代には身体に油を塗りたくり滑りやすくした時代もあったそうです。しかし選手にあまり評判が良くなかったらしく廃止されたそうです。しかしこの寒空の中、上半身裸で寒くないのでしょうか?


「あの程度で寒がっていたらデレスの冬は越せないのじゃ。それからあの二人は審判じゃ」


 族長が言います。


「今から始まるのは八人一組で行う予選じゃ。それぞれ総当たりで七回戦行い勝ち星が一番多い選手が決勝勝ち抜けになるのじゃ。それぞれの組には主審と副審が一人づつついて勝負を見届けるわけじゃな。まぁ、細かい所は見ていればわかるじゃろ。そろそろはじまるぞ」


 族長の説明は最後の方が適当でした。そのタイミングでエレシアちゃんが筆頭秘書官を連れて戻ってきます。外交官は天幕に居ません。他の貴賓の天幕に呼ばれたそうです。右と左はエレシアちゃんの護衛を(一応)しており、竜は大量の肉に満足したらしくお腹を叩いています。


 さて、会場に響き渡る大きさ銅鑼の音と共に選手が二人一組で向かい合います。幾つもの円があるのでどれを見たら良いのでしょうか?全部一度に見ても構わないのですけど。そこで族長が声をかけます。


「ここはやはり優勝候補を見るといいぞ」


 そこで遠目で優勝候補と目されいる小太りの男を見るとがたいの大きい腹筋に平らの線が入っている男達を足をすくって転ばせていました。


 試合開始からさほど経たない時間で七戦全勝し、そのまま悠々と会場を立ち去ります。


「その族長、一つお尋ねしたいのですが、ああいう勝ち方は良いのでしょうか?」


「上半身ばかり鍛えて足腰鍛えていないから簡単に転ばされるのじゃ。あの男は本気を出すまでないと思ったのだろう」


 小太り男の相手をした連中は相手は運が悪かった様な顔をしています。遠耳で聞くと「あいつでなければ俺が勝てたのに」みたいな事を言っている様です。言葉がちゃんと理解できている訳ではないので適当に解釈しました。優勝候補の予選は一瞬で片が付いたので観戦時間が時間が余ってしまいました。そこで族長の勧められる他の組を見ているとまだ二戦目ぐらいをやっている感じです。小太り男の試合は対戦が始まった刹那に終わるのですが、他の試合は結構泥臭く半裸の二人が組んずほぐれつしながら相手を倒そうとするのですが手が滑って中々決着がつきません。このような勝負は短時間で体力を消耗するので持久力勝負になることが多い気がします。恐らくお昼をちゃんと食べた方が勝ちそうな感じです。


 後ろの方から右と左の会話が聞こえてきます。


「裸の男が組んずほぐれつしているのは良いな」


「はい、それを観賞するのは女性の嗜みだと思います。ほらこの国の女性達も目を輝かせています」


「でかい男が優男を押し倒すのがいいねぇ」


「いえ、ひょろ男が筋肉だるまを逆転する方が良いと思います」


「おまえ分かってないな」


「いいえ、あなたの方が浪漫を理解しておりません」


 何やらくだらない話で言い争っているようです。


 エレシアちゃんの方を見ると筆頭秘書官が何やら熱弁しています。エレシアちゃんは頷いていますが時々顔をあからめています。筆頭秘書官は一体何を吹き込んでいるのでしょうか?隣に居る秘書官に聞いてみました。


「あれはあの方の趣味ですので……」


 口にモノを含んだ感じで言い淀んでいました。竜は試合に興味が無く再び器用に寝てました。

 そうしている内に一つ、また一つと予選が終わって会場にいる選手が段々少なくなります。最後の予選が終わると最後に何人か残っています。


「これは何でしょうか?」


「ああ、敗者復活戦じゃよ。本戦はトーナメント方式でやるのじゃがそうすると何人か足りないのじゃな。それで二位同士を戦わせて敗者復活を行うわけじゃ」


 この辺りは細かく説明する必要も無いので割愛しますが、しばらくすると何人かが敗者復活した様です。銅鑼の音が一帯に響き渡ると小休止です。


「選手も疲れているから休みは必要じゃよ。一応エキシビションもあるが見なくてもいいじゃろ」


 その瞬間、竜は颯爽と何処かに跳んでいきました。おそらく肉の補給だと思います。


 かく言う私はエレシアちゃん成分を補給することにします。


「エレシアちゃん、お疲れでしょうか?」


「あ…慣れない事ばかりで結構気を使っていますがまだ大丈夫です」


「無理は禁物ですよ。疲れたら躊躇せずに休んでください」


「で…でもそうすると行事は…」


「そう言う時のために秘書官と外交官が付いているのですよ。ところで先ほど筆頭秘書官が何かしか熱く語っていたようですがいったいどういう話をされていたのでしょうか?」


「そ…それは聞かないでください」


 エレシアちゃんが頬を赤らめながらボソボソ言います。筆頭秘書官はどんな話をしたのでしょうか?


「ただの恋バナですよ」


 筆頭秘書官が割り込んできます。確かにエレシアちゃんは恋愛というお年頃には見えないですがあの反応はそれだけではない気がします。


「実はまだ話足りないので賢者様もお話を聞いてくださいますか?」


 筆頭秘書官がぐいぐい詰め寄ってきます。周りを見渡すと。左右の二人は我関せずと明後日のほうを見ています。秘書官はそそくさとどこかに出ていきました。もしかしてこれは聞いては行けない話の予感がするのでご遠慮させてもらいました。


「この話を聞かないと人生百年損するぐらいもったいないですよ」


 筆頭秘書官がぐいぐい詰めよりますが竜が何かやらかしてないか心配だからと言い訳して中座することにしました。そして休憩所に竜を見に行くとやはりたらふく肉を詰め込んでいたので無理矢理連れ帰ってきました。


 そのタイミングで銅鑼が三回ほどなり本戦が始まります。一回戦の対戦相手は予選を勝ち抜けた順番で決められます。つまり一番最初に勝ち抜けた優勝候補の小太り男と最後に敗者復活戦を勝ち上がった筋肉だるまが戦う事になります。続いて二番目に勝ち抜いた優男とやはり敗者復活戦を勝ち抜いた中肉中背の男が対戦します。小太り男の試合が最後で優男の試合が最後から二番目と言う順番で試合が進みます。つまり最初の試合は実力が互角の相手が対戦する事になり、これが一番盛り上がると言うのが族長の説明です。


 しかし最初の試合は最初に飛びかかった筋肉男が小柄男をつかみかかろうとしたところを上手く避けられ後ろから背中を叩かれ、そのまま地面に手を付けたため一瞬で勝負が付きました。恐らく小柄男を応援していると思われる集団からは歓声が沸き上がり、筋肉男を応援していると思われる集団からは悲鳴が聞こえてきました。


 一回戦目は何事も無く順調に進みやはり優勝候補と目される小太りとそれに継ぐ優男は危なげなく勝利していました。筋肉だるまが地面にめり込んでいたのは思わず笑い出しそうになりました。開始早々、小太り男が筋肉だるまの頭をつかむとそのまま地面に叩き付けたら地面が筋肉の重みに耐えられなかったのか地面にめり込んだのです。審判は試合続行不可と判断し小太り男の勝利を告げます。


 しかし、地面に埋まったままでは次の試合に差し支えるので急遽休憩が差し込まれて地面を均しています。


「どうすればこうなるのでしょうか?」


「そいつは、わしにも分からん。今までこういう勝負は見たこと無いのぉ」


 以上、族長の解説でした。

 

 一時休憩の後、試合が再開されます。小太りと優男が順調に勝ち上がっていきます。そして決勝になります。

 

「どうやら番狂わせがなかったようじゃな。もう少し若い衆にが張ってもらわないと困るな。筋肉ばかりつけてもそれを活かせぬようでは意味がないでのぉ」


 族長が解説というより愚痴をこぼしています。


「決勝の見所はどこでしょうか?」


「今まで太った方が勝ち越しているが実際には実力は均衡しているのじゃ。どっちにころぶかわからないそういうところがみどころじゃな。力と技に勝る小太りと早さと器用さで勝る優男、序盤上手く立ち回れば面白くなるぞ」


 審判が試合の開始を合図すると優男が低い姿勢から突進し、そのまま小太り男の足をつかみます。


「恐らく足を狙いに来たようじゃが失敗だな……」


 小太り男は、優男の突進を受け止めびくともしません。そのまま優男を両手で押さえ込み、地面に突き落とそうとします。


「ほらこうなる。奴の強みは下半身の丈夫さじゃ。あの程度では張り倒してくださいと言ってるようなものじゃな」


 次の瞬間、一気に勝負を決めようと小太り男が優男を地面にたたきつけようとします。


「これは勝負あったようじゃな……ん?」


 族長が驚いて居ますが無理はないと思います。優男は身体を丸でスライムかのようにすべらせて押さえ込んでいた小太り男からすり抜け真後ろに回り込んでいました。変化の術の様ですが単なる体術でしょう。身体の関節を自由に外したりもどしたりできるのでしょうか?


「何と、いつの間にかすり抜けるの術をマスターしておったのか……そうすると最初に飛び込んだのは誘い込むための罠じゃな。奴も一年でずいぶん小細工を覚えてようじゃな。この勝負わからなくなったな」


 会場から歓声が上がると同時に今度は後ろから回り込んだ優男が小太り男を突き飛ばそうとします。しかし体格差で小太り男を突き飛ばそうとしてもビクともしません。ここからどう仕掛けるのでしょうか?超跳躍してけり飛ばせば一発で吹き飛ぶとは思います。


「それができるのは主だけだと我は思うぞ」


 竜が言います。先ほどは口に出していないので恐らく思念を読んだのでしょうか?竜には思念を直接送り込むことがあるので波長が合えば竜は私の考えを読み取ることができます。しかし、これが出来るのが私だけというのは流石に有り得ないと思います。なぜなら姉なら確実にできる事を私は知っていますから。


 さて優男は一度反撃を辞め少し距離を置き呼吸を整えます。小太り男もそれを見て呼吸を整えます。会場からは再び歓声がわきます。


「ふむ、双方仕切り直しか……しかし、一発で勝負を決められぬ優男はふりそうじゃのぉ。相変わらず決定力に欠けておる。あれでは小太り男の下半身を動かせまい」


 両者にらみ合い、一旦時が止まります。周りはその様子を凝視しているようです。そして優男が突進していきます。小太り男は両腕を少し上に上げてとり抑えようと構えます。次の瞬間、優男は、するりと横から後ろに周り込み相手の膝の裏を自分の膝で突きます。小太り男は一瞬体勢を崩し何とか持ちこたえていましたが背後からの怒濤のラッシュで地面に手を突いてしまいます。


「これは秘技、膝カックンじゃ」


 族長は何やら興奮しています。会場から大きな歓声が沸き、何度も大きな拍手が渦巻きます。こうしてデレス相撲の優勝者は優男に決まったのでした。


 ところで、どうなんでしょうこの結末。

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